物忘れ・認知症

海馬を強くする方法A

社会的に他者を引っ張る人になれば、認知症は遠のく

 一昔前の蒸気機関車や今の「桃太郎」貨物列車を見ていると、引っ張る車両と引っ張られる車両がはっきりしています。人間社会を見ていても、リーダー役とついていくグループとはっきりしていることも多くあります。動物園の猿山を見てもボスと家の子郎党がはっきり分かれています。ボスの海馬のニューロンやシナプスの数は、家の子郎党猿の海馬のニューロンやシナプスの数をはっきりと凌駕しているのです。そして増加スピードもはっきりとした差があるそうです。強い猿は賢くなり、弱い猿は海馬も脳も弱い立場を余儀なくされる、なんか身
につまされる話ですね。
 そこで思い出していただきたいのが「日々の学習が海馬を強くする」です。まだ社会的に弱者の場合、勤勉こそが学習の力で情報の出入りを多くし、記憶範囲を広げ、頭脳力の向上をもたらします。若い人が有利ですが、勤勉であれば年の不利をカバーできます。頭脳力抜群ということになれば、社会でそれなりの指導的立場となり、周辺を引っ張っていくリーダー役を演じるようになり、その苦労が知恵をつけ、ますます海馬のニューロンもシナプスも増えて、頭脳力向上の好循環を招きます。社会的強者になると、脳が分泌するホルモンも変わってき
て、ますますやる気満々、四方八方に配慮する力がついて、あなたは呆けているヒマもなくなり、認知症にならず寿命いっぱい楽しく人生を送れるでしょう。
 この話は逆は大変です。社会的弱者になると、グチが増えて勤勉という二文字が消えてしまいます。学習? ふん! 記憶範囲? フン! ということになり、海馬も脳もパワーを失い、悪い方へ悪い方へ落ち込んで、ますます引っ張ってもらう立場になり、そのうち、引っ張られることにも苦痛を感じるようになると、もはやこの世は地獄ということになりかねません。日々の勤勉を心がけ、何か社会的お役の話が舞い込んだら、あれこれいわず喜んで請けて、誠心誠意相務め、引っ張る立場にシンクロしていきたいものです。これこそ認知症にならぬ
よう海馬と脳を強くしていく道です。

食性の範囲を重視し、 栄養バランスしっかりと

 今は人間は雑食なので、好き嫌いなく何でも食べましょうと、事実上、肉や卵、乳製品などの動物性食品が推奨されている世の中になってしまい、もっぱら植物性食品で栄養を充足すべしという、本誌のテーゼは無視されがちですが、この現代栄養学の栄養充足法が海馬も脳も壊す結果になりやすいとの警鐘を私どもは打ち鳴らし続けてまいりました。
 飽食は呆食といって、頭の血の巡りを悪くします。逆に食前の程よい空腹感は、消化器にグレリンというホルモンを分泌させ、これが海馬に達すると、海馬内の情報伝達速度は20%も上がるとか。エサにうまくありつくよう、記憶本体の海馬をフル回転させるためです。毎日の食前の空腹体験は、海馬にも脳全体にも好ましい影響を発揮します。
 そして、いざ食事になったら、とにかくよく噛むことです。奥歯の下に小型の血液プールがあり、ここを噛むことで刺激すると脳から血液を引っ張り出し、その分、新鮮な血液が脳に入っていくので、噛むことが脳に酸素を送り込むことになるのです。食事のたびによく噛むことが認知症を防ぐ力になるので、食事の合間にガムを噛むことも大いにお勧めです。
 ヒトは遺伝子から見ても、歴史から見ても、体つきから見ても、肉食動物ではなく、草食動物並みの消化器官を持っているので、肉や卵や乳製品は、栄養分は豊富でバランスも良かったとしても、人間はこれらを上手に消化できないで、腸内で腐敗させてしまう危険性がつきまといます。腐敗分子や悪玉菌が直腸で吸収されたら、解毒器官の肝臓を経由しないで脳は直撃されて、様々なトラブルの原因になります。血液脳関門がない脳下垂体が最初にやられ、海馬も扁桃体も、脳全体もやられるのです。リン脂質の多い脳は活性酸素にやられやすいので、
なおさら還元体質にしておきたいものです。そして栄養素を大量に消耗する現場なので、ミネラル・ビタミンを何一つ欠けることなくとり続け新陳代謝も活発にさせておきたいものです。脳細胞の新生、ニューロンやシナプスの数が増えるのも詰まるところ新陳代謝のお陰なのです。
 食性の範囲を重視し、栄養バランスしっかりということを毎日続けていただいていれば、認知症も潜伏期間を超えて暴れ出すということはきっと防げるでしょう。

深呼吸をしっかりと

 体内で一番酸素を必要としているところは脳です。現代生活は便利になった分、人々の運動不足を招き、同時に酸素を吸う量も落ちているといわれます。特に老化を自覚するお年頃になると、体が硬くなってきたと嘆く方が多いのですが、この多くも酸素の吸入量が減ったために、筋肉に回す酸素が減ってきたためのことが多いといわれます。その証拠に、毎朝は当然として、思い出すたびに深い呼吸をして酸素を十分に吸い込むようにしていると、筋肉の硬さも和らいでくることが多いといわれます。当然、脳に回る酸素の量も増えて、海馬も脳全体も
慢性酸素不足から救われ、認知症のリスクが下がる方にいきます。老化に伴い、姿勢が悪くなる人が多いのはよく知られています。猫背、亀背といって背が丸まってくる人も呼吸が浅くなりがちなので、筋肉にも脳にも十分な酸素が回りかねることになりがちです。そして、運動もおっくうになり出すと、全身の酸素不足は悪循環となり、運動能力の低下が記憶力減退を招くということになりかねません。そしてこれが認知症の引き金を引くことも考えられるのです。
 指の先を差し入れると、血液中の酸素濃度が数字に表れる家庭用測定器もそんなに高い値段でなく売られています。欲しい方は血圧計を売っているようなお店で問い合わせてみて下さい。こういう器械で測定してみると、深い呼吸をゆっくりと10回もすれば当座、血中酸素濃度は簡単に満足すべき水準に上がることがわかります。
 思い出すたびに横隔膜が十分下がるほどの深い呼吸をゆっくりとする習慣を身につければ、その分、あなたは認知症から遠ざかることができると思われます。