安保徹先生の著作に学ぶ『「薬をやめる」と病気は治る』を読む

衝撃と大きな希望
―秋に2時間の大講演―

 本誌334号(01・10)巻頭インタビューにご登場をいただいた安保徹先生、336号(01・12)福田稔先生のご著書が、その後堰を切ったように次から次へと多くの出版社から出されるようになりました。
 これら一連の著作は現代医学に健康回復の救いを求める慢性病患者に、「それでは求める健康は得られないよ、生活習慣病の場合はウラ目に出て、かえってマイナスになる危険性が高いよ」と警告するものであり、国立大学医学部教授からの発信だということもあって、各方面に重大な衝撃とともに大きな希望を与えています。
 多くの人々の病苦の解決に役立ちたいと思って医師になったのに、さっぱり治せない、どうしてだと頭をかかえている良心的な医師群、そして現代医学・薬学に対しても大覚醒のきっかけを与えています。
 本誌もサポートしているNPO法人日本綜合医学会(04年11月14日)東京大会では、有楽町駅前のよみうりホールに安保徹先生をお呼びし、2時間の大講演をお願いすることになりました(仙石が大会運営の責任者をつとめます)。
 本誌愛読者の方でも、安保先生のお話をまだ聞いたことのない方はぜひ参加していただきたいし、行けない人は本屋さんに今、何種類もの安保先生の本が山積みになっていますので、どれか手にとって何かピンとくる本をとりあえず一冊読まれて勉強されることを心よりおすすめします。
 福田・安保理論 チンプンカンプンというほど難しくありませんし、理屈が通っているので、その気になれば、すぐ役に立つ内容がすっと理解できるのです。その根拠となっている考え方が、今から8年ほど前に、福田稔先生と安保徹先生が共同で編み出された、「自律神経が白血球の数や働きも調整している」という福田・安保理論です。この理論を理解することができて、応用する力がつけば、たいがいの慢性病、生活習慣病は、ひどくならない内に医者も薬もいらないで自分で治せるようになる筈です。
 がんも簡単に治ることがあるというと、なんか香具師まがいと頭から思う人が多いのですが、現実には自然食ニュースの提唱する「日本人の食事指針」の実行で、がんが簡単に治った人が結構おられます。宝くじに当たるより遙かに確率は高いといえましょう。何故治るのかということが、安保理論だとすんなりと理解できます。

対症療法としての薬物療法

 今、何らかの病気になりますと、たいていの方は健康保険証を手に医療機関に行きますが、生活習慣病はなかなか治してもらえないというのが実情ではないでしょうか。安保先生は、この本の中でも「公が治療費の多くを負担するという制度は、患者さんが医療に主体的にかかわるという感覚を失わせてしまう恐れも含んでいます。公に頼る感覚を見直しましょう。主体性をもって医療にかかわることが、自分の健康を守ることにつながると私は思っています」と述べておられます。
 そして医師たちはどうして生活習慣病を治せないのか、かえって増悪させてしまうのかを解明しています。それは、いかにして患者の苦しみとなっている症状を抑えるかという対症療法を薬物療法でやってしまうからだというのです。実際には、それが裏目になって病気はますますこじれて治らなくなっていくというわけです。
 今、病院に押しかけてくる病人に対する医療の大半を占めているのは慢性病の治療で、糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓病など数々の生活習慣病、難病といわれるがんや潰瘍性大腸炎、膠原病、ステロイド剤で難治化したアトピー性皮膚炎など、病院は年単位で治療を続ける患者さんで溢れかえっています。薬物療法はこれらの慢性病を治療に導いてきたとはいいがたいと安保先生はおっしゃいます。
 目に見える症状を薬で抑え込み、効果が薄くなると新たな薬を付け加えていくその場しのぎの対症療法ばかりが先行している大学病院や現代医学は、慢性病に対してほとんど歯が立たないと喝破しておられるのです。それは臨床で使われている現代薬の多くが交感神経を緊張させる作用を持っていますから、対症療法が長引けば長引くほど薬の使用期間も長くなり、自然治癒力は損なわれていくからだというのです。

交感神経の鎮静化

 病気の大半は交感神経の緊張によって引き起こされるので、交感神経の緊張を招くストレスを遠ざけ、薬をやめるようにすれば自律神経の乱れは改善され、その結果白血球のバランスも整って免疫力も回復し病気が治癒に向かう筈です。これまで薬を飲まなくてはいけないと思い込んできた人は、この本を読むことにより、病気が治る仕組みを知ることで薬に頼らない新たな養生法を見いだせるでしょう。
 第1章は、三大ストレスが病気をつくるというテーマで、体を病気から守る白血球と、白血球の働きを調整している自律神経の働きについて基本から説き起こします。
・なぜストレスが病気をよぶのか
・自律神経とは何か
・全身の細胞を統括する神経
・体を病気から守る白血球
・自律神経は白血球を支配する
・薬の長期使用が自律神経を乱す
・ストレス四悪が体を破壊する
・働き過ぎが突然死につながる
・リラックスしすぎも病気になる
など、これまであいまいにしか語られてこなかったストレスと免疫低下の関係について具体的に解明してくれます。
 第2章は、「薬をやめると病気は治る」というテーマです。免疫力を低下させ、新たな病気をつくり出す消炎鎮痛剤やステロイド剤などの薬について、また誤った治療が病気を難治化させる仕組みについて、自律神経と白血球の関係を通して説明してくれる章です。
 病気の急性期には薬が必要な場合もありますが、慢性期の対症療法として漫然と薬を使い続けるのはよくありません。症状を抑えるためだけの間違った治療から脱却するためにも参考になる章です。
・痛みをともなう病気、頭痛・膝痛・腰痛
・肥満・痛風・糖尿病
・高血圧
・不眠症
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・アレルギー疾患|アトピー性皮膚炎・気管支喘息・花粉症
・がん
・関節リウマチ
・ネフローゼ
・パーキンソン病
・潰瘍性大腸炎・クローン病
に対する安保先生の考え方が具体的に示されます。
 第3章では病気を治すための具体的な方法が紹介されています。自律神経のバランスを整えることで免疫力も高まり、健康を回復することができます。そのためには、
・生活パターンを見直す
・交感神経を刺激する薬を飲まない
・マイペースで楽しめる運動をする
・免疫力を高める食事
・深呼吸をする
・体を温めて血行をよくする、
などなど今までの病気に対する考え方や対処法を変革するきっかけになるヒントに満ちています。
 第4章は薬に頼らず病気を治す治療法ということで安保先生と協力関係にある水島丈雄先生が、病気別に水島先生の治療方針を語ってくれます。頭痛、腰痛、カゼ、不眠症、胃炎・胃潰瘍、高血圧、糖尿病、月経困難症・子宮筋腫、アトピー性皮膚炎、緑内障、がん、関節リウマチ、パーキンソン病、気管支ぜんそく、線維筋痛症。これだけの病気に対する薬に頼らないで治す治療法の存在を知るだけでどんなに心強いことでしょう。
 第5章は「薬を使わず病気を治す4人の医師たち」ということで、自分でもできる爪もみ療法の普及につとめられる福田稔先生、ステロイドなどの薬漬け医療からの脱却をめざす田島圭輔先生、リンパ球と顆粒球の数の比率という白血球のバランスやリンパ球の実数という血液データを治療のナビゲータにしようという伊藤泰雄先生、湯たんぽなどで体を温めれば免疫力はぐんと上がるという斑目健夫先生の紹介もされています。
 「おわりに」では、生活習慣病の患者への忠告です。自分が飲まされている薬が、もし、対症療法として出されているのであれば、長期にわたって飲むのは、自然治癒力を止めてしまうので危険であること。そして私たちは無理をしすぎても、楽をしすぎても、血行が悪くなり低体温になり病気になるのですが、消炎鎮痛剤もステロイド剤も体を冷やすことで消炎しているので、これらの薬を長期飲みつづけていると血行が悪くなり病気を悪化させるのだと明快に述べておられます。
 多くの慢性疾患は、その人の生き方の無理や乱れから発生しているので、その脱却こそが病気を治す力になります。それを理解しようとの呼びかけです。現に慢性病で薬を何種類も飲まされている人はまずこの本から挑戦してみては如何でしょうか?