物忘れ、認知症@

老人の入り口で

 最近、65歳を回った年齢層の方から、よく「物忘れ」をするようになったが、老後のアルツハイマーなどのボケの前兆と思うと不安だ、何か良い対策は無いだろうかと聞かれることが増えてきました。
 長寿は大いに結構ですが、周りが迷惑するほどひどい呆けになってまで生きたいとは思わないという人が殆どではないでしょうか?
 人の名前が出てこない、知っている漢字が書けない、物をしまった場所がわからなくなる、映画のタイトルが思い出せない、集中力が無くなった、昨日食べたものが思い出せない、注意力が散漫になったなどなど、気になり出すと心配の種はつきませんね。
 よくいわれるのは、「今朝食べたものが思い出せない」というのはまだ病的ではない。「食べたかどうかも思い出せない」というのは病的呆けだということですね。
 物忘れをするというのは、脳全般の老化、中でも短期記憶を司る海馬の老化を意味することが多いといわれます。
 ある程度の「物忘れ」は自然な老化現象による海馬の機能の衰えで気にすることはありませんが、そのうち病的なほどの本格的「物忘れ」をするようになると、人生に自信がなくなってきますし、医者からは器質障害に分類され、アルツハイマーと診断されて薬を処方されるようになりかねません。
 なんとか、まだ多少の「物忘れ」程度の内にしっかり対策を立て、実行に移しておきたいものです。手遅れになってからでは本人も周りも大変です。

まず取るべき対策は…

 まず最初に考えるべきは、脳にウイルスや細菌が入り込んで異常を起こしていないかということ。 脳は昔から血液脳関門があって、大事な脳を守るため脳に有害な物は入り込まない仕組みになっているのだから、脳が細菌におかされることなんか考えなくても良いという「常識」があります。そう信じ込んでいる医師も多いのです。
 しかし、多くの脳病がインフルエンザ脳症から始まって、ウイルスやら細菌に侵入されて起こることはよく知られています。病原菌などが入りにくいようにはなっているのでしょうが、入らない、入る筈がないと決めつけるのは、おかしな話です。
 脳下垂体にはその構造からいって血液脳関門そのものがないそうです。また、病原菌がストレートに入れなくとも白血球に病原菌が入り込んでしまい、それがガードされた箇所に入り込んでトラブルの元になることもあり得ます。人間そのものが黴菌の世界に住んでいるのですから、体内に完全な聖域なんかあるわけ無いと思っていた方が真実に近いと思います。
 ウツの人は脳の扁桃体にこのようにキズがあってCTスキャンで撮るとこのように写るんですよということを写真で教えてくれるのが『心の病は脳の傷』(西村書店刊)という本です。
 扁桃体といえば海馬の先っぽではありませんか? 何でこんなところに傷ができるのかと考えてみたら、そこに現れたウイルスなり細菌なりを撃退するために白血球が活性酸素をつくって使い、その流れ弾が傷をつけたというのが一番わかりやすいストーリーでしょう。
 例えばインフルエンザのウイルスは乾いた喉の扁桃腺などからも吸気を通じて容易に体内に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って、脳を含む全身に簡単に回りますし、細菌もだいたい腸内には普段から悪玉菌、善玉菌、日和見菌などとして夥しい数で棲みついているわけで、腸が炎症を起こしたり温度が下がったりして腸粘膜のバリアの調子が狂えば、簡単に腸内悪玉菌などは腸の壁を、場合によっては素通りに近い形で乗り越えて体内に侵入し、液体の流れに乗って脳を含む全身の器官に入り込もうとします。
 棲みつかれて、ちくちくとされて慢性的に炎症でも起こされたらなかなか撃退できません。何十年も苦しめられるC型肝炎なんていうのはこの部類です。似たようなことが脳の海馬で起きれば病的な「物忘れ」です。

腸に炎症を起こさせない

 腸内悪玉菌から全身を守るためには、まず腸に炎症を起こさせないのが大事ですが、そのためには臭いおなら・ガスをつくらないのが一番です。
 ヒトの腸がくねくね長いのは草食動物時代の名残りですから、唾液・胃液・腸液に出てくる消化酵素がその名残りを引きずり、もともとの能力・特性からいって植物性食品の消化は得手ですが、高度に進化していて分子構造も複雑な動物性の食物は消化は苦手というか、うまくいきにくい人が多いのです。
 特に島国で暮らし、四ツ足の動物はあまり食べてこなかった日本人は、殆どこの部類です。海で囲まれた日本人が食べてきた魚は、動物性ではありますが、進化の歴史から見て、そのタンパク質は割合と構造が簡単で、食べ過ぎなければ日本人は比較的上手に消化できますし、その油脂も、体温の高い鳥、豚、牛の油脂に比べると体温が低い人間の体内でも比較的流動性が保持されやすいといわれています。
 ヒトは雑食の歴史が長いので、動物性食品が全く消化できないわけではありませんが、調子に乗って食べ過ぎると消化に失敗し、たちまち腸内で腐敗し、排便の臭い、ガスの臭いが悪臭を放つ人が多いのです。
 アンモニアガス・硫化水素ガス・インドール・スカトールその他の悪臭はガスであるが故に浸透性がすごいのです。簡単に血中濃度が測れるくらいに上がります。数十秒を待たずして張り巡らされた血管をも浸透して脳にも流れ込むといわれています。脳の血管も細胞膜もガスは浸透させてしまいます。
 これらのガスはフリーラジカルが玉突きで起こす酸化の引き金も引きます。脳動脈の筋肉に痙攣も起こさせ、その発作の衝撃で脳の血圧を驚異的に上げ、脳出血を起こさせる原因にもなります。
 また、脳梗塞を起こさせて呆けの原因にもなることがあります。脳を傷をつけたくなければオナラが臭くなるほどの動物性食品は食べない、量を減らすということをいつも忘れないようにしましょう。
 これも忘れて、ついついグルメというのは、現代人のおかれている困った姿なのですね。

腸を冷やさない

 腸を巡る危険、つまり悪玉腸内細菌が腸の壁をすり抜けて、全身を巡る血液やリンパ液の流れに乗るほどバリアが壊れるのは、腸壁の炎症のほか、37度あるべき腸壁の温度が下がってしまったときにも起こるといわれています。
 これはお腹を冷やさないことが一番の対策です。一番危ないのは、冷たく冷えた水をがばがば飲むことです。水は比熱が高く、温まりにくいのです。夏でも冷やしたビールはいただけません。胃袋はトンネルし、すぐ腸に流れ込んでいきますから、しばらくは腸内細菌は腸壁をフリーパスして全身を巡る旅をしてくれます。悪玉菌なら最悪です。
 脳に棲みつけば呆けのもと、膵臓に棲みつけば糖尿病のもと。冷たい物は冷たい内に召し上がれといわれたら、あんた呆けなさいといわれているも同然なのに、喜んでごちそうと思い込む。
 そういう意味ではアイスリームや氷を浮かべたお酒、ジュースなどは最低の危険な飲食物。家庭の電気冷蔵庫も使い方によっては、呆け大国をつくる三種の神器。皆さんのまわりですでに呆けている人たちを観察してみましょう。冷たい物大好き人間やら、臭いオナラをする肉卵食べ過ぎ人間が多いはずです。前車の轍を踏まないようにいたしましょうね。 (つづく)