胆嚢の病気

――胆石・胆嚢炎・胆嚢ポリープ・胆嚢がん――

成人の10人に1人が胆石症、胆嚢ポリープ

七転八倒の激しい痛みの発作で知られる胆石症。胆石をもつ人の数は年々増える傾向にあり、日本の成人の10人に1人は胆石をもっていると推計されています。
 超音波検査などの医療技術の進歩で胆石が発見されやすくなった一面もありますが、最大の原因は、食生活の欧米化に伴う高脂肪食の増加です。胆石はその構成成分によって、欧米人に多い「コレステロール胆石」と、従来日本人に多かった「ビリルビンカルシウム胆石」の2つに大きく分けられ、近年、日本人にもコレステロール胆石が増えています。
 また、胆汁に含まれるコレステロールが胆嚢の内壁に蓄積して盛り上がった胆嚢ポリープも、成人の10人に1人と、胆石とほぼ同じ頻度で増えており、胆嚢は高脂肪食の影響を受けやすい臓器といえます。

胆嚢と胆汁の働き

(腸肝循環)"肝胆相照らす"という言葉があるように、肝臓と胆嚢は密接に関わっている臓器です。肝臓でつくられた胆汁は、胆管を通って十二指腸に流れる途中で、親指大の小さな袋状の胆嚢で一旦貯蔵され、そこで10〜20倍に濃縮されます。
 胆汁には、脂肪の消化吸収や、脂溶性ビタミン・鉄・カルシウムなどの吸収を助ける働きがあり、胃から十二指腸に食べ物が送られてくると胆嚢が収縮して、溜めておいた胆汁を十二指腸へ送り出します。同時に、胆汁には、肝臓でいらなくなったコレステロールなどの老廃物や、肝臓で解毒された毒物などを腸へ運び、体外に排泄する役割もあります。そして、役目を終えた胆汁は9割が回腸から再吸収されて肝臓へ戻り、再利用されます(腸肝循環)。
 胆汁の成分は約95%が水分で、残りの5%ほどはコレステロールや胆汁酸、リン脂質(レシチン)、ビリルビン(胆汁色素)などです。この胆汁成分が固まって結晶化したものが胆石です。コレステロール胆石が
 増えている〈2種類ある胆石〉
 胆石には、その構成成分によって次のような種類があります。
aコレステロール胆石
 肝臓で合成されたコレステロールは、胆汁酸やレシチンと複合して胆汁の中に溶け込んでいますが、コレステロールの量が多すぎたり、胆嚢内で濃縮され過ぎたりすると、溶けきれずに固まってしまいます。
 コレステロール胆石は胆嚢内にできやすく、色は黄白色で、大きさは1cmから時には3〜4cm大のものもあります。
bビリルビンカルシウム胆石
 赤血球が壊れてできるビリルビンは、抱合ビリルビンとして胆汁の中に排泄されます。しかし、胆嚢が細菌感染などをおこして胆汁の流れが悪くなると、βグルクロニダーゼという酵素によって抱合ビリルビンが分解され、ビリルビンとカルシウムが結合して沈殿します。
 また、胆管に寄生した回虫の卵や屍体が核となって結石が形成されることもあります。
 胆管にできやすく、茶褐色で、大きさは1cm以下がほとんどですが、一度に数百個もの胆石を持っている例もあります。
cその他
 少数ですが、コレステロールとビリルビンが混ざってできた「混合石」や、ビリルビンと蛋白質が固まってできる「黒色石」などもあります。
 日本では、戦前はコレステロール胆石が3割、ビリルビンカルシウム胆石が7割を占めていましたが、現在では、コレステロール胆石が7割、ビリルビンカルシウム胆石が3割と逆転しています。背景には、食生活の欧米化に伴う脂肪摂取量の増加や、寄生虫感染の減少などが指摘されています。
〈こんな人は要注意
大食・肥満・女性・多産〉
 胆石は、高脂肪食を好む大食家に多く、特に、「40歳以上(Forty)」、「肥満気味(Fatty)」、「女性(Female)」、「多産(Fecund)」の4つのFに当てはまる人は胆石ができやすいので要注意です。
 エストロゲンなどのホルモン剤や避妊用ピルを服用している女性も、胆石のリスクが3倍も高くなると報告されています。
 また、胆嚢が圧迫されたり、胆汁の流れが妨げられると胆石ができやすく、コルセットや日本帯を常用している人や、デスクワークや車の運転などの座業の人も要注意です。
〈激しい腹痛とサイレントストーン〉
 胆石症の最も特徴的な症状は、胆石疝痛発作と呼ばれる激しい腹痛です。その痛みは出産時の陣痛に匹敵するといわれます。
 食べ物が十二指腸に入ると、脂肪の消化を助けるために胆嚢が収縮して胆汁を送り出しますが、このときに胆石が一緒に動いて胆汁の通り道にはまり込むと、胆石を押し出そうとして胆嚢が強く収縮し、みぞおちから右上腹部にかけてさしこむような激痛がおこります。つまっていた石がはずれた途端、嘘のように痛みが引いていくのも胆石疝痛発作の特徴です。
 胆石があると必ずしも激痛がおこるわけではなく、約半数は症状のない「サイレント・ストーン(無症状胆石)」です。ただし、サイレントストーンをもつ人の10年くらいの経過をみていくと、約20〜30%の人が発作をおこすと報告されており、油断は禁物です。
胆石に合併しておこる
 胆嚢炎 胆石によって胆汁の流れがせき止められると、胆汁が胆嚢内に滞って化学変化をおこしたり、十二指腸内の細菌が胆嚢に逆流して細菌感染をおこしたりして、胆嚢に炎症がおこります。胆石と胆嚢の粘膜がこすれることでも炎症がおこります。
 胆嚢炎では、高熱が出たり、胆汁成分のビリルビンが血液中に入り込んで黄疸がおこったり、胆嚢に膿が溜まって胆嚢が腫れ上がったりします。
 そのまま放っておくと、胆嚢が破れて胆汁が腹腔内に漏れて腹膜炎をおこしたり、血液中に細菌が侵入して敗血症をおこす危険もあります。
 また、胆汁の流れる胆管と膵液の流れる膵管は十二指腸の手前で合流しているので(図1参照)、胆石が十二指腸の出口を塞ぐと膵液の流れも悪くなり、胆嚢だけでなく膵臓にも細菌感染がおこりやすくなります。膵炎の6〜7割は胆石が関係しているといわれています。
 このように、胆石に合併しておこる胆嚢炎は、胆嚢の炎症だけにとどまらず、命にかかわる全身の病気へと悪化していく恐れがあります。
見分けがつきにくい
 胆嚢ポリープと
 胆嚢がん 近年、胆嚢ポリープも増加傾向にあり、40〜50歳代の中高年に多くみられます。胆汁中のコレステロールが胆嚢の内壁に蓄積して盛り上がった「コレステロールポリープ」が増えているところから、胆石と同様、欧米型の高脂肪食の影響が指摘されています。
 胆嚢にできる隆起性病変としてはこの他に、胆嚢の内壁が肥厚する「胆嚢腺筋症」や「良性腫瘍」、悪性の「早期胆嚢がん」などがあげられます(図2)。
 気をつけなければいけないのは、早期胆嚢がんと、がん化の可能性のある良性腫瘍です。一般に良性腫瘍ががん化することは少ないのですが、胆嚢の良性腫瘍は後に悪性に変わることがあるので油断禁物です。
 ポリープと初期の小さながんは大変見分けがつきにくいので、年に1回は検査をして経過観察を続ける必要があります。病変が1cmを超えると25%、1・5cmを超えると60%以上がんの可能性があります。
 なお、胆石のある人が胆嚢がんになるリスクは1・1%程度ですが、一方で、胆嚢がん患者の50〜70%に胆石があることが確認されています。こうした調査の結果、胆石をもっている人が胆嚢がんになる確率は、胆石をもたない人より約10倍も高くなることが明らかになっています(図3)。
 胆嚢がんは、がん全体の5〜6%ですが、死亡数はこの10年で2倍に増えています。胆石や胆嚢ポリープのある人は、食事や生活習慣に十分に気をつける必要があります。
 胆嚢は高脂肪などの食事内容の影響を受けやすい臓器です。次回は、胆嚢の病気を防ぐ食事・栄養療法について考えてみましょう。