物忘れ・認知症31

 歴史を学ぶ時の四桁の年号や、七桁の例えば郵便番号、八桁の例えば電話番号などをパッと覚え、しばらくの間は思い出せることは、若い時は得意だった人でも、年老いてくると難しくなることが多いのです。この短期記憶というのは海馬という脳内器官が担当しますが、この性能の衰えは何がもたらしたのでしょうか? 簡単には老化だと一言の説明でこと足りるようですが、その時間と共に海馬細胞を劣化させたものは、今は活性酸素による酸化障害であろうと大方の学者が考えています。活性酸素はストレスの過重でも生まれますが、それは一つの
細胞あたり数百から二千個くらいあるミトコンドリアの不調によって電子伝達系で活性酸素が生まれ、もれ出たものが細胞自体を酸化障害するからだといわれます。そして何がミトコンドリアの不調をもたらすかを更に追求すると、多くの場合、腸内細菌や口腔内細菌が白血球を隠れ蓑にして脳内に侵入し、それを撃退するためパトロールしている白血球が活性酸素をつくって使い、その流れ玉が自分の細胞に当たって酸化障害が起こる、この連鎖的悪循環がミトコンドリアに及べばその不調となると説明されます。
 いずれにしろ、老化に至るまでの時間の長さが、もの覚えの悪さを招いたのではなく、その時間の中で起きた酸化障害が海馬の性能を落としたということです。ボケのメカニズムの真相はこの流れの中にあるようです。
 体内での酸化障害のボリュームの大小がボケ具合を決める第一のリスクということになれば、それを防ぐパワーの実効性が高ければ、時間を経て老年化しても、老化の程度は少なく、ボケの程度もそれなりに低くてすむことになります。こう考えれば年は若くても脳の酸化障害が多い人が早くからボケ、90歳すぎても全くボケていない人がいるのがうまく説明できます。脳での活性酸素発生を最小限にする工夫、その最たるものは腸と口腔からおびただしい数の雑菌が体内に入らなくすることでしょう。脳はこれらの菌が入り込まないよう血管に特殊な構
造があって、これを血液脳関門ということが教科書には書いてありますが、脳内でホルモンのバランスをとる働きをするといわれている脳下垂体は、消化器から進化したゆえに血液脳関門は現に存在せず、脳や口から入り込んだ雑菌に容易に感染するリスクが高く、ここがやられれば、隣の脳扁桃体、更に海馬へと感染が広がり、防衛を担当する白血球が出す活性酸素による酸化障害が海馬のミトコンドリアに及ぶことは容易に想像できます。

エネルギー発生は 老化とともに解糖系 からミトコンドリア 系に!

 この地球上の哺乳動物の多くは命の回数券といわれる遺伝子末尾についているテロメアの長さで寿命が決まるといわれます。過重ストレスが短命化を招くといわれるのは、ミトコンドリア障害による酸化障害だけでなく、過重ストレスがテロメアも短期で短くしてしまうからだともいわれます。そして、これで決まる寿命の長さのおよそ半分くらいまでは、つまり壮年期半ばまでは糖質を分解して得られる解糖エネルギーで生活しますが、後半は糖質によらず酸素力でエネルギーを生んで生きていきます。人間もこの地球上の動物の一員として、生きるエ
ネルギーをこのように生んでいます。「砂糖は脳のエネルギー」などのコマーシャルの決め言葉に洗脳、いや染脳されてコーヒーに砂糖をたっぷり入れて飲む人が多いのですが、人生後半戦で体も脳も若い時ほど必要としない糖分を過剰に摂っていると、糖尿病になったりして、そのために体内・脳内で活性酸素が過剰に生まれ、結果的にボケが進行してしまうリスクを背負い込みます。ちなみにコーヒーに入れるミルクまがいの白い液体はこれまた体内で活性酸素を増やすトランス脂肪酸(マーガリンとかショートニングに多い)が多いので、コーヒーは
ストレートで飲みたいものです。砂糖だけでなく、白米ご飯、白パン、うどんなどもボケやすい年齢帯に入ってきたら、なるべく減らすのがボケにくくなるコツです。うどんを日常的によく食べる徳島県が糖尿病ワーストワンの県であることは偶然ではありません。糖尿病はインスリンを生み出す膵臓のランゲルハンス島に炎症を起こして、その炎症を止めるためのサイトカインTNFαの血中濃度が高い人がほとんどなのですが、このTNFαは別名「インスリン阻害くん」といわれるほどインスリンを働けなくさせるのです。ランゲルハンス島は、人体
内でも活性酸素に弱く慢性的炎症を起こしやすいところです。人生後半戦は糖質摂取を極力抑えることが糖尿病やボケのリスクを下げるコツです。

冷たい飲食物と 肉・卵の過剰摂取・ 便秘が脳への 雑菌侵入を招く

 脳内での活性酸素発生は、そこに雑菌がやってくるからで、体内の雑菌の巣は腸と口腔です。便秘をすればタチの悪い大腸菌がとめどなく数を増やし、特に草食動物型の腸をもつ人間は、卵と肉の過剰摂取が危険です。動物性食品で幸福感が味わえる人はせいぜい魚食で幸せを味わってください。魚は消化がうまくいきやすく、動物性蛋白質がとれます。蛋白質不足も老化が早くなり、「がん」細胞を生まれたてのタイミングで殺してくれるNK細胞の働きも悪くなるのでがんリスクも増えます。植物蛋白でも納豆の毎日摂取は蛋白質摂取という意味でも
おすすめです。いずれにしろ腸内・口腔内のタチの悪い雑菌を粘膜を通過させ、体内に、脳内に感染させるのは体温より冷たい飲食物です。電気冷蔵庫の普及で、冷たいもの中毒が増え、ボケが増えてきたというのは笑い話ではない実話です。

電磁波に要注意

 ケータイもますます進化し便利になってきましたが、頭に近づけると脳内でも活性酸素を生み、また、脳内を酸素不足にするという「副作用」もあることを忘れてはいけません。この活性酸素と酸素不足がボケを増やすのはこれまで述べてきた通りです。