物忘れ・認知症57
速聴訓練で老活! 本格的な早口で言葉を浴びせられると、それが標準日本語でも、大抵の人は、相手が何を言っているか聞き取れません。脳は耳が聞いた言葉を頭の中で繰り返す(追唱)ことによって理解するのですが、普段からトレーニングしていない普通の人は、例えば四倍の速度で浴びせられた早口言葉は追唱ができないので、何を言われているのか理解できません。
ところが、これは修練次第で追唱が可能になるのです。大抵の人は四倍程度の早口言葉なら、毎日仮に一時間でも聞き取ろうと練習しているうちに、次第に追唱・理解できるように脳細胞同士が繋がり、ネットワークを構築するようになるのです。
こうなると頭脳は新しい脳力を獲得しているので、たとえ初めての早口言葉であっても、正確に聞き取れ、追唱・理解できるようになります。このネットワーク構築が老化による物忘れや病的な認知症も防いでくれることが次第にわかってきたのです。
未曾有の老人大国 ニッポン
九月二十一日の「敬老の日」に合わせた総務省発表によると、65歳以上の高齢者の人口推計は3384万人で、総人口の26・5%で過去最高となりました。この割合は当分の間増える一方だそうです。ちなみに80歳以上の人口も今年一千万人を超え、7・9%になったそうです。
お年寄りになると、たとえ記憶力は若いときに比べると落ちてきたとしても、豊富な経験に裏打ちされた総合的判断力は上がってくるので、権威ある長老として尊敬される人が増えてきて然るべきです。
しかし、現実社会では、お年寄りが増えるに従い、単なるもの忘れではない、体験したことをゴソッと忘れる認知症になる人が増えてきてしまいました。この認知症になる人は非常な勢いで増えつつあって、現在約五百万人程度おり、近い将来には、ますます増えて四人に一人位になるだろうとの予測が立つようになり、大きな社会問題になっているのはご承知の通りです。
多くのマスコミは、認知症特集を組み、どうしたら良いものかと問題を提起しています。
しかしなかなか名案がないので、結果的にはかえって不安を募らせるものも多くなっているのが現状ではないでしょうか?
ダブルタスク (運動+脳トレーニング)
今のところダブルタスクと言って、脳に同時に二つの面で負荷をかけ、働かせる工夫を続けると認知症になりにくいということが言われるようになってきました。例えば散歩しながら川柳をものにするとか、ステップ運動をしながら尻取りで頭を使うなどが代表的なダブルタスクと言われ、テレビでも健康雑誌でも、よく取り上げられています。
この際、認知症にならないようにできることは何でも挑戦し、呆けないで老後を楽しく送りたいものです。
そのみんなができることの一つに、速聴トレーニングがありました。
速聴とは
例えばラジオやテレビのアナウンサーがしゃべるニュースなどの内容を録音し、二倍速の速さで再生すると(そういう録音再生機は大手の電気器具量販店などで探すと販売しています)二倍速聴です。
これでも初めは慣れていないので聞き取りにくい人もいますが、そういう人でも、一ヶ月もその気になって気合いを入れて聞き取ろうとしていると、ちゃんと聞き取れるようになれます。
二倍速再生を二倍速で録音再生すれば四倍速です。それを気合いを入れて聞き取るように意識していると、次第に脳の神経細胞・ニューロンが、それに対応して、繋がり出してくれるのです。
その脳内進化のスピードは意外と早くて、遠からず聞き取れるようになると感激ものです。その脳内ネットワークがある程度でき上がってから、最初の一倍速のニュースに耳を傾けると、かったるくなるほど、間延びしてゆっくりに聞こえるから不思議です。
神経を集中して二倍速以上で聞いた内容は、中身もよく理解しており、よく覚えているのです。一回で無理なら二回、二回で駄目だったら三回という風に繰り返していくのが速聴トレーニングになります。
脳全体が活性化
脳全体が活性化するので、この脳力を上げた脳細胞ネットワークが働き出すに従い、記憶力が上がるだけでなく、理解力も集中力もグンとついてきます。
早い話、頭が良くなってIQもEQ(心の知能指数、感情調整能力)も上がってくるのです。学生の話ではありません。山ほどいる普通のご老人の話です。もともと優秀と言われる日本のご老人が、ますます優秀になれば認知症は減り、日本の未来は明るい希望が持てますね。
速聴トレーニングをすれば、大脳の左半球にあるウェルニッケ中枢が活性化し、これが脳全体を活性化する刺激を繰り出すようになると言われています。
この研究と実用化については大部前から様々な研究者や研究機関が行っており、それぞれ優れた実績を挙げています。速聴トレーニング用の資材や道具も特徴あるものがいろいろありますから、どこかご自分と相性の良い優れものの教材・資材と出会って、取り敢えず始めてみて、これで自分も認知症にはならなくてすむなとの自信を持って戴けたらとの思いで、各自の取り組みをお勧めしたいと思います。
今から外国語に挑む
チャレンジも可能に
速聴トレーニングをしていると、原理的には老年期になってからでも、外国語のマスターも可能になるということです。
普通は六歳頃までに自国の言葉用の耳(脳細胞ネットワーク)ができるので、それ以後は外国語の習得は困難と言われますが、速聴トレーニングでウェルニッケの分野が活性化し、言葉に関連する脳細胞ネットワークが充実・活性化すると、この脳にできている自国言葉専用の障壁は破られ、いくつになっていても脳は赤ちゃんが自然と言葉を覚え込むように外国語も覚えられるとも言います。
速聴の練習で脳内につくられている障壁がなくなれば、五年後のオリンピックまでに外人さんと外国語でオモテナシができるほど、しゃべって意思疎通できる能力を獲得することは、そんなに困難なことではなくなるというのです。おもしろいですね。
オモテナシニッポンは放っておけばボケているおじいちゃん、おばあちゃんが、先頭に立って、やる気になってやってくれるようになれたら素晴らしいことですね。
速聴トレーニングが国民的規模で盛んになると、老後のボケ多発や認知症増大の社会的不安を解消してくれる決め手の一つになると思われませんか?