やはり普\い脂肪肝

アルコール性脂肪肝と 非アルコール性脂肪肝

脂肪肝が10年で倍増!

 近年、脂肪肝が急増しています。東海大付属病院で健康診断を受けた35000人中、超音波検査で脂肪肝と診断された人の割合は、89年の12・6%から98年には30・2%と、10年間で2倍以上に増えていることが、同大医学部の松崎松平教授らの調査で明らかになっています(図1)。
 飲酒が原因の「アルコール性脂肪肝」では、アルコール性肝炎から肝硬変に移行する危険性があるといわれる一方で、肥満が主な原因の「非アルコール性脂肪肝」は、ウイルス感染など他の原因がない限り、肝炎や肝硬変、肝がんにはなりにくいといわれていました。しかし、そんな医学界の常識がくつがえされてきています。

子供や若い女性、 太っていない人にも

増えている 正常な肝臓には3〜5%の中性脂肪が含まれていますが、これが30%以上になった状態が脂肪肝で、まさにフォアグラ(ガチョウの肥大した肝臓)と同じです。一言でいえば、"食べ過ぎ・飲み過ぎ"が原因で、まさに飽食の現代社会を反映した病気といえます。
 脂肪肝は、「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝」の二つに大きく分けられます。
 アルコール性脂肪肝は、アルコールを毎日大量に(日本酒なら3合、ビールなら大瓶3本、ウイスキーならダブルで3杯以上)、長期間飲み続けた場合におこります。
 非アルコール性脂肪肝は、肥満や糖尿病が大きな原因になります。BMI(体格指数・表)が25以上なら肥満と判定され、30以上だと脂肪肝の可能性が高くなります。
 脂肪肝は40〜50代の中高年に多い病気ですが、最近では肥満による子供の脂肪肝も増えており、鳥取大学小児科の田澤雄作助教授は、「菓子類が簡単に手に入る現在の環境が子供の肥満と脂肪肝を増やしている。就寝時間が遅くなり、深夜まで飲食している子供も多い。女性の社会進出で"孤食"を余儀なくされる子供が増え、好きな物に偏ってしまう」と指摘しています。
 また近年、見た目はやせていても体脂肪率の高い"隠れ肥満"の若い女性や、医学的に肥満ではない人にも脂肪肝が増えています(図2)。
 背景には食生活のアンバランスが指摘され、東海大学の松崎教授は、「"コンビニアン"という言葉がまかり通るほど、若者の多くが食生活をコンビニエンスストアに依存しており、食事時間やパターンの乱れが消化吸収・代謝のリズムを狂わせている」と警告しています。
 女性の場合、甘い物や果物など、糖分のとり過ぎによる脂肪肝が目立ちます。
肝臓に脂肪がたまる
 仕組み 肝臓では、食物から取り入れた脂肪や糖質、アルコールなどから中性脂肪がつくられ、中性脂肪は蛋白質の一種のアポ蛋白と結合してVLDL(超低比重リポ蛋白)となって全身に運ばれ、筋肉などのエネルギー源として使われます。
 しかし、脂肪、糖質、アルコールのとり過ぎや運動不足などで中性脂肪があまったり、肥満によって皮下脂肪などの脂肪組織が増え過ぎると、中性脂肪からVLDLをつくるスピードが追いつかず、肝臓に中性脂肪がたまって脂肪肝となってしまいます(図3)。アルコールには、肝臓の脂肪合成を促進する作用もあります。
 糖尿病の患者も、血糖の代謝能力が低下して肝臓に運ばれるブドウ糖の量が増えるので、脂肪肝になりやすくなります。
 また、一部の薬の作用で脂肪肝になることもあります。例えば、高脂血症の薬は、肝臓で脂肪からコレステロールがつくられるのを抑えるので、行き場を失った脂肪が脂肪肝を引き起こす要因になります。コレステロール値を下げるには、薬に頼るよりも、まず食生活の改善から始めなければなりません。
アルコール性脂肪肝 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、脂肪肝では目立った自覚症状はほとんどなく、時に、体がだるい、疲れやすいといった症状を訴える程度です。そのため、健康診断や人間ドックで脂肪肝がみつかっても軽視しがちな人が多いのですが、アルコール性脂肪肝を長年放置しておくと、肝炎、肝硬変へと進みやすいので要注意です。
 アルコールは肝臓で、アセトアルデヒド、酢酸を経て、炭酸ガスと水に分解されますが、アセトアルデヒドも酢酸も細胞にとっては毒です。アルコールの代謝・処理に肝臓が長期にわたって負担を強いられると、アルコール性脂肪肝からやがて、肝臓の組織に糸くずのようなコラーゲン線維がたまる「アルコール性肝線維症」となり、ここに活性酸素や免疫反応などが関わると「アルコール性肝炎」をおこして、発熱、黄疸、右上腹部痛などの症状があらわれます。最終的には線維によって組織が分断さ
れ、肝臓全体が硬くなる「アルコール性肝硬変症」に至り、こうなると血液が肝臓に流れにくくなって食道静脈瘤ができたり、腹水がたまったり、肝不全をおこすなど、命にかかわる合併症をおこしやすくなります。

非アルコール性脂肪肝炎

 (NASH) 一方、非アルコール性脂肪肝はこれまで、ウイルス感染などの他の原因がない限り、肝炎や肝硬変には進行しないと考えられ、あまり重要視されていませんでした。しかし近年、アルコールやウイルス感染とは無縁なのに、脂肪肝から肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する例が数多く報告されるようになり、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」として、にわかに注目を集めています。
 高知医大第一内科では、aアルコール摂取量が1日20g(日本酒1合、または缶ビール1本)以下、bGPTがGOTより高く、半年以上異常が続く、cウイルスなど他の肝障害の原因がない人で、d肝生検の結果、高度の脂肪肝で炎症や線維化がみられた場合をNASHと診断しています。
 ただの脂肪肝で済む人とNASHになる人との違いは明らかになっていません。しかし、NASHはやはり肥満の人に多く、超肥満者が多い米国では3%がNASHといわれています。
 また、NASH患者の6〜8割は血糖値が高く、糖尿病状態と指摘されています。ただし、NASHは糖尿病の合併症ではありません。肥満が引き金となる病気としてNASHと糖尿病があり、両者を併発する患者が多いということです。
 肥満が引き金になる病気としてはこの他、睡眠時無呼吸症候群との関連が指摘されています。千葉大呼吸器科の巽浩一郎助教授は、「肥満だけならNASHを発症するのは1%以下だが、睡眠時無呼吸症候群の患者に限ると一気に7%に跳ね上がる」と報告。睡眠時の無呼吸によって低酸素状態となり、それが肝臓に悪影響を与え、NASHを後押ししている可能性を指摘しています。
 このように、非アルコール性脂肪肝も一部は肝炎や肝硬変に進行する危険性があり、決して侮ることはできません。高知医大第一内科の西原利治講師は、「日本では脂肪肝は病気ではないと思っている人が多いが、成人の4人に1人が肥満の今、NASHを認識し、防ぐ努力が必要」と警鐘を鳴らしています。

ドロドロ血液など、 生活習慣病の 下地をつくる

 脂肪肝はまた、血液をドロドロにするなど、生活習慣病の下地をつくり、放っておくと全身にさまざまな問題を引き起こします。
 東京女子医科大学附属成人医学センターの栗原毅助教授によると、脂肪肝の患者は血液のドロドロ度が最も高く、a赤血球の変形能の低下、b白血球が活性化し、粘着する、c血小板の凝集能の亢進――というドロドロ血液の3つの要因がすべてそろい、かなり進んでいます。さらに、白血球から活性酸素が大量に放出され、赤血球の溶血がおこり、血小板を凝集させるADP(アデノシン二リン酸)も出ていることが分かっています。
 脂肪肝の患者を5年間追跡した研究では、動脈硬化による心筋梗塞をはじめ、高血圧や糖尿病などの発症率が正常な人の2倍近く高くなることが報告されています(図4)。高脂血症や痛風もおこしやすくなります。
 脂肪肝は生活習慣病の第一シグナルととらえ、食事・運動をはじめとする生活習慣を見直すことが必要です。
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◎参考文献
・『自然食ニュース』280号(97・4)
荒川泰行先生インタビュー
・『自然食ニュース』315号(00・3)
井上修二先生インタビュー
・『日経ヘルス』01・9
・『毎日ライフ』97・7
・他