物忘れ・認知症53

    歯と咀嚼を大切に!

 厚労省の見立てでは、我が国に今、約470万人いるとされる認知症は今後ますます増え、団塊世代が75歳以上になる10年後には、730万人を越えるのではないかということです。これは65歳以上の5人に1人が認知症患者という予測です。
 イギリスでは、地域ドクターを中心に生活習慣病が減ったら地域ドクターの収入をそれなりにアップさせる方法にしたら、ここ10年で生活習慣病も認知症も目を見張るくらい減ってきたというのですが、日本ではこの1月下旬、それを無視した医師に対する出来高払いの考え方で認知症対策を強化する「国家戦略」を決めました。認知症を含む病気が増えれば、医師と薬関係業者の収入は増えるのでしょうが、認知症を減らしたいという国民の期待と相反する結果とならないことを祈ります。

健康自衛の考え方は 認知症対策にも

 認知症が増えれば医師と薬関係業者の利益が増えるという社会の仕組みの中で、自分や家族が認知症にならないようにするには、よほどしっかりした覚悟で世の中に流されないよう気をつけて、自分の健康は自分で守るようにしないと危ないということになります。
 うっかりして藪医師に血圧なんか測られたりしたら、大したことないのに高血圧症と認定され、血圧の薬なんか処方されて飲まされると、全身の血管が拡がり、血圧は下がるかもしれませんが、血液は万有引力に引っ張られて下半身に、より沢山落ちて流れるようになり、心臓より高い位置の脳の血流は悪くなります。
 一昔前は180を超えないと高血圧とされなかったのが、今は140を超えると堂々と高血圧を宣告されます。患者がいなくなったので基準を180→160→140と2回にわたって変えたのです。その結果、まともに働いている中高年は、あらかた高血圧とされ、働かないで家でだらだらと優雅な生活をしている人だけがまともな血圧とされるおかしな世の中になってしまったのです。

血圧の薬は要注意

 高血圧の薬を常習的に飲むようになると、その中の血管拡張成分のために全身の血管が拡がりますから血圧は下がりますが、下半身の血管が拡がる結果、太股から足にかけての血液量が増え、その分、脳への酸素と養分の供給量は減り、老廃物の掃除も下手になり、呆けが早くやって来るようになるリスクが高まります。
 血圧の薬の常用には副作用として呆けやすくなるということがありますが、呆けもすぐ来るわけでないので、あまり深刻な問題になりにくいのです。そのうち呆けてくると、こんな問題も考えられなくなるので政府も医師も薬業者も訴訟されないだろうとタカを括っていると言われます。
 呆けないためには高血圧の薬を警戒することは忘れたくないものです。

コレステロールの 薬も要注意

 そして、コレステロールの薬も要注意です。人間と遺伝子が99%そっくりのゴリラは、血中コレステロールが400あるのが普通ですが、動脈硬化のゴリラはゼロです。だから動脈硬化の原因はコレステロールではないのです。
 豚とか牛などの哺乳動物の肉はGc(N-グリコリルノイラミン酸)というタンパクが豊富に含まれていますが、人間は食べて血液の中に栄養成分としてのGcが回ってくると、血中をパトロールしている白血球がこれを異蛋白と認識して免疫反応を起こせば、活性酸素を出して反応するため、結果的に血管の内皮が傷ついて、それを修復するためにコレステロールが潜り込んできて、それが蓄積すれば動脈硬化となります。
 このコレステロールを敵視して下げようと薬に頼ると細胞膜が弱くなったり、必要なホルモンが作られなくなったりして老化が進み、病弱になり、早死にするようになります。当然呆けやすくもなるのです。こういうリスクもあるので、認知症対策の国家戦略を尊重する医師と薬に頼っていたら、認知症がイギリス並みに減るとは思えないのが悲しいところです。自衛策を考えましょう。

「50歳過ぎたらお肉 を食べましょう」に 惑わされないように

 Gcこそが動脈硬化の原因であり、これは人間が哺乳動物の肉を食べると危険に陥るというのは2013年にNHKがテレビ特集で放映した「病の起源」に登場したカルフォルニア大学のバルキ教授が教えてくれました。
 ご先祖さまが植物食動物という食性で生活していたので多量肉は魚であろうと鶏であろうと大腸で悪玉菌を増やしてしまうリスクがありますから、お勧めはできませんが、ガスや排泄物が悪臭を放たない範囲なら、動物性の食品をとるならその範囲内でどうぞというところでしょうか?
 悪玉菌優勢の腸に冷たい飲食物を入れたら、防衛に働く白血球が働けなくなり、脳に至るまで腸内悪玉菌による細胞内感染症のリスクを負い、行き着く先は認知症ということも忘れないようにしたいものです。

歯と歯周の健康を 考えましょう

 年をとると歯が抜ける人が増えますが、「歯の数」と認知症の関係が明らかになってきています。
 我々の歯は「親知らず」を別にすると28本です。東北大学の調査では、70歳以上の高齢者で健康な人では、平均で14・9本が残っていたのに、認知症の人では9・4本しか残っていませんでした。総合的に考察すると認知機能が低いグループほど歯の数が少ないことがわかったとのことです。MRIで見ても歯数が少ない人ほど記憶に関連する海馬が小さくなっているという相関関係が認められたとのこと。
 厚労省研究班の調査では、「歯がほとんどないのに入れ歯もしていない人」は「20本以上の歯が残っている人」の約2倍も認知症のリスクが高かったそうです。この研究班で分析を担当した神奈川歯科大学の山本龍生先生は「歯が少ない人、咀嚼能力の低い人ほど認知症発症者の割合が高くなります。大事なことは歯を抜かないようにすることです」と言っておられます。歯を抜くとその後に周囲の歯がなだれ落ちてきて、歯の数はどんどん減りやすくなります。やむを得ず抜いたら義歯その他で歯数がそれ以上減らない手当をすることが大事になります
。歯を失う原因は虫歯が4割、歯周病が5割と言われます。毎日5回の歯磨きやオイルプリングが大事と言われる専門家の話に耳を傾け、認知症予防に努めたいものです。

歯根膜の大事さにも 意識を向けましょう

 歯の根っこと骨の間にある「歯根膜」は歯から脳に刺激を送るために欠かせない役割を担っていると言われます。「歯根膜」は感覚の万能受容器で、食べ物の硬さ、厚みを察知して、食べ物の正確な情報を脳に伝えると言われます。
 歯が失われると歯根膜も失われ、かみ砕く必要のない柔らかい食べ物だけになり、脳への刺激も少なくなって脳の萎縮が進みます。ガムをかむことが認知症対策として勧められるのはこの逆をいくからでしょう。
 また、ガムは唾液を出させるので、これも歯周病予防になるのです。ごま油やココナツオイルを大匙1杯ほど口に含んで口をクチュクチュするオイルプリングも唾液を沢山出させる良い方法です。

かみ合わせ

 歯のかみ合わせが悪いとアミロイドベータがかなり増えるという動物実験の結果もあります(日本歯科大学)。認知症の一つアルツハイマー型認知症は、アミロイドベータ蛋白が脳神経にたまるところからスタートします。最後はタウ蛋白の蓄積で脳神経の死滅になるわけですが、アミロイドベータの蓄積期はかなりの長期です。歯のかみ合わせは、この意味からも軽視はできませんね。定期的にかみ合わせを調整してくれる腕の良い歯科医を持つことは認知症予防のためにも大事ということになります。このかみ合わせを狂わす要因としては、「高すぎ
る枕」「電車バスでの居眠り」「何かと足を組む姿勢」の三つが有名です。

舌の運動

 脳の感覚野と運動野の3分の1は口周りに関係しているので、舌をこまめに、また、大きく動かす運動は、脳が活性化し認知症を予防するのに役立ちます。同じ理由で顔の表情を鏡など見ながらいろいろ変えたり、百面相に励むなども認知症予防に役立つと言われます。生活の見直しの一つに取り入れたいものです。