物忘れ・認知症66
老化研究第一人者の一人、米ワシントン大学の今井眞一郎教授は──全生物種の細胞に存在する「NMN(ニコチンアミド モノヌクレオチド)」は、哺乳類がもつ長寿遺伝子「サーチュイン」全7種全てを活性化し、糖尿病、がん、アルツハイマー病等の生活習慣病・老化関連疾患を改善する──ことを突き止めました。
よたよたの糖尿病老年マウスにNMNを水に溶かして与えていたところ、1週間で血糖値は正常になり、半年経ったら人間でいうと20歳の青年と見分けがつかないほど若返っていく姿がNHKスペシャル『ネクストワールド』で放映されました(2015・1・4放映)。
放映された時点では、国産のNMNは1kg4億円と報じられましたが、今では4分の1程度に値下がりし、アメリカのメーカーも製造に乗り出して価格競争が始まり、人間用のサプリもでき、希望すれば普通の人も気軽に食べられるところまで来ました。
哺乳類はみなNMNで若返り
この番組によると、マウスを驚異的に若返らせたNMNは、なにもマウスだけを若返らせるのではなく、哺乳類なら皆、同じように若返らせるとのこと。これは当然人間にも当てはまる話だそうで、放映されたマウスのように劇的なストーリーになるかどうかは別として、それなりの効果は期待して良さそうです。
もともと、哺乳動物は脳の視床下部から全身の細胞に対し、「若返れ」というメッセージが生涯にわたって送られているそうです。そのメッセージ分子がずっと充分量出続けていて、それを受け取る細胞側もしっかりキャッチし続けていれば、老化のスピードはぐっとゆっくりになるそうです。
それが実際には、「若返れ」というメッセージ分子の量は、老化時間の経過とともに減っていくのが現実だし、血液の流れで全身に送られるのですが、それを感じてキャッチする全身の細胞側も老化してくるので、上手にキャッチできなくなるケースが増えるのが現実だそうです。プロ野球を見ていても、ゴロでもエラーで捕れないこともありますから、若返りのメッセージ分子を細胞側がキャッチし損なうと、その分そこの細胞の老化が進行し、次に送られてくる若返りメッセージをまたエラーしやすくなるということは、容易に想像できますね。若返りがうまくいかない悪循環が生じてしまう人は、他の人より早く老化してしまうのです。中年すぎると、早く老化が進行してしまう人っていますよね。
ところが、こういう人がNMNを摂り出すと、脳の視床下部から「若返れー」というメッセージ分子が血液の流れに若い時並みに沢山流れ出すようになるそうです。若い時は、脳から沢山の「若返れー」というメッセージが出ていて、それを全身の細胞が上手にキャッチしていたから若くいられたというのです。その当時並みの量の「若返れー」というメッセージ分子が送り出させるようになるのが、食品でとるNMNの食べた人に対する第一段の働きかけということです。
サーチュイン遺伝子にスイッチオン
万物の霊長といっても、ヒトも哺乳類の一員です。ヒトの60兆あるという細胞の核の中に巻かれて存在する遺伝子を、クルクルとほどくと、2メートル弱あるそうで、その中に7ヶ所、若返りをコントロールしているサーチュインと呼ばれるところがあります。
遺伝子は、スイッチが入らないと働けないという性質を持っているのですが、この7ヶ所全てにスイッチを入れる働きができるのがNMNだそうです。こういう物質というか分子は今のところNMNしか見当たらないとか。これを見つけて、ヒトが食べるようなものを原料に発酵法でつくる方法まで開発していただいた今井眞一郎先生に大感謝ですね。
糖尿病のマウスに、これを溶かした水を舐めさせていたら、1週間で正常な血糖値になったというのは、つまるところマウスの膵臓が若返ったので、血糖値の上昇に敏感に反応して正常なインスリンが膵臓から出てきて、それが細胞の表面にあってそれを感じ取る若返ったインスリンレセプターでキャッチされ、グルコーストランスポーターが細胞表面で血糖として流れていたグリコーゲン(血中ブドウ糖)を細胞内に取り込めたからだということです。NMNに富む食品を食べていると、若返ってくるのは膵臓だけでなく、全ての臓器が青年期並みに若返ってくる方向に変化してくるそうです。これは、サーチュイン遺伝子の全てがスイッチオンになった証だそうです。
動物は時間の経過とともに老化が進むのが当たり前ですが、場合によっては、そのスピードにブレーキがかかるという話で、その時、老化で進んでいた体の不調は進行が止まることもあり得るという話です。
今までは、こういうことを起こす分子群というのは知られていませんでしたが、科学の進化によって、慶応大学医学部とアメリカのワシントン大学医学部の今井眞一郎先生らのご研究でそれをもたらすNMNが見つかり、NHKテレビでNHKスペシャルとして放映されて国民に周知がはかられた貴重な情報というところでしょうか。現実には民間会社が今井先生らの指導もあって、若さの維持・若返りを希望する人が手に入れられるよう、口から入れるタイプのNMNを、普通の食物になるような農作物原料から発酵法でつくり、希望する国民への提供も始まったというのが現状でしょう。
全ての生活習慣病との縁切り対策に!
今のところマウスで実証されたのは糖尿病と、よれよれに老化していたのが、まるで時計を逆回ししたように青年レベルまで全ての臓器も含めて若くなったということですが、よく考えてみると、NMNで若返ることは全ての生活習慣病縁切り対策としても有効な手立てになるのです。
全ての生活習慣病は、老化とともに酸化・糖化が進行して、最後は命取りになっていくのが普通です。それが、信じられないほど若返るということは、この酸化・糖化にも強力にブレーキがかかっている証拠でもあり、免疫力も強くなっているということです。
老化とともに増える認知症も脳にベータアミロイドなどのゴミ蛋白質が蓄積され、最後はタウ蛋白で神経細胞がねじり絞め殺されていくといわれますが、驚異的若返りは脳にも起こるので、アルツハイマー病などの認知症や老化に伴う惚けも基本的に解決するはずです。また、がんを食い殺してくれる免疫細胞、つまり白血球も老化で働きが著しく落ち、数も減るといわれていますが、白血球も若返り、数も正常化すれば、さまざまながんも大幅に減るに違いありません。古来、人の悩みの種とされていた生老病死は、NMNが解決できるかもしれませんね。