乾燥症候群 a乾燥は万病の元

ひからびゆく現代人

 いよいよ冬本番。空気が乾燥して身体からは潤いがなくなってきます。
 体が乾燥するといろいろな乾燥症が起きてきますが、中でもバリア(防御)機構を備えている皮膚や口腔や咽喉の粘膜が乾燥すると、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患、風邪などの感染症をはじめ、さまざまな免疫疾患にかかりやすくなります。
 現代は季節を問わず、体が乾燥する要因にあふれています。乾燥から体を守ることは病気の予防、QOL(生活の質)の向上に欠かせません。

現代人は乾いている! 急増する
ドライシンドローム 乾燥を促す現代の環境

 「ドライシンドローム」という言葉も生まれるほど最近、ドライスキン(乾燥肌)、ドライアイ(乾性角膜炎・結膜炎)、ドライマウス(口腔乾燥症)など、身体各部のさまざまな乾燥症に悩まされる人が増えています。
 かつてはみずみずしい肌を誇った日本人も今では3分の1がドライスキンといわれ、予備軍含めてアトピー性皮膚炎は1千万人、ドライアイは800万人以上と推定されています。
 こうした乾燥トラブルが増えている背景には、a気密性の高い住環境、bエアコンによる冷暖房、c大気汚染、dコンピュータ社会、e高度ストレス社会、f行きすぎた清潔志向、gよく噛まない食習慣、h口呼吸、i精神的ストレス||等々、現代社会ならではの弊害が指摘されています。

乾燥は免疫力を落とす

 皮膚や粘膜の本来の働きは、体の外から有害なものの侵入を防ぐバリア機構にあります。
 乾燥によって、皮膚や、口腔や咽喉の粘膜バリアが低下すると、さまざまな免疫疾患も招きやすくなります。
〈皮膚のバリア〉
 体の表面をおおっている皮膚は、内部の潤いを保持するのと同時に、病原菌や紫外線、化学物質など、外部のさまざまな刺激から体を守る役目(バリア)をしています。皮膚が乾燥すると、このバリア機能が衰えて、弱い刺激でも湿疹や炎症をおこしやすくなり、細菌やアレルゲンも侵入しやすくなります。
〈口腔や咽喉の粘膜バリア〉
 口呼吸などで口腔や咽喉の粘膜が乾燥すると、免疫の最前線基地である鼻とのどの奥(鼻咽腔)をとりまく扁桃リンパ輪(図1)が乾燥して、細菌やウイルスがはびこりやすくなります。そうすると、扁桃リンパ輪でつくられる白血球が細菌やウイルスをとり込んで全身の白血球造血巣に運び、さまざまな病気を引き起こします。
ドライシンドロームの
 代表的な症状 ドライスキン(乾燥肌)
 空気の乾燥、水仕事や洗剤(特に合成洗剤)の使いすぎ、洗いすぎ、老化||など、さまざまな原因で表皮の角質層の水分が失われると、肌荒れやカサカサ、かゆみなどの症状がおこります。これが「アトピー皮膚」ともよばれる「ドライスキン」です。
 健康な角質層は10〜30%の水分を含んでいるといわれます。この水分は、皮脂腺から分泌される皮脂と汗が混じりあってできる皮脂膜によって蒸発が防がれ、さらに角質層にある天然保湿因子(NMF)によって保持されています。
 角質層の水分が10%を割ると皮膚はカサカサしたドライスキンになります。ドライスキンになると、皮脂膜や細胞間脂質(セラミド)が少なくなり、角質層はスカスカになって、はがれやすくなり、かゆみや湿疹などもおきてきます。掻き崩すことでさらに角質層はダメージを受け、皮膚本来のバリア機能は大幅に低下し、容易にダニやホコリ、細菌などの異物の侵入を許してしまいます。
〈主婦湿疹〉
 典型的なドライスキンの症状です。炊事、洗濯、掃除などで手を荒らすことでおきやすくなります。
〈皮脂欠乏症・老人性皮膚掻痒症〉
 老化によるドライスキンは、男性では50〜60歳、女性では40〜50歳代になると、ホルモン分泌の影響で皮脂の分泌が減り(図3)、皮膚が乾燥しやすくなります。こうした症状は「皮脂欠乏症」ともよばれています。
 さらに、高齢になると水分を保持する役目をする筋肉の衰えなども加わって水分保持力が全身的に低下し、65歳以上の8〜9割が、皮膚が粉をふいてひび割れたような状態になる「老人性乾皮症」に悩まされてきます。
 こうした症状が悪化すると、眠れないほどのひどいかゆみを訴える「老人性皮膚掻痒症」、掻き崩した皮膚に刺激物が吸収されて湿疹ができると「皮脂欠乏性湿疹」となります。

ドライマウス

 老化に伴う唾液腺の萎縮や、降圧剤や鎮痛剤などの薬の副作用、ファストフードなどよく噛まない食生活、口呼吸の習慣、精神的ストレス、糖尿病||等の原因(図4)で唾液の分泌が減ると、a口や喉のひどい乾き、bビスケットなど水気の少ない食物が飲み込みにくい、c舌がひび割れる、d口の中が粘るなどの不快な症状があらわれます。これが「ドライマウス」です。
 唾液は、口の中の食べかすなどを洗い流したり、含まれているリゾチームやラクトフェリンなどの抗菌物質の働きで、虫歯や歯周病から守ってくれます。ドライマウスを放置すると虫歯や歯周病にもなりやすくなるだけでなく、症状が悪化すると、咽頭炎や食道炎、萎縮性胃炎などの全身的な病気を招くこともあります。

ドライアイ

 疲れ目(眼精疲労)の6割は「ドライアイ」が原因といわれ、昔から知られている症状です。近年、テレビやコンピュータ画面の見過ぎ(VDT〔ビジュアルディスプレイ端末〕障害)、エアコンによる空気乾燥、大気汚染物質||などで急増が目立っています。
 ドライアイでは疲れ目、痛み、ゴロゴロとした異物感などの症状が出ますが、それはa基礎分泌の涙の減少(刺激による涙は出やすくなる)、b成分異常(目玉を濡れやすくする成分や油分の減少)、c涙の流量が少ない||などによります。
 急増の大きな原因であるVDT作業では、通常1分間約20回のまばたきが2〜3回程度に落ち、目が乾いて傷みやすくなります。
 シェーグレン症候群
 唾液腺や涙腺など、全身の外分泌腺がおかされる自己免疫疾患です。重度のドライアイやドライマウス、関節痛などを伴います。
 潜在患者は約20万人はいるといわれ、中高年女性に多く発症します。