健康セミナー健康講座

─ヒトはなぜ生活習慣病になるのか
その1 生活習慣の何が問題になるのか ──細胞内感染E

「冷たいもの好き」は 困った本能!
─海から 生物は生まれた─

 人間は、もともと陸上で暮らしていたわけではありません。どこかで聞いたことがあると思いますが、この地球上の動物にしろ植物にしろ、陸上で生きているものは、みんな元々は海の中で生きていた生物でした。水の存在が必須の命は海の中で宿ったわけです。
 ですから先祖を辿ってみると、最も我々に近いといわれているゴリラ・チンパンジー系統の霊長類も、遡れば哺乳類の先祖は爬虫類型哺乳類といわれ、もっと大きく捉え、時間を遡らせたら魚の類だったといわれます。
 さらに、その、ずーっと前は全身、腸の腔腸動物。それが進化した魚のヒレが指を持つ手足に変わり、陸に上がり、両生類になり、それが爬虫類になって、爬虫類型哺乳類になり、恐竜時代・巨鳥時代にネズミ・リスの先祖のような哺乳類になって、樹上生活の霊長類になった後、陸上で普通のヒトにまで進化し、今、何事もないように生活をしているといわれています。
 海の中で暮らしていたものがどうして陸上で暮らせるようになったのでしょう?
 海の中で暮らしていた魚の時代には鰓で酸素を吸い取っていましたね。今、皆さんに鰓はないです。どこで酸素を吸い取っているかっていえば肺ですよね。肺というのは、魚の時代の浮いたり沈んだりする浮き袋だったところです。陸上で生活していた爬虫類型哺乳動物の時代の肺が海中生活に戻った時に浮き袋になったということです。陸上生活では鰓はもう退化して隠れています。
 では何故、再び肺で酸素を吸うようになれたかというと、この海が地殻大変動で持ち上がって、干拓地というか沼のようになったところのわずかな水域で魚が暮らさざるを得なくなった時代があり、陸上動物の先祖筋といわれるサメ類が、その干上がりつつある沼地で、のたうちまわっているうちに先祖返りの突然変異を起こして、昔、肺であった浮き袋が酸素が吸える肺に戻り、呼吸ができるようになった個体が助かったといわれています。
 それが今、当たり前に肺で呼吸をしている我々のご先祖様筋にあたるそうです。沼地でのたうちまわっていた時には、まだ冷たい海の中で気持ちよくすいすい泳いでいた記憶もあるし、皆さんだって熱いお風呂に茹だるように入ったら苦しいじゃないですか。そんなもんですよね。そういう沼地では、時に太陽はじりじり照らすし、日ぶくれヤケドはするし、熱い風呂の中に浸かっちゃったようなもので、いくら暑苦しくてももう逃れられない。どうしようかと思いつつ、死んだご先祖様がずいぶんいたと思いますけれども、たまたま運のいいご先祖様筋
が突然変異を起こして、浮き袋が肺に戻って空気中の酸素を吸えるようになり、我々に命をつないでくれることになりました。
 赤ちゃんって誰が教えたのでもないけれども、母親の乳首に吸いつくじゃないですか。あれは本能だといわれています。
 ご先祖様が身につけた生き延びるすべが遺伝子の中に記憶として入っていて、自然に遺伝子のスイッチをオンにする、これを本能というんですね。そういう意味では暑い時には冷たいものを無性に欲しがる。困ったことに、それで体温を調節している程度なら良いのですが、腸の温度も体温も免疫力が落ちるほど下げてしまうケースも出てきますが、これも本能的行動ということでしょう。そういう時代に身につけた遺伝子の記憶なんですね。
 暑い時には冷たい水が欲しくなる。ですから、ちょっと暑くなると皆さん冷たいものが欲しくて、ビールをジョッキでぐぐっと。「これが俺のシアワセだ」なんてやってますけど、それが病気のもとにならなければいいなと心配しています。
 ビールでも清涼飲料水でも「体に良いお水」でも冷たくして飲んだら、腸は必ず1℃、2℃、場合によっては一時的に5〜10℃以上も冷えますから、その冷えている間に腸内細菌が腸壁をすり抜けて多量に入ってきて、体内をリンパ液とか血液などの液体の流れに乗って脳内でもどこにでも簡単に移動してしまうわけです。

細胞内に 入り込まれたら 病気のはじまり

 脳細胞の中に腸内細菌なりウイルスなりが入り込んで細胞内をメチャクチャに破壊すれば、人は簡単にうつになったり精神病になったりします。
 臓器をつくる細胞内に入り込んで増殖すれば、細胞内感染を起こして、その臓器名のつく病気です。例えば、脳炎・肝炎・膵炎とか。この膵炎が糖尿病になっていきます。悪化して、隣の臓器、あるいは遠位の臓器に、この感染が飛び火すれば、最後は多臓器同時不全で死ぬこともあります。
 血管の細胞内に腸内細菌が感染すれば、これが血管病です。動脈硬化はこういうことでも進行してしまいます。だから我々が病気にならないためには、まず腸の壁を荒らさない。バリアを壊す炎症を起こさず冷やさない。これが一番大事です。ここを是非ど忘れしないで下さいということです。

よく噛むことの 大切さ

 だから食べものをよく噛むというのもいろんな意味でとても大事なんですが、よく噛んで食べることによって、食べものは細かくなり、消化液が作用する表面積は広くなるので、内部から腐るより速く消化吸収されて栄養になる。そういうことです。

体温が下がれば 白血球がバイ菌を 食べる能力も 極端に落ちる

 人間の体温は免疫力を大きく左右するといわれますが、その一つに体温が1℃でも下がると白血球がバイ菌を食べる力がほとんどなくなるということがあります。
 冷たい飲食物をドバッと飲み込んだり、寒いプール等で泳いだりして唇が紫色になるということもありますが、そういう時は、多量の腸内細菌が腸壁を乗り越えて、体の内部に一時に入り込んでも、白血球の貪食能が極端に衰えているので、血液やリンパ液の流れに乗って全身どこにでも流れて行きます。
 また、白血球につかまって食いつかれたとしても、トロイの木馬よろしく、殺菌力なき白血球カプセルにガードされて、本来白血球が自由に出入りできるところにはどこにでも深くバイ菌(腸内細菌)が入り込めるということです。
 例えば、膵臓内まで運び込まれ、そこで橋頭堡がつくられてしまい、ランゲルハンス島で攻防が続けばインスリンの出方が不十分なタイプの糖尿病になります。
 暑い時のキーンと冷やしたビールが今日、足先を切らなければならない糖尿病による壊疽のもと、ということも十分あり得る話です。暑い時には本能的に冷たいものを欲しがるのは本能の要素がある上、子育てにあたってその恐さの自覚のない親が暑い時や風呂上がりに子供にせがまれて、アイスクリームや冷たいジュースを与えているうちに、子供の脳に変調が起きて、もらえるまでスネる、ゴネる子供になってしまうことがあります。お年寄りが人気をとろうと、あるいはゴネる子供のご機嫌をとろうと冷たい飲食物を与えているうちに、脳に変調を
来す「恐い」「聞きわけがない子」になってしまうことがあるとすると、これは、その子の将来に由々しき問題となります。欲しいものを手に入れるためには犯罪でも冷然と犯す人格が形成されかねません。
 電気冷蔵庫ができて文明の恩恵を受けられる機会は増えましたが、同時に小さい頃から冷たい飲みものなくしてはいられない「冷たいもの中毒」になる子が増加してきたのです。
 これから暖かくなる季節です。体温より冷たいものは飲食しないという習慣を子供も大人も健康常識の一つとして身につけるということを念頭においた生活を心がけていきたいものです。
(つづく)