リウマチ・炎症・痛み・発熱をどうとらえるか?

痛みを耐えやすくするには

 ところで炎症が生まれれば、それを消したり、傷跡を修復するために、血液が多量に動員されます。修復箇所では熱が産生されるような刺激物質も作られ、発熱しますが、これは局部に血液を集め、血液の流れを良くし、熱を発して免疫の複雑な連携プレーの仕組みが発動される環境を作っている歓迎すべき生体反応であることを忘れてはなりません。
 炎症や痛み、発熱などは自然治癒で治る過程に避けて通れない必然的な現象です。赤く腫れて熱を帯び、痛みが感じられれば、「ああ、自然に治るプロセスが動き出したのだ、ありがたいことだ」と思えば、痛みにも耐えやすくなります。
 ところがこの反応を病的現象と勘違いして、なんとか鎮めようとして冷やしてみたり、消炎剤を使って炎症を止めようとしたり、湿布や飲み薬の鎮痛剤などを使ってみたりすると、つい長期間使い続けているうちに病気がこじれて治らない方向に行く根っこになってしまうのです。
 鎮痛剤は、どうしてもこらえられないという時に、ごく短期間に限って、止むを得ず必要悪として使うものだという考え方をしてみてください。
 鎮痛剤は、痛み物質でもあり、修繕物質でもあるプロスタグランディンを働けないようにし、局部の血流を絞り込んで、神経が痛みを感じられないようにしてしまいます。
 しかし交感神経が優位になるように傾かせ、その結果、顆粒球がさらに増え、患部は増悪します。
 それを止めようとステロイド薬を投与すると、さらに交感神経が緊張して、全身の血流も悪くなり、一時的なリバウンドを覚悟した上でクスリをやめない限り、炎症は悪循環的に止めどもなく悪化していくというコースをたどるのです。交感神経が興奮すると、血管が細くなり、血流障害が起きますから、冷えが来ます。冷えはさらに交感神経を緊張させるという悪循環をもたらします。
リウマチの原因は? 多くのリウマチ専門医は、リウマチは自己免疫疾患の一つであり、その原因が何かとか、どういう病気なのかは、現代医学でも、まだ完全には解明されていないといいます。原因もわからないのだから、完治したかどうかもわからない、完治はありませんというのが、多くの専門医の公式見解です。
 医師の手の中には、単なる関節炎なのか、リウマチ性関節炎なのか、決め手になる診断基準が実はありません。「血液検査でリウマチ因子がありました」とかいわれると「リウマチかな?」と思いがちですが、実はその因子がなくても関節が固まり変形してくるリウマチの人は結構沢山いますから、リウマチ因子を見つける血液検査はリウマチと判定する決め手にはならないのです。
 リウマチを含む自己免疫疾患患者はリンパ球が減少して、本当は免疫抑制状態になっているのに、自己免疫疾患だから免疫作用が昂進していると間違った判断を下し、免疫抑制作用もあるステロイド剤などを長期間使うので、ほとんどのケースで免疫力はさらに低下し、患部は悪化します。
 医師の世界での共通の見方、考え方の一つに、訳のわからない病気には、とりあえず炎症を止めるステロイドホルモン剤を使うというのがありますから、リウマチ性慢性関節炎と診断されると、最後まで訳がわからないということになっていますので、通常の消炎剤、鎮痛剤で好転しない場合、ステロイドホルモンが長期にわたって使われるのです。
 ステロイド薬は抗炎症作用をもつ切れ味のいい薬と思い込んで、これでもか、これでもかと治るまでと思って長期間使う専門医が多いのですが、リンパ球が起こすカタル性の炎症には抗炎症作用を示すステロイド剤も、顆粒球が起こす炎症に対しては使用が長引くと、次第に炎症増悪作用を発揮するのです。
 さらにステロイドは組織に沈着しやすい化学構造を持っているのですが、組織に沈着したステロイドが自然に酸化され、酸化コレステロールに変性すると、局所から全身にと交感神経緊張状態をつくり出し、全身に及ぶ血流障害と顆粒球増多を招き、ついには顆粒球が起こす炎症を全身の関節部、その他でも誘発してしまうのです。
 特にステロイドの投与が10年、20年と続くうちに示される怖さ、すなわち重篤な副作用を体験していない、若い専門医にかかると、痛みが止まった、ありがたいなどといっているうちに過剰ステロイドの副作用で関節が変形して治りようがなくなった上、最後は腎不全で、体が真っ黒になって、引きこもりになった上、あの世行きというコースを歩かせられかねません。

免疫の全体像

 さて、リウマチは免疫病といわれているのですから、まず免疫の全体像を把握しましょう。
 人の体は60兆個もの細胞から成り立つ多細胞生物ですが、元々は受精卵の一つの細胞から分裂につぐ分裂で増えてきました。今でも毎日新陳代謝で1兆個の細胞を生み出します。その過程で異常な細胞が生まれてしまったら、これは確率論として、毎日3千個は異常な細胞が生まれてしまうといわれていますが、自己同一性を保つために、これを認識して速やかに排除する仕組みが必要になるわけです。これが免疫本来のオリジナルな古典的仕事です。
 ところで我々の体は、外から入ってくる様々な物を取り入れ、同化したり異化したりしながら、分解して得られるエネルギーを元に生きています。栄養となる物を食べ、呼吸で酸素を取り入れ、エネルギーを生み出す反応系が回っていくわけですが、その中で生命力が活性化すれば健康、失活すれば病気の方向にいくわけです。
 多細胞生物である我々は、基本的単位の細胞の中にも、太古の時代に寄生したミトコンドリアと共生していることからも推して知るべしですが、細菌、ウイルスの類を細胞内にも細胞間質にも、血液にも体液にも棲みつかせる性質を持っています。これは感染といわれ、歓迎すべきことではありませんが、そういう共生を許す性質が基本的にあるわけです。
 しかし、それでは、体の調子が悪い時、生命力のリズムが低調になった時、免疫力が落ちた時などに、それらに暴れ出されると生命力が失活し、下手をすると多臓器同時不全で、命を落とす元になりかねません。
 そこで生命力が失活しないよう、異常細胞をチェックし、処分するという本来の免疫の働きが、その能力の幅を広げ、外から入ってきて寄生しようとする有害な異物も排除する仕組みも持つようになったわけです。これを人類進化の過程で後から生まれた新しいタイプの免疫力と呼びます。

交感神経・顆粒球
副交感神経・リンパ球

 リウマチで問題となる免疫作用は、この新しいタイプの免疫力です。そしてそれに働く顆粒球、リンパ球という白血球は自律神経のコントロール下にあり、自律神経の交感神経が支配しているのが顆粒球、副交感神経が支配しているのがリンパ球です。
 自律神経は、血管や心臓、胃腸など内臓の働きを無意識に調節している神経で、交感神経と副交感神経がシーソーのように拮抗して働いています。
 交感神経が優位になると、心臓の拍動が増え、血管が収縮し血圧が上がり、心身が活動的になります。
 一方、副交感神経が優位になると、心臓の拍動が抑えられ、血管が拡張して血液循環が良くなり、血圧が下がって、心身はリラックスします。
 この二つの拮抗する働きがうまくバランスを取っていれば人は健康であり、逆にどちらか一方に傾くと病気になりやすくなります。
 自律神経は例えば天気を左右する気圧にも応じて交感神経と副交感神経のバランスを変動させています。
 高気圧の下では、自律神経は交感神経が優位になって、白血球は顆粒球が多くなり、リンパ球は少なくなります。そして、顆粒球が死ぬ前に放出する活性酸素が炎症を増悪させるのでリウマチの人にはつらいのが高気圧の時間帯です。
 低気圧の下では、自律神経の副交感神経が優位になり、白血球は顆粒球が少なくなり、顆粒球炎症が治まってくるのでリウマチの痛みも軽く過ごしやすくなることが多いのです。
 しかし、気圧が下がっていく過程では、次第に副交感神経が優位になり出して、体に悪い物の排泄にかかりますから、痛み物質なども分泌され始めて、一時的に痛みが来ることがあります。リウマチの人が天気の変わり目がわかるのはこのためです。
 交感神経と副交感神経がバランス良く働いているときは、顆粒球とリンパ球の比率は顆粒球が54%から62%、リンパ球が35%から41%となり、病気への抵抗力も安定しています。自律神経と白血球は生命活動がより効率良く、しかも安全に営まれるように連携しています。ところが、両者のバランスが乱れるとリウマチを含めて、様々な病気が発症するわけです。
 副交感神経が優位になる夜間の休息時や、食物を消化吸収し、排泄している時は、副交感神経が優位になってリンパ球が増えています。
 交感神経が優位になるのは、ストレスがかかったときです。ストレスは寒冷などの物理的ストレス、過労などの肉体的ストレス、そしてもろもろの精神的ストレス等ありますが、いずれもストレスがかかると体はそれに対処するために、脳の視床下部から指令を出し、アドレナリンやノルアドレナリンを出させ心拍数や血圧などを上げ、緊張を高め、体に活を入れます。ところが、このような交感神経優位の状態が続くと、血管が収縮して、白血球の顆粒球が多くなり、顆粒球の放出する活性酸素によって組織は破壊され、多くの病気を引き起こします。リウマチが悪くなっていくのは、もろもろのストレスから起きる交感
神経の持続的緊張があるからです。
 血液は、細胞に酸素や栄養を届けながら、細胞から排泄された老廃物や毒素を回収します。この流れが悪くなれば、老廃物や毒素は組織に停留します。老廃物には、神経を刺激して痛みやコリをもたらす物質も含まれているため、肩こりや腰痛などの痛みが生じるようになります。
 一方の副交感神経は内臓諸器官の分泌や排泄を促す働きをしていますから、交感神経の緊張が続くとホルモンや神経伝達物質などが分泌されにくくなったり、内臓の排泄機能が非常に低下してきます。このように交感神経優位の状態が続くと、二重に排泄機能が低下して、毒素が体にたまりやすくなります。
 顆粒球の数が局所的に増えると、粘膜障害や組織障害が起きます。交感神経が優位になって、この顆粒球が増えすぎると常在菌とも戦って化膿性の炎症を自ら起こすという性質があり、常在菌がいないところに顆粒球が押しかけると組織を活性酸素で破壊し炎症を起こすのです。ストレスは万病の元とよくいわれますが、強いストレスにさらされると交感神経が過度の緊張を強いられ、顆粒球が増えて組織破壊がなされるからです。おまけに交感神経緊張が続くと血管が収縮しすぎて、血流障害を伴うことが多いので、ダブルパンチで組織が自ら崩壊していきます。慢性関節リウマチ・br> ヘ、このようにして悪くなっていくのです。