健康セミナー健康講座

─ヒトはなぜ生活習慣病になるのか
その1 生活習慣の何が問題になるのか ──細胞内感染@

健康セミナーの ポイント

 今月から新たに、各地での健康セミナーでの講演を基にした健康講座とさせていただきます。
 私どもではいわゆる生活習慣病はどこに問題があるのかを考えていく中で、食事や運動以外にも、巷間ではあまりいわれていない、「ここがポイントになる」というところを指摘しております。
 それが「細胞内感染」です。詳しくは本誌連載中の西原克成先生のページとご本をご参照ください。

病気の本体は 細胞内感染


 糖尿病にしろ、がんにしろ、あるいは血管がつまったり切れたりして心臓発作や脳卒中などの病気になるのには、細胞内感染が関与しています。
 その細菌やウイルスは、インフルエンザウイルスなど外から侵入して感染症を起こすものだけではなく、常在細菌といって我々の体に普通に棲みついているもの、例えば、腸内細菌なども悪さをするのです。
 人間の体は約60兆個の細胞でできておりますが、この細胞にウイルスやばい菌やバクテリアが、体内にとめどもなく入り込んで細胞内感染を起こすのが病気の本体です。
 今、医学の世界は、いわゆる臓器別医学といいまして、腎臓病センターとか、心臓病センターとか、肝臓病センターとか、病気をものすごく細分化かつ専門化して捉えていまして、病気の数を数え上げると万単位の数になるともいわれています。
 こうなると我々国民の側は、専門知識化してしまったものにはついていけない。専門のお医者様に全部お任せということで、とにかく細かく検査して、診断してもらって、お薬をもらったり、外科的処置などをしてもらう──こういう流れに身を任せるようになってしまっております。
 しかし私どもは、病気は、こういうふうに捉え直そうと提案しております。少し極論になりますが、病気というのは何万個もあるものではなくて、たった一つと捉えようということです。
 それは、全身60兆の細胞の中に、ウイルスやばい菌が入り込んで、細胞内感染を起こして、めちゃくちゃになっている状態が病気だと考えるわけです。
 がんであれ、腎臓病であれ、心臓病であれ、血管病であれ、糖尿病であれ、全部そういうことではないか。だから、我々の側から捉えていく時、いかにして病気にならないか、病気を治していくかという観点で考える時には、まず体の中に大量にウイルスやらばい菌やらが入らないようにするのが、一番大事なことだということになります。
 a
ウイルスやばい菌の
侵入口
一番の危険地帯は
「腸」
 では、どういうところからウイルスやばい菌が入るのか。普段はバリアになっている皮膚や粘膜などが傷ついたり炎症を起こしてバリアの用をなさなくなったところです。
 炎症を起こしやすい粘膜があるのは人体を男女共通で考えたら、それは4ヵ所です。あと、女性だけには膣がありますので5ヵ所になるわけです。
 その中で一番炎症を起こしやすいのは腸(大腸)です。大腸は、食べ物の残滓(残りかす)が大便に変わっていくところで、ご承知のように腸内細菌というばい菌がここではたくさん生活をしています。その腸内細菌は、よく善玉菌があるとか悪玉菌とかいっておりますけれども、要するにばい菌はばい菌です。
 3年くらい前は、この腸内細菌の数は100種類100兆個といわれておりました。この頃は大腸菌の遺伝子研究も進んでまいりまして、腸内細菌の数は光学顕微鏡で見るだけではなくて、糞便の中に存在する大腸菌の遺伝子の数でカウントするようになり、そうすると100兆個の10倍くらいという説も今は有力になっています。人間の体の細胞が60兆だというのに、ばい菌が1000兆もいたら、多数決でいえば、ばい菌の勝ちじゃないですか。それほどものすごい数なんです。
 それが万が一にでも、腸の壁を乗り越えておびただしい数のばい菌が、まるで川が氾濫を起こして洪水が起きるように体内に入ってきたら、腸の外側はリンパ液の流れ、血液の流れと、要するに人間の体は液体の流れがありますので、簡単に大量のばい菌が、脳にでも心臓にでも、すい臓にでも、腎臓にでもどこにでも旅をするわけです。
 それで、旅の末に細胞の中に入り込んで、細胞内感染を起こして細胞が傷がつけば、がんのような遺伝子の病気になるし、エネルギー発生器官であるミトコンドリアが細胞内感染でめちゃめちゃになれば元気がなくなるわけです。
 腸壁が荒れていなければ、皮膚と同じようにバリアの働きをしてくれて、冷えてない限りそんなにばい菌が腸壁を乗り越えて体内に通過してくるということはありません。
 人間の皮膚は健康な皮膚であれば、ばい菌は侵入できないようになっているんです。皮膚は、外界から我々の体を守る第一のバリアなんですね。ところが、荒れたりケガをしたりすれば、そこからすぐにばい菌が入ってきますから、昔だったら赤チンとかヨーチンとかオキシフルで消毒し、動物ならペロっとなめる。唾液にも殺菌力があるし、なめておけばすぐ仮の皮膚が出来て、ばい菌が入ってきません。
 我々の腸もそうなんです。常温を保っている限り、腸の粘膜は荒れてなければバリアになって、我々の体を守ってくれるんです。腸内細菌はちゃんと大便を通じて出てきてくれます。
 ところが、もし腸壁の粘膜が傷ついていたら、また炎症を起こしていたら、腸粘膜の緻密なメッシュはスカスカになって、バリアになりません。また冷えていても、容易に腸内細菌が大量に体の中に入ってきます。
 それが肝臓に行けば肝臓病、すい臓に行けば糖尿病です。細胞の中に、ウイルスやらばい菌やらバクテリアが大量に入り込んで細胞内感染を起こしている、こういう状況が病気であり、老化ということです。