膠原病・
――対策編――
難病とされる自己免疫疾患も、発症のしくみを正しく理解することで予防・改善への道が見えてきます。
前回ご紹介した最新の免疫学の研究をもとに、生活習慣の見直しや、食事・栄養療法から膠原病対策を考えてみましょう
生活習慣の見直しが大事
自律神経のパランスを図る
前回ご紹介したように、新潟大学医学部の安保徹教授は、病気のほとんどは、交感神経が優位になって免疫細胞がアンバランス(リンパ球の減少、顆粒球の増加等)になり、さらに、それによってもたらされる血流障害や、活性酸素の暴発等がかかわって起きると説明されています。ですから、膠原病はもとより免疫病、さらに万病は、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを整え、血流を回復することが真の治癒をもたらすポイントになります。
・薬をやめる
膠原病のような自己免疫疾患では、異常な免疫反応を抑えるための免疫抑制薬がよく使われますが、この薬には血流を阻害する作用があります。
また、自己免疫疾患は免疫の異常亢進ではなくむしろ免疫抑制の極限状態にあるので、このような薬を使うことで逆効果になってしまいます。
ステロイド剤(副腎皮質ホルモン薬)も、血流を阻害して冷やすことで消炎効果を発揮する薬です。体内に蓄積する性質があり、変性して酸化コレステロールになると、その酸化作用によって交感神経の緊張、ひいては血流阻害、顆粒球増加による活性酸素の暴発を招いてしまいます(図1)。
ステロイド剤の使用をやめると関節痛や発熱などの激しいリバウンド現象があらわれますが、これは血流が回復して治癒に向かうための副交感神経反射で、これを乗り越えなければ真の治癒には至りません。ただし、ステロイド離脱は危険を伴うので必ず医師の管理下で行って下さい。
非ステロイド消炎鎮痛剤は、体内でプロスタグランジンという痛み因子が出来るのを抑えますが、プロスタグランジンには交感神経の緊張を抑え、血管を拡げて血行を良くする作用があるので、結果的には痛みの原因である血行障害を促進してしまいます。
・ストレスを取り除く
過労・睡眠不足・暴飲暴食などの不規則な生活、心の悩み、環境汚染――などのストレスはすベて、交感神経を緊張させ、血流を阻害するもとになります。
無理な生活習慣を正すと共に、適度な運動(闘争的で、筋肉痛が続くようなハードな運動は逆効果)や、半身浴(39℃前後のぬるめのお湯に鳩尾から下だけ20〜30分浸かる)などで血行促進と気分転換を図ると、交感神経の緊張が和らぎます。
笑いも、ストレス解消と血流回復、免疫カアップに大いに効果的です。米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏は、笑い療法とビタミンCの大量療法で膠原病を克服したことで知られています。
・刺絡療法等で免疫系を調える
交感神経を緊張させる薬やストレスなどの要因を取り除くと同時に、積極的に副交感神経を刺激することも重要です。
安保先生と一緒に自律神経と免疫の関係を研究され、多くの臨床成果を上げられている福田医院の福田稔先生は、手足の指の爪の生え際の角(井穴)を刺激する刺絡療法をはじめ、血流停滞の箇所を注射針やレーザーで刺激して血流を回復し、免疫を上げることで、膠原病をはじめ多くの病気を治療されています。
井穴を刺激して痛みが生じると、痛みを排泄するために副交感神経が活性化し、交感神経の緊張が解消されます。白血球のバランスも修正され、リンパ球が増えて免疫力が回復します。
家庭でも応用できるので、ぜひ試されて下さい(写真参照)。
免疫系にダメージを与える
口呼吸etc. また、本誌連載中の日本免疫病治療研究会の西原克成先生は、免疫系にダメージを与える生活習慣として、第一に口呼吸、さらに片噛み・冷たい物中毒、間違った寝相などをあげられ、それらを徹底的に改めることで多くの免疫病が改善し、最後には完治することが多いとしています。
膠原病の改善に役立つ食事・栄養療法〈血流を良くする食事因子〉
肉・卵・牛乳などの動物性食品や、紅花油などのリノール酸系植物油は、血液をネバネバにして血流を悪くし、交感神経の緊張を高めるもとになります。
反対に、納豆や、玉ネギ・ニンニク、脂肪酸ではシソ油や亜麻仁油に多いα-リノレン酸、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などが、血液をサラサラにしてくれます。
水分を常時切らさずチビチビとることも重要です。
〈抗酸化物貿の確保〉
抗酸化ビタミンACEや、抗酸化酵素を活性化するセレン・亜鉛・銅・マンガン・鉄などのミネラル、植物性生理活性物質のポリフェノール・フラボノイド・カロチノイドなどは、体内で活性酸素の炎症を鎮めます。
これらの微量栄養素は優れた抗酸化物質であると同時に、次のような働きもあります。
●ビタミンC すでにお話しした通り、ノーマン・カズンズ氏はビタミンCの大量療法で膠原病を克服しました。ビタミンCはコラーゲン(膠原線維)の合成と維持に不可欠で、全身の惨原線維がやられる膠原病では特にしっかり確保したい栄養素です。
●ビタミンE 血行を促進する作用があり、血管の収縮でおこる痛みやレイノー症の改善に役立ちます。
●セレン・亜鉛 胸腺の老化を防ぎ、免疫力を高めます。
●カルシウム・マグネシウム
強皮症では、皮膚や筋肉、臓器中のカルシウムが過剰になって石灰化していますが、これはカルシウムとマグネシウムの不足で脱灰(骨からカルシウムが抜け出す)が進んでいるためです。
植物性食品を中心とした昔ながらの伝統的な和食は、カルシウムとマグネシウムのバランスが良いことが分かっています。サプリメント(栄養補助食品)を利用する場合も、それぞれを単独でとるより、両者がバランス良く含まれている総合タイプのサプリメントを選ぶと良いでしょう。
〈注目の成分――DHEA〉
DHEAは副腎から分泌される男性ホルモンの一種で、思春期以降、加齢と共に減ることが分かっています(図2)。
DHEAを補充することで老化にブレーキをかけたり、成人病や自己免疫疾患の改善効果が期待されており、全身性エリテマトーデスのマウスにDHEAを投与した研究では、検査所見が改善し、寿命が延びたというデータが出ています。
〈酸床、苦味、辛味、アルコールを
賢く利用〉
酸っぱいもの、苦いもの、辛いもの、アルコールなどは、少量とると副交感神経が刺激されます。これらは一種の″毒〃なので、体が副交感神経を活性化させて血流を増やし、排泄を促すのです。
効果があるのはあくまでも少量とった時なので、とり過ぎは禁物です。
◎参考文献
『未来免疫学』
安保徹著、インターメディカル刊
『難病を治す驚異の刺絡療法』
福田稔著、マキノ出版刊
『健康は「呼吸」で決まる』
西原克成著、実業之日本社刊、他