虚血性心疾患b

――狭心症・心筋梗塞――

 虚血性心疾患は食生活の偏りの他に、運動不足や喫煙などの生活習慣も深く関係します。若いうちから日常生活レベルでの予防が肝心ですが、発症年齢に入ってからでも、生活習慣を改めることで予防・改善は可能です。
 今月は、心臓を守る日常生活の予防対策について考えてみましょう。

過食、飲み過ぎに御用心

 前回お話ししたように、虚血性心疾患の引き金となる冠動脈の動脈硬化やけいれんを防ぐには、食事・栄養面の改善が欠かせません。
 食生活ではさらに、次のような点を心がけましょう。
〈過食は避ける〉
 食物の消化・吸収にはかなりのエネルギーが必要で、過食をするとそれだけ心臓に負担がかかります。食事は腹八分目に抑え、少食にしてよく噛むことが大事です。
〈お酒はほどほどに〉
 アルコールは、適量であれば血管を広げて血流を良くしたり、善玉のHDL(高比重リポ蛋白)コレステロールを増やすなど、動脈硬化の予防に役立ちます。全く酒を飲まない人に比べ、少量飲む人の方が、虚血性心疾患の発症率も死亡率も低いといわれます。
 ただし、酒が「百薬の長」となるのは、ビールなら小瓶1本、日本酒なら1合程度まで。飲み過ぎは肥満や高脂血症のもとになり、かえって虚血性心疾患のリスクを高めます。節酒を心がけましょう。

タバコは厳禁

 嗜好品ではまた、タバコが大きな問題となります。
 タバコには、a血管を収縮させる、b血液の粘度を高めて血栓をできやすくする、c血液中のコレステロールを酸化させ、動脈硬化を促進する――などの作用があり、1日20本以上タバコを吸う人は、吸わない人より3・2倍も虚血性心疾患にかかりやすいといわれます。
 また、喫煙開始年齢が低いほど、1日の喫煙本数が多いほど、リスクが高くなることも分かっています(図)。ぜひとも禁煙を。

運動療法
――ウォーキングが最適――

 運動は、労作性狭心症の引き金となるなど、心臓にとって負のイメージがあるかもしれませんが、安静ばかりが決して心臓に良いわけではありません。虚血性心疾患の予防にも、発作後のリハビリにも、再発防止にも、運動の重要性がいわれています。
 ただし、体力の限度を超えるような激しいスポーツは禁物です。また、息をこらえて筋肉にグッと力を入れるような無酸素運動も、血圧を上げ、心臓に負担がかかるので避けるべきです。
 運動強度が強すぎず、さらに、いつでもどこでも手軽にできるのが"ウォーキング"です。
 ウォーキングは、持続的に酸素をとり込みながら行う有酸素運動なので、糖質や脂肪が効率良く燃焼されます。その結果、肥満の解消をはじめ、糖尿病、高脂血症、高血圧など、虚血性心疾患の危険因子となる多くの生活習慣病の改善に役立ちます。
 また、"足は第二の心臓"といわれ、歩くことで足の筋肉が収縮・弛緩して血管を圧迫すると、血液の循環が良くなります。ウォーキングには心臓のポンプ機能を助ける効果もあるのです。
〈効果的な歩き方〉
a1日1時間(1回10分程度を1日5〜6回でも可)を、最低でも週3回以上、
b健康な人の場合、1分間の脈拍が最高心拍数の75%前後を目標に(表)、少し汗ばむくらいの強さで。心臓病の人の場合はあまり心拍数は上げない方が良く、日常生活に復帰している人で120位を目安に、
c歩くコースには階段や坂道なども取り入れて、
d正しい姿勢で歩く(イラスト)――がポイントです。
〈運動時の注意〉
・汗をかくと、血液の粘度が高まって血管が詰まりやすくなったり、脱水症状をおこす危険性が出てきます。きちんと水分を補給しましょう。アルコールは利尿作用があるので逆効果です。
・運動は、夕方や夜に行うのがベスト。朝は、自律神経が副交感神経から交感神経の優位にかわってくる時間帯で、自律神経の乱れから発作がおこりやすくなります。
・運動の前後には、必ず準備体操や整理体操を忘れずに。
・中高年から運動を始める場合、最初から無理はしないこと。運動の強さも持続時間も"Slow But Steady"で少しずつ増やして着実に続けていくことが大事だと、名古屋大学総合保健体育科学センターの佐藤祐造教授はアドバイスしています。
・酷暑や厳寒の中での運動も控えるべきです。
・高血圧、高脂血症、糖尿病などを抱えている人は、運動量や強度を医師と相談すると良いでしょう。

ストレス対策
――A型タイプの人は要注意――

 心筋梗塞の発作は、仕事の変わり目や多忙期にあたる12月と3月、月曜日、午前9時前後などに多く、ストレスや自律神経の緊張が発作を誘発することが指摘されています。
 特に、真面目で几帳面、負けず嫌い、猛烈に働く、攻撃的といった「A型行動パターン」の人はストレスをためやすく、温和でマイペースな「B型行動パターン」の人に比べて、狭心症や心筋梗塞の発作を2倍もおこしやすいことが明らかになっています(これは血液型とは関係ありません)。
 A型タイプの人は、自律神経の交感神経系の支配が強くなっています。交感神経は、闘争などに備えて血圧を高めたり、脈拍数を増やしたりして、体の活動力を高める神経です。こうした状態が常に続いていると、心臓の負担が蓄積され、虚血性心疾患の発作につながりやすくなるのです。
 あまり頑張り過ぎず、普段から気持ちをリラックスさせるよう心がけ、カラオケや旅行、趣味など、自分に合った方法でストレスを発散することが大事です。

その他、日常生活での注意

 この他、心臓に優しい生活を送るには、次のような点に気をつけましょう。
・熱い風呂、長湯は禁物
 熱いお湯や長風呂は心臓に負担をかけます。特に冬場は、急激な温度変化が血圧や脈拍の急変をもたらし、老人を中心に入浴中の突然死がおこりやすくなります。
 入浴は、ぬるめの湯で下半身だけつかる半身浴がおすすめです。さらに、浴室や脱衣所を暖めておく、老人は一番風呂には入らない、食事直後や飲酒後は入浴しない、湯冷めに気をつける――等を心がけましょう。
・睡眠を十分にとる
 突然死した人の遺族と、急性心筋梗塞で救命された患者を対象とした調査では、ストレスと睡眠減少(1日あたり1時間以上減少)が重なったときに発作をおこす危険度が高くなることが明らかになっています(名古屋大学の豊島英明教授ら)。
・体調をこまめにチェック
 普段から、体重や血圧をこまめに測る習慣を身につけましょう。体調管理に役立つとともに、自分の体に関心をもつことで、食事・栄養療法や生活習慣の改善に対する取り組み方が変わってきます。