物忘れ・認知症41

 65歳すぎの七人に一人が認知症、その数の約倍が認知症になりかかっている予備軍、つまり65歳すぎたら四人に一人が怪しい人といわれるくらいに認知症が増えているのが現状だということですから、これからは年をとってきたら自分も周辺の人も、その用心をしないといけない時代になってきたということですね。世界的に大活躍をしたレーガンさんもサッチャーさんも最後はアルツハイマーでした。二人とも美食・洋食・肉食・冷たいワインが大好きでした。
 日本は超高齢化社会に突入しています。このままいくと、老人人口が増えるに従いボケも増えますから、オレオレ詐欺にコロッとだまされるボケ気味人口が増え、なりすまし犯罪の温床と被害はますます広がっていく気配です。認知症が増えると犯罪グループが経済力をつけ、より住みにくい安心できない社会になっていきます。取り敢えずは、せめてご自分や家族がこの被害者にならないようにしたいものです。
 昔から自分勝手で我が儘な人、それに怒りっぽい人がボケやすいともいわれており、怒りっぽい人は、どこかで「怒りは徳の林を焼く」などと教わったり、実感したりして、今後は怒らないようにしようと自分なりに決めたりしても、二年三年もすると、その決めたことを忘れ、突然怒りのスイッチが入ってしまうことがあるのは、世間ではよくあることです。頭の良い人は、自分の性格の尖鋭化とその社会生活上のマイナス面に自分で気がつけるのです。短気は損気と反省して、今後は二度と怒らないようにしようと決めたりするわけです。大抵の場合
、自分がそんなに怒らなくとも、長老の貫禄で周辺に穏やかに注意を促せば、問題は自ずと解決していくものです。しかし、気が短くてそれを待てない人が、怒らないようにしようと決めたことを忘れてしまえば、もともと短気尖鋭性格の人は、気がついたら怒り声を上げていたということになります。
 その人の次回の自省のポイントは、早めの有効な認知症対策の実行でしょう。俗にいう頭の良い人・学者が認知症になりやすいのです。公務員で偉かった人がとても呆けやすいともいいます。偉かった人には周辺の人は面と向かっては注意してくれません。こういう人は、まずご自分の反発心にご自分でブレーキをかけていただき、私どもの自然食ニュースが打ち出している食性論にもご自分で気がついて、もともとのヒトの遺伝子に合わせて植物食の範囲で栄養充足の食事の愛好者になることと、冷たいものを断つ、そして食べ物飲み物は温かいものを
、を実行することによって認知症対策の実をあげていただければ、二度と怒らないと決めたことを忘れないようになることでしょう。
 冷たいビール以上に危険なのは、氷を入れたアルコール飲料です。アルコール濃度が薄くとも温度が体温より低いものであれば、ましてや零度に近い氷水ならば、もの忘れから始まる認知症を招き寄せるキチガイ水です。これぐらいなら大丈夫だろう、自分だけはそんなことにはなるはずがないとの思いは、やがて認知症を招きかねない傲慢・驕りという心の癖でしょう。緊張を解き、楽しい気分になれる程良いアルコールは温かいお酒でいきたいものです。
 念のため参考文献もあげておきます。幻冬舎新書『公務員はなぜ認知症になりやすいのか』長谷川嘉哉著。

若くても食べ物の 選び方を間違えば、 若年性認知症の 落とし穴

 高齢に伴う認知症増加の次に問題となるのは、65歳以下の若年性認知症の増加でしょう。人間はもともとが植食動物系の生物ということをみんなが忘れ、生活レベルの向上に伴って雑食の度合いが肉食動物も顔負けというほどになり、悪玉コレステロール過剰になると血管は加齢とともに動脈硬化を起こすようになります。心臓から上の血管、特に動脈が詰まり気味になるように細くなってくると、脳へ流入する血液が少なくなり、脳の酸素不足、老廃物の蓄積で脳の各パーツの故障・壊れが準備されていきます。
 人気のあったNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』ドラマの最終回、琥珀採掘現場で見つかったのは肉食性恐竜の足の中指骨でした。水口君の箸置きになっていましたね。恐竜は新種発見のたびに草食性恐竜か肉食性恐竜かという、その恐竜の食性が必ず問題になります。
 その伝で、人間の食性を問えばどういう答えになるのでしょうか?
 現住所・雑食、本籍・草食(植食)というところではないでしょうか?
 原始時代のヒトは、ゴリラ・チンパンジー並みにアフリカの広葉樹林の茂る枝の中を生活圏として子孫を増やしていました。この頃の生活ぶりや食べ物は今の野生のゴリラ・チンパンジーに近く、95%が植物で木の葉・木の実・果物で、動物性のものは主として昆虫くらいだそうです。二百万年くらい前まではゴリラ・チンパンジー・ヒトはまだ分化しておらず、同じグループの種族だったといわれています。そのグループから最初にゴリラ、次にチンパンジーが枝分かれしていったそうです。ヒトとはルーツが一緒の近縁なので遺伝子もそっくりで、今
でもゴリラの遺伝子とヒトの遺伝子と比べると98%一緒だそうです。地球環境の寒冷化と山脈隆起による気候大変動で、それまで住んでいた森が退化した約六万年前、ヒトは地上に降り立って二本足で直立歩行するようになり、空腹を満たすため肉食動物が食べ残した肉などを食べるようになり、この二万年は、食べでのあるマンモスなどを追いかけてアフリカから出て、全世界に散らばって住むようになり、今日に至っているのです。何でも食べないと空腹が満たされません。肉など動物性のものは食べてみたら美味、体も温まりました。また、栄養学の
進歩とともに栄養価の分析もできるようになってきたら肉や卵は蛋白質に富み、質的にも量的にも素晴らしい食品ということになってきたのです。爪・歯・腸などを観察すれば、植食動物の名残りが色濃く残っているので、もともと動物性食品は消化より先に腐敗がはじまる人が多いのですが、そんなことは今、あまり問題視しない風潮です。しかし、人間は遺伝子が植食動物ゴリラの遺伝子とそっくりさんなのですから、動物性の食品は高度に発展してしまった蛋白質がベースになっているので、本来的に分解・消化が手間取って難しいのです。時間の経
過とともに、腐敗する分子が増えてきます。ガスにしろ液体にしろ細かい固体にしろ、腐敗分子の悪影響は腸内にとどまりません。薄い腸粘膜を通過してヒトの体内に侵入してくる分子は相当あると見なければなりません。それらに取り付いている腸内細菌、特に悪玉菌も当然ながら腸壁を乗り越えて体内に入ってきます。免疫細胞、つまり白血球はその三分の二が腸壁内部かその際に集中配置され悪玉菌対策を担当していますが、悪玉菌を食べかかっても、腸内温度が冷えていれば白血球の消化能力が落ちていますから、悪玉菌は白血球の中で死んでいま
せん。その白血球が腸から血液内に入れば、当然脳を含む全身に流れていきます。もし、それらが大挙して脳になだれ込めば当然、脳の故障・壊れにつながります。脳の真ん中近くにあってホルモンのバランスをとっている脳下垂体は血液脳関門が存在しない器官なので、脳下垂体や隣接器官はとても被害が出やすいのです。
 本来的な脳神経組織ではなく、陸上動物になる前、海の中で魚の一種として生活していた時代、口の少し後ろで消化器の一部として消化ホルモンのバランスをとっていたラトケ嚢が進化の過程で脳の真ん中でぶら下がってホルモンのバランスをとる脳下垂体という器官に化けたのです。
 この脳下垂体に隣接しているのが感情を左右する扁桃体、そして記憶を担当する海馬です。脳下垂体に腸内腐敗物の悪影響が及べば、自己制御をはみ出すほどの怒りをもたらす扁桃体の異常興奮が起きやすくなるのです。
 そして、脳血管性の認知症は脳血管の動脈硬化がつきものですが、これは腐敗産物だけでなく悪玉コレステロールの蓄積も原因になります。脳卒中を起こした患者に「どんな食べ物が好きだったんですか?」と尋ねると、ほぼ全員に共通するのは卵が大好きという答えだそうです(『長生きでボケないで心豊かな脳の使い方』天野惠市著・主婦の友社刊、142頁より)。この本によれば、「肉が大好きと答える人は多いが全員ではない。てんぷらなどの油ものが好きと答える人は多いが全員ではない。コレステロール含有率ナンバーワンは卵。卵は鶏卵
だけでなく魚卵も同じ、卵から作るマヨネーズもやめてください」
「牛肉、豚肉、鶏肉など陸上動物のアブラはすべて飽和脂肪酸で動脈硬化を悪化させます」とあります。こうなると腸内で腐敗していない人、つまり排便やオナラが悪臭を放つ人だけでなく、全ての人が将来、血管性認知症にならないようにするためには、卵と肉は多量摂取はやめた方が良いということですね。日本人の胴長短足は西洋人より腸が長いことを示し、これは、植食動物の名残りがより強く残っていることを意味しますから、このご本でも「つまり、肉をやめて魚と野菜を中心にした食事に切り替えるのです。動脈硬化に間違いなく効果がある
食べ物と飲み物があります。納豆と赤ワインといも焼酎です。」とあります。大いに参考にしたいものです。
 個人別に考えても消化能力を超えて腸内で動物性食品が腐敗し、排便が臭くなる人が増えるに従い、脳内ベータアミロイド蛋白の蓄積と、脳の縮小が見られる人が増えて若年性アルツハイマーも増えますし、脳血管性認知症も増えるでしょうから、皆様の周りで、感情表現が乏しくなる、もの忘れが多くなる、自分のいる場所や日付が分からないなどの認知症の初期症状が見られる人に遭遇したら、たとえ二十歳代、三十歳代と若い人でも、認知症の可能性があると見て注意していないと、思わぬ被害に巻き込まれないとも限らない時代に突入してきたと
いうことです。まだ若いのに無気力・無関心・無感動という、いわゆる三無心象が出ている人がいたら、脳が壊れかかった認知症予備軍と見て対処していきたいものです。