脳梗塞b 食事・栄養療法

 脳ドックの普及で、脳梗塞の早期発見率が高まっています。ある脳ドックの報告では、受診者3千人中、約4割に脳梗塞が発見されています。しかし、その結果が脳卒中の予防につながっているかというと、必ずしもそうではないようです。
 脳梗塞の最大の引き金は動脈硬化で、動脈硬化の主な危険因子は肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙といわれます。結局、生活習慣を改善しなければ脳梗塞を予防することはできず、それには、食生活をはじめとする生活スタイルの見直しが第一です。

食事・栄養療法
とり過ぎに注意!
――高脂肪・高蛋白食、糖分、塩分、アルコール――

 日本人に脳梗塞が増えている背景には、食生活の急激な変化があります。
 とりわけ、卵・牛乳・肉・油に代表される欧米型の高脂肪食のとり過ぎは深刻な問題で、今や全摂取エネルギーの30%以上を脂肪が占め、日本人のコレステロール値は急上昇しています。
 血液中のコレステロールの中でも、悪玉といわれるLDL(低比重リポ蛋白コレステロール)が活性酸素によって酸化されると超悪玉の酸化LDLとなり、これが動脈硬化の元凶となります。脂肪の摂取を減らすと同時に、脂質の酸化を防ぐ抗酸化物質をしっかりとることが大切です(図)。
 肉や卵などの動物性蛋白質のとり過ぎは、便秘をおこしやすく、腸の中で腐敗して毒素を生み出します。腸から吸収された強酸物質は、血栓をつくったり、脳の血管を痙攣させて脳内の血圧を上げて、脳梗塞をおこしやすくします。
 血管を丈夫にするために蛋白質をしっかりとるのは大切ですが、蛋白質は植物食の範囲で必須アミノ酸がバランスよくとれるように、"麦・雑穀ご飯+納豆"をベースにしましょう。
 白砂糖や果物のとり過ぎも危険です。今の果物は人工的に甘味を強くしているものが多く、余分な果糖は中性脂肪となって高脂血症を招きます。
 塩分のとり過ぎは高血圧の一因になります。減塩運動によって一時は日本人の塩分摂取量は減る傾向にありましたが、インスタント食品やスナック菓子などの多食で、再び増加傾向にあり、注意が必要です。厚生省の「日本人の栄養所要量」では、成人で1日10g未満(0・15g/体重kg未満)としています。
 また、高血圧対策には塩分(ナトリウム)のとり過ぎだけでなく、カルシウム、マグネシウム、カリウムの不足にも注意する必要があります。
 酒の飲み過ぎは動脈硬化を進行させます。少量のアルコールには血行を良くする作用がありますが、酒が百薬の長となるのは日本人の場合、日本酒で1日1合(約180ml)、ビールなら小瓶1本(約350ml)程度までです。

注目の食物成分をしっかり確保しよう

 以上の注意点に加えて、さらに、血栓を溶かしたり血圧やコレステロールを下げるなど、脳梗塞の予防に役立つ食物成分を積極的にとるようにしましょう。
〈食物繊維〉
 海藻類やこんにゃく、大麦などに多い水溶性の食物繊維には、胆汁酸やコレステロールを吸着して便に排泄したり、コレステロールや中性脂肪の吸収を阻害する働きがあります。
 高脂血症の人が2週間麦ご飯を食べたところ、総コレステロール値が劇的に低下し、動脈硬化指数も改善したことが、大妻女子大学の池上幸江教授の研究で確認されています(表1)※1。
 また、食物繊維には血糖値の上昇をゆるやかにして糖尿病を予防したり、食塩の排泄を促して高血圧を防ぐ働きもあります。便秘の解消にも大いに役立ちます。
〈納豆のナットウキナーゼ〉
 血栓を溶かす作用があり(写真)、その力は血栓予防薬の一つ「ウロキナーゼ」よりも強く、効果も持続することが、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授の研究で明らかになっています※2。実際に血栓の治療に納豆食を応用して成果を上げている病院もあります。
★血栓予防薬「ワーファリン」を処方されている場合、ワーファリンが納豆に多いビタミンKと拮抗して薬の効果をなくしてしまうので、納豆は食べてはいけないとされています。納豆が食べられるように、「小児用バファリン」などの別の薬に代えてもらうように医師に相談してみるのも一考です。
〈大豆のサポニン、レシチン〉
 また、大豆の抗酸化成分サポニンには、コレステロールの酸化を防いだり、コレステロール値を下げる効果が確認されています。
 大豆中のレシチンにも、血液中のコレステロールを肝臓に運んで代謝する働きがあります。
〈ゴマのセサミン〉
 総コレステロール値を減らす一方、善玉のHDL(高比重リポ蛋白コレステロール)を増やす効果が確認されています。
〈玉ねぎのイオウ化合物やケルセチン等〉
 玉ねぎに多いイオウ化合物には、血糖値やコレステロール、血圧などを下げる働きが、また、ケルセチンや催涙物質などには血栓を防ぐ働きがあることが、最近の研究で分かってきました※3。
 玉ねぎの他にも、野菜には血栓を防ぐ効果のあるものが多いことが確認されています(表2)。
〈魚油のEPA、DHA〉
 サバやイワシなどに多い魚油のEPA(エイコサペンタエン酸)や、マグロやブリなどに多いDHA(ドコサヘキサエン酸)には、コレステロールの合成を阻害したり、分解や排泄を促して、コレステロール値を下げる働きがあります。
 EPAにはさらに、血小板の凝集を抑えて血液をサラサラにしたり、血管を広げて血圧を下げる働きもあります。
 ただし、DHAもEPAも酸化しやすいので、魚介類は新鮮なうちに食べ、抗酸化物質を一緒にとる工夫が必要です。
〈タコのタウリン〉
 魚介類ではまた、タコや貝類などに多いアミノ酸のタウリンに、血圧を安定させたり、コレステロールを下げて動脈硬化を防ぐ働きがあります。

日常生活の注意

 食生活だけでなく、生活習慣全般の見直しが必要です。
 まず、多くの生活習慣病の下地となる肥満を解消するために、麦飯・納豆・具沢山の味噌汁を基本にした食事をゆっくりよくかんで食べ過ぎを抑え、体脂肪を減らし太りにくい体質を作る運動習慣を身につけます。
 運動は、ウォーキングなどの有酸素運動が最適で、コレステロール値を下げるだけでなく、善玉のHDLを上げる効果があります。
 タバコは厳禁です。タバコには、血管を収縮させたり、血管壁を傷つけて動脈硬化のきっかけをつくったり、LDLを酸化させる作用があります。
 熱い風呂に長く入るのも危険です。急に血圧が変化したり、脱水状態になって血液の粘り気が増すため、血管がつまりやすくなります。特に、飲酒後の入浴はやめましょう。
 ストレスは血圧を上げ、動脈硬化をおこしやすくします。自分なりのストレス解消法をみつけ、適度な休息をとることを忘れずに。

もし、発作がおこったら…

 最後に、発作時の注意点をあげておきたいと思います。
a素早い対応を
 脳の血流が止まってしまうため、時間が経てば経つほど脳のダメージは広がっていきます。周囲の人の素早い対処が求められます。
 まず、浣腸です(日頃から準備しておくこと)。救急車が到着する前に、腸内で毒素を生み出している臭い便を、体の外に出してあげましょう。
bリハビリに取り組む
 脳梗塞では脳のやられる部位によって、麻痺や言語障害などの後遺症があらわれることがあります。患者は、後遺症の回復と残された機能の活用を目指して、しっかりリハビリテーションに取り組むことが大事です。
 寝たきりのままでいると、関節が固まったり筋力が衰えて体の機能はどんどん低下し、脳の活動も停滞してボケやすくなります。
c再発を防ぐ
 そして、もっとも重要なのが、再発を防ぐことです。脳梗塞は再発しやすく、再発すると脳のダメージがさらに広がって後遺症が重くなる上に、脳血管型痴呆症をおこしやすくなります。
 脳梗塞が再発しやすいのは、結局のところ、脳動脈硬化が改善されておらず、依然として脳梗塞をおこしやすい状態にある人が多いためです。再発を防ぐためにも、食事・栄養をはじめとする生活習慣の改善が不可欠です。