免疫力を高める合宿 M

正常体温の確保 
その1 ミトコンドリアと運動と食事

低体温は 免疫力を落とす

 熱海のお元氣養生所では、正常な体温(36・5〜37度)を維持していただくように、あれこれの方法を提供し、アドバイスをさせていただいています。
 といいますのも、36・5〜37度の体温を安定して維持するのは、免疫力を守る上からとても大事なことだからです。
 体温が下がれば免疫力、つまり白血球軍団による防衛パワーを維持することができずに、様々なバイ菌、バクテリア、ウイルス等が体内に奥深く侵入するつけいるスキを与えることになります。
 冷えや寒さは低体温をもたらしますが、今は夏でも冷房で体を冷やします。その上、暑いといって冷たいものを頻繁にとっているような生活は、体の内と外から体を冷やしてしまいます。
 体中を冷やして低体温になって免疫力を落とした上に、冷たい飲食物の摂取で腸壁を冷やすことでおびただしい数の腸内細菌の体内侵入を許しますと、細胞内も、エネルギー発生器官のミトコンドリアも、バイ菌まみれになって生活習慣病になっていくのに、それにも気がつかない人がほとんどです。
 そのなれの果てにガンになる方は、そのほとんどが体温が35度台、人によっては34度台の低体温が常態だといわれています。

「冷え」の概念がない西洋医学

 検査能力は抜群といわれる西洋医学には「冷え」という概念がないため、お医者さんのほとんどが体の「冷え」や、慢性的低体温について無頓着といわれます。
 大方の医師は、「冷えが万病の元」とは思ってもいませんし、冷え性を治し、体温を正常化する西洋薬などもありません。
 むしろ、医師が頼りにしている薬の多くは、常用していると交感神経を慢性的に興奮させて全身の血管を締め付け、血流を悪くして体温を下げ、副作用として「冷え性」を誘導します。

筋肉運動で 体温を上げる
──ミトコンドリア博士 西原克成先生の教え──

 養生所では、体温を正常化するためにまず、朝食後のラジオ体操やボケも治すフリフリグッパー体操、また、内臓脂肪を燃やすダイエットエンジェルやインナーマッスルを動かすジョーバ(乗馬)などの電動装置を使う体操、さらに山道散歩など、あれこれの筋肉運動で体熱を上げることをします。
 筋肉が増えればその分、筋肉細胞にミトコンドリアが増えますから、筋肉運動で体熱が生れるからです。
 本誌に連載していただいている西原克成先生の教えによれば、体熱を産生しているところは、その数60兆といわれる細胞内のミトコンドリアです。
 ミトコンドリアが特に多いのが筋肉細胞と肝臓の細胞といわれています。ここでデンプンが消化されてできるブドウ糖をクエン酸サイクルを通じていったんアデノシン三リン酸に変え、それが二リン酸になったりしながら体熱をはじめとするエネルギーに変換されるので、ミトコンドリアを正常に働かせれば「冷え性」は自ずと治り、体温は正常化するのです。
 ところが、自力では運動もしにくい人も結構いらっしゃいます。そうした方々には養生所では、無理はせずにとりあえず、乗るだけで筋肉が運動してしまう電動マシンなどの使用で、運動したのと同じような状態にして体温も上げ、筋肉も次第についていくのに従って、自力で運動できる体にもっていくという方法をとっていただくことにしています。

ミトコンドリアの活性化と 微量栄養素の 総合的な確保

 その上で、私たちがミトコンドリアの正常な活力を維持するのに役立つものとして、頼りにしているのが、養生所で食事の度に提供される微量栄養素の総合サプリメントです。
 総合サプリメントに期待しているのはまず第一に、夜寝ている間に進行する新陳代謝を順調にすすめ、一晩で一兆個の細胞を入れ替える作業に必要な微量栄養素を確保するための働きです。
 基本的には、そのための微量栄養素の補給源が総合サプリメントなのですが、さらに、総合サプリメントはミトコンドリアの活動支援の微量栄養素が巧みに配合されているのが特に優れている点でもあるのです。

「ヒトの食性」を 重視すべし
──ゴリラに学ぶ──

 現代栄養学では、ヒトを雑食動物と見ていますので、好き嫌いなく一日三十品目の食べ物をとれば栄養素は自ずとバランスがとれるはずであり、それが健康を維持する食事のとり方だと考えています。
 そこには食性、中でもヒトの食性ということには全く考慮されていませんから、卵や肉は理想的な蛋白質源であると、何らの疑いもなく考えてしまうわけです。
 その指導が学校教育でも社会教育でも貫徹されるにつれて、生活習慣病が増えてきたというのに、食性に反する動物性食品の摂取と生活習慣病の増加という両者間の因果関係には思いもつきません。
 蛋白質は、植物性蛋白と動物性蛋白を半々に摂るのが良いと頭から信じ込んで思考停止になっているのが、現代栄養学の問題点であり、実に困ったことです。
 私たち人間は、系統樹でわかるように、約一千万年前にゴリラから分かれ、その後チンパンジーと分かれて、ヒトとして進化してきたのです。
 ヒトの遺伝子のほとんどは(97%以上)、未だにゴリラと共通であるので、ヒトの食性、つまりヒトは本来何を食べて生き延びる動物かは、ゴリラが何を食べて生き延びているかを観察すれば自ずと明らかになると考えています。
 ゴリラはつまるところ基本的には草食型動物というか、もっぱら植物を食する動物であり、動物性食品は5%程度しか食べていないということです。その動物性食品も、ミミズを拾って食べたり、昆虫をおつまみ程度に食べたりする程度です。それで個体も健康で天寿を全うし、子孫を絶やさず生存し続けてきました。
 医師も病院もない彼らの非衛生生活状態でも繁殖しつつ生存できてきたのは、バイ菌も怖くないほど免疫力が高いからです。つまり、動物性食品を食べなくとも、低体温ではないということです。草食動物の牛も馬も人間より体温が2〜5度高いのはご存知の方が多いと思います。
 先祖筋のゴリラと遺伝子がほとんど一緒ということは、ヒトは絶対に肉食動物ではないということです。本来的にもっぱら植物を食べる草食動物型の胃腸をもち、内臓や酵素体系をもっているので、動物性食品は元来消化が苦手で、食べ過ぎたらうまく消化できず、腸内で腐敗させてしまう動物だということです。
 肉食動物ではないゴリラが肉食をしないから冷え性になったとか、肉を食べたくて他のゴリラを殺して食べたり、他種の動物を餌として、あるいは生存をかけて闘って殺した相手を食べるということもありません。
 ヒトもこの地球上で低体温症にならず、健康で幸せに暮らしていくためには、ゴリラの生存様式に学んで、食物の選択基準を遺伝子に逆らわないよう、食性の範囲内にするのが肝心です。
 そしてその範囲内でミトコンドリアも活性化し、毎日毎日の新陳代謝を順調にすすめる生活をしていくのが、年相応の若さと健康を維持しつつ順調に加齢して、やがてボケもしないで天寿を全うしていくポイントであると私たちは考えています。
 基本的にベジタリアンの範囲を逸脱せず、微量栄養素の総合サプリメントをとり続け、円滑な新陳代謝とミトコンドリアを活性化して生体エネルギーが順調に得られれば、毎日の適度な運動によって「冷え性」は自ずと解決され、36・5度という体温を保つことはそんなに難しくないはずです。