キレる子供

――現代型栄養失調・低血糖症――

 普段は大人しい子が些細なことで突然凶暴化して手がつけられなくなる――、いわゆる"キレる"子供が急増しています。
 若者の凶悪事件は後を絶たず、また、学級崩壊、不登校、引きこもり、いじめ等、子供たちの心の問題は深刻化する一方です。
 背景には、少子化や、知育偏重の学校教育、父親不在の子育て、テレビ・漫画・ゲームなどのメディアの影響等、さまざまな要因が取り沙汰されていますが、"間違った食生活"の影響も見逃せません。

現代っ子の食生活が危ない!

 最近の子供たちの食生活の実態を知っていますか?
 魚・野菜嫌い、肉や脂っこいもの・甘いもの好きなど偏食が多く、好んで食べているものといえば、菓子パン、ハンバーガー、スナック菓子、清涼飲料水、カップ麺など、"ジャンクフード(がらくた食品)"と呼ばれるものばかり。これらが主食という子も多く、また、夜更かし型の生活で朝食が食べられないなどの欠食も目立ちます。
 こうした食生活は、子供たちの脳に悪影響を及ぼさないわけがなく、子供たちの問題行動と密接に関係しています。福山市立女子短大の鈴木雅子教授が中学生の食生活と心の健康状態について行った調査では、食事の質が低下するほど「イライラする」「すぐカッとする」「いじめる」などが増えることが明らかになっています(図1)。
 食生活の乱れがどのようにしてキレる子供たちを生み出すのか、その原因を探っていきましょう。

脳に必要な栄養素が足りない "現代型栄養失調"

 脳が生き生きと働かなければ、思考能力が衰えたり、イライラするなど精神・神経系、いわゆる心の状態に影響を及ぼします。
 ファストフードやコンビニ食に代表されるジャンクフードは、カロリー(熱量)ばかりが多く、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素はほとんど含まれていません。
 そのため、こうした食品に依存している子供たちは、飽食の現代日本にありながら脳に必要な栄養素(表1)は不足しているという"現代型栄養失調"に陥っています。
白砂糖のとりすぎが招く

"低血糖症" 脳の主要なエネルギー源はブドウ糖です。穀類や芋類に含まれるでんぷんや、砂糖などの糖質は、

消化酵素でブドウ糖に分解され、筋肉や脳の活動に利用されます。
 最近の子供たちの砂糖のとり方は異常です。清涼飲料水を水代わりにガブガブ飲み、甘いお菓子を大量に食べ、近頃では、白米ご飯にアイスクリームやコーラをかけて食べる若者までいるとか…。
 この白砂糖のとり過ぎが引き起こす"低血糖症"こそが、子供たちがキレる大きな要因と指摘されています(図2)。
a白砂糖のとり過ぎで血糖値が急上昇する
 砂糖はブドウ糖と果糖の2つがくっついた単純な構造をしているので分解・吸収が速く、砂糖を大量にとると血糖値は短時間で急上昇し、ピークに達します。
bインスリンが多量に分泌され、血糖値が急降下する
 急激に高血糖になると、膵臓からインスリンが大量に分泌され、全身の細胞に過剰なブドウ糖をとりこみます。すると、逆に血糖値が下がりすぎて脳細胞にブドウ糖がまわらず、ボーッとする、イライラ、思考能力が低下――などの状態に陥ってしまいます。
c血糖値を回復しようと、副腎からアドレナリンが過剰分泌される
 さらに今度は血糖値の回復のために、副腎からアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは交感神経を刺激して全身の活動力を高めるヤル気ホルモンです。しかし、過剰に出ると人を闘争にかりたてる攻撃ホルモンとして、さらにイライラや興奮状態、暴力行為などを引き起こします。
 体内でおきるこうした一連の反応が、キレる精神状態をつくり出していると考えられるのです。
 なお、砂糖には体液を酸性に傾ける性質があり、それを中和するために骨のカルシウムが使われたりします。また、白砂糖の代謝にはビタミンB群が消耗されます。砂糖のとり過ぎは、脳の健康に大事なビタミン・ミネラルの欠乏にも拍車をかけているのです。

キレない子供を育てる食事・栄養療法
昔ながらの和食を見直そう

 キレない子供を育てるには、ジャンクフード漬けの食生活を改めさせることが第一です。そして、脳の働きを高めるような食生活に努めましょう。
〈主食は発芽玄米が最適〉
 脳のエネルギー源となるブドウ糖は、穀類や芋類などの複合糖質で確保します。複合糖質は消化に時間がかかるので、白砂糖のように急激な血糖値の変動を招きません。未精製の穀類なら、糖の代謝に必要なビタミンB群も豊富です。
 特におすすめは、「γ―アミノ酪酸(通称ギャバ)」の多い発芽玄米。ギャバは脳や脊髄に存在する神経伝達物質で、発芽玄米には、玄米中のグルタミン酸が発芽時の酵素の活性によって変化したギャバが豊富です(図3)。ギャバには脳の血流を良くし、脳への酸素供給量を増やす働きがあり、自律神経失調症、イライラ、うつなどに有効だといわれています。
 また、ご飯が主食なら、納豆や具沢山のみそ汁(野菜、海藻、豆腐、芋)など、副食もビタミン・ミネラルの豊富なメニューにしやすくなります(表1参照)。

〈リノール酸系(n|6系)の油を 極力減らし、 α―リノレン酸系(n|3系)の油を〉

 こうした昔ながらの和食は、脂肪酸のn―6系(植物油に多いリノール酸など)とn―3系(シソ油などに多いα―リノレン酸や、魚油のEPA、DHA)の摂取バランスも理想的です。n―6系とn―3系は1対1ないし2対1が望ましいのですが、食生活の欧米化に伴ってリノール酸の摂取量は増大し、一方、n―3系の脂肪酸は魚・野菜嫌いもあって相対的に不足しがちです。
 名古屋市立大学薬学部の奥山治美教授の研究では、ラットをリノール酸の多い紅花油群とα―リノレン酸の多いシソ油群に分けて比較したところ、紅花油群は運動量が多く落ち着きのない行動パターンを示し、学習能力はシソ油群の方が高いという結果が得られています(表2)。DHAの多い魚油でも高い学習能が示され、脳の健康にはn―3系の脂肪酸の重要性が指摘されています。
 DHAは脳の神経細胞の先端に多く含まれ、神経細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしています。DHAには、ストレス下で攻撃性や興奮性を抑える効果も認められています(富山医科薬科大学の澤崎茂樹氏らの研究)。
〈小魚や野菜類をよく噛んで〉
 咀嚼は脳を刺激し、脳の神経活動を活性化させます。しかし、最近の子供たちは軟らかい食品ばかり好み、ジュース類で流し込むなど、ほとんど噛まずに食事をする傾向があります。
 繊維質の多い豆類や芋類、根菜類などを積極的にとり、魚を食べる場合もマグロの切り身よりはイワシなどの小魚を頭から。1口30回以上よく噛んで食べる習慣を身につけましょう。
 結局、健全な心を育てるには、昔ながらの和食をベースにするのが一番なのです。

家庭や学校での食育が必要

 生活スタイルの変化に伴い、家族そろって食卓を囲む回数が減り、一人きりで食事をする"孤食"の子供も増えています。孤食は周囲とのコミュニケーション不足や、早食い、偏食などにつながりやすく、どうしても栄養バランスを崩しがちです。
 家族で食事をとり、親が子供に食事の大切さをしっかり教育すること、学校でも食の教育(食育)をすることが求められています。
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 食品添加物、有害金属、環境ホルモン等の毒性とキレる子供との関係については次号で取り上げます。