自閉症・ 引きこもり

 他者とのコミュニケーションがうまくいかない「自閉症」と「引きこもり」。似ているようで自閉症は脳の機能障害、引きこもりは心の障害と、全く別のものです。
 しかし、食事・栄養面からみるとどちらも共通点が指摘されています。

増えている

自閉症・引きこもり 自閉症は、他人や外界への関心を示さず、対人関係が困難で、視線を合わせない、言葉の発達が遅れる――などの特徴を示す障害です。同じ道順にこだわるなどの執着的行動や、多動症などを示すこともあります。
 精神分裂病の症状の一つとして自閉がみられることもありますが、分裂病では次第に家族や周囲への関心が薄れ、社会との接触を断って自分の殻の中に閉じこもるのに対し、自閉症は3歳頃までの早い時期におこる脳の中枢神経系の発達障害です。以前は幼児の精神病と考えられたり、母子関係の問題による情緒障害説がいわれていましたが、現在ではこうした考え方は否定されています。
 脳の障害がおこる原因は不明ですが、米国では87〜98年にカリフォルニア州の地域センターに入院した自閉症児の数が273%と激増しており、原因究明に向けての研究がスタートしました。日本でも昭和40年代頃から自閉症の増加が問題になってきています。
 一方、引きこもりは病名ではなく、学校や仕事に行かず、家に閉じこもっている若者の状態を指す言葉です。爽風会佐々木病院の斉藤環先生は、引きこもりの定義を、a20代後半までに問題化し、b社会参加しない状態が半年以上続き、c他の精神障害がその第一の原因とは考えにくい場合――としています。引きこもりが長期化すると、家庭内暴力やうつ病などを併発することもあります。
 引きこもりは不登校から始まるケースが多く、不登校児が全国で13万人を超える今、斉藤先生は「控えめにみても数十万人、個人的印象からは100万人以上の引きこもりがいる」と推定しています。
乱れた食生活が
脳と心の健康を損なう 自閉症や引きこもりが増えている背景には多くの要因が複雑に絡み合っていると考えられますが、両者に共通する問題の一つに、食生活の影響が指摘されています。
 引きこもりの前段階となる不登校児たちの家庭訪問をした教師の報告では、部屋には清涼飲料水の空き瓶が散乱し、お腹が空くとカップラーメンという食生活の子供が多いといいます。
 また、明和女子短大の飯野節夫教授の調査では、自閉症児は普通児に比べて野菜の摂取が少なく、甘いものをとり過ぎていることが明らかになっています(図1)。
 インスタント食品やファストフード、清涼飲料水などのジャンクフード(がらくた食品)に依存している子供たちは、飽食の現代日本にありながら脳の健康に必要な栄養素(表)が不足している"現代型栄養失調"に陥っており、脳が生き生きと働けないことが自閉症や引きこもりにつながるのではないかと考えられています。
 また、白砂糖のとり過ぎは血糖値の急上昇をもたらし、それを下げようと膵臓からインスリンが大量に分泌されると、逆に血糖値が下がりすぎてしまう"低血糖症"に陥ります。低血糖状態になると、エネルギー源であるブドウ糖が脳細胞に行き届かなくなるので、思考力が低下したり、無気力状態になってしまいます。さらに、下がりすぎた血糖値を回復しようと副腎からアドレナリンが大量に分泌されると、交感神経が刺激されてイライラや興奮状態になります。
 こうした血糖値の激しい変動が、不登校や引きこもり、自閉症、さらには家庭内暴力や多動症などを生み出す一因になるのではないかと考えられています(図2)。

〈食事・栄養療法〉

 子供たちの脳と心の健康を保つには、精製加工食品・白砂糖づけの食生活を改め、脳に必要な栄養素(表)をしっかり確保することが大切です。飯野教授は実際、砂糖を減らし、食生活全体を見直すことで、自閉症の改善に成果を上げています。
 主食には発芽玄米がおすすめです。複合糖質の発芽玄米は白砂糖のように血糖値を急変させず、さらに、脳の健康に不可欠なビタミンB群や、脳の機能を高めるγ―アミノ酪酸(通称ギャバ)も豊富に含まれています。
 副食には、納豆や味噌汁などの大豆製品を必ずとりましょう。大豆には脳神経に重要なレシチンが豊富です。また、野菜類、海藻類、芋類など、具沢山の味噌汁は、ビタミン・ミネラルの優れた供給源になります。
 微量栄養素の中では特に、ビタミンBが自閉症の改善に役立つと報告されています。東北大学医学部の栗山真一医師らが、7〜17歳の自閉症児4人に1日100〜200mgのビタミンBを1ヶ月間投与したところ、言語性の知能指数が向上したり、音への過敏性が薄れるなどの効果が確認されました。
 また、葉酸の欠乏が、引きこもりや無感動、興奮、知能の発達の遅れを招くとの報告もあります。
 栄養補助食品(サプリメント)なども利用してバランスよく補うことを心がけましょう。

脳神経を直撃する

有害金属 有害金属汚染も脳・神経系にダメージを与えます。特に子供の場合、有害物質が脳へ侵入するのを防ぐ「血液脳関門」がまだ未発達なため、大人より有害金属の神経毒性を受けやすくなります。
 大気汚染や残留農薬など、現代人は微量ながらも慢性的な有害金属汚染にさらされていますが、中でも子供への影響が大きいのは、
a家族の喫煙による鉛汚染
bアルミ缶飲料、菓子類の包装に使われるアルミ箔、合成着色料などに含まれるアルミニウム汚染
c小児用ワクチンに防腐剤として含まれている有機水銀汚染です。
 自閉症や多動症の子供たちは、毛髪中の鉛やアルミニウムの濃度が高いことが報告されています。
 また米国では、B型肝炎ワクチンに防腐剤として有機水銀のチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)の使用が認可された90年から自閉症の発症率が25倍にも上昇したことが指摘されています。チメロサールは日本でも、百日咳・ジフテリア・破傷風の三種混合(DPT)、日本脳炎、インフルエンザなどのワクチンに使用されており、その影響が懸念されます。

〈有害金属対策〉

 有害金属の多くは、体内で活性酸素を発生させることによって毒性を発揮します。抗酸化ビタミンACE、抗酸化酵素を活性化させるセレン、亜鉛、銅、マンガンなどのミネラル類、ポリフェノールなどの植物性生理活性物質を、総合的かつ十分に確保しましょう。
 有害金属の体外排泄を促すには、セレンや亜鉛、カルシウム、マグネシウム、食物繊維などをしっかりとると効果的です。食用炭の利用も役立ちます。また、有害金属は汗や尿によく排泄されるので、運動や遠赤風呂などを利用して発汗を促すのもおすすめです。
こんな生活習慣に注意 熊本大学医学部の三池輝久教授は、不登校児の7割は、夜眠れず朝起きられない、めまいや立ちくらみをおこす、疲れやすいといった"フクロウ症候群(起立性調節障害)"であると報告しています。
 フクロウ症候群の原因としては、a成長期の急激な発育に伴う自律神経のアンバランス、b塾通いやテレビゲームなどで夜型生活に移行したことによる体内リズムの乱れ――が指摘されています。
 自律神経のバランスを整えるには、本誌336号(01・11)の福田稔先生のインタビューを参考に、爪もみ療法や半身浴、ウォーキング、乾布摩擦などの「自律神経免疫療法」に取り組むと良いでしょう。体内リズムを整えるには、規則正しい生活習慣を心がけると共に、メラトニンの摂取が有効です。
 また、テレビの普及に伴って自閉症児が増え始めたことなどから、テレビが自閉症の一因ではないかとの説もあります。テレビと自閉症の因果関係は明らかではありませんが、長時間テレビを見たり、騒音にさらされるような環境は、ビタミンBを大量に消耗し、脳や神経の著しい疲労を招きます。
 子供たちの食生活や生活環境に最善の注意を払いつつ、希望をもって、自閉症や引きこもりの改善に取り組んでいきましょう。
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◎参考文献
・『栄養・ビタミン療法』M・レッサー著・
大沢博訳、ブレーン出版
・『食原性低血糖症』
大沢博著、ブレーン出版
・『こどもの非行・落ちこぼれは
食事で治せる』飯野節夫著、現代書林
・『今の食事が子供を狂わせる』
今村光一・小野寺暁子著、主婦の友社
・他