関節炎

(変形性関節症、慢性関節リウマチ)

 関節炎をおこす病気の代表的なものに、「変形性関節症」と「慢性関節リウマチ」があります。どちらもつらい関節の痛みが特徴的で、病気が進むと家事や仕事に支障が生じ、歩くことさえ困難になるなど、QOL(生命・生活の質)を著しく損ないます。
 日本には現在、リウマチ患者が約70万〜100万人、変形性関節症の患者が約50万1千人おり、医師にかかっていない潜在患者を含めると、その数はさらに多いものと思われます。一説には、60歳以上の2人に1人が何らかの関節のトラブルを抱えているとも言われています。

「変形性関節症」と「慢性関節リウマチ」

 変形性関節症と慢性関節リウマチは、関節の痛みをおこす点は同じですが、原因や症状の表れ方はそれぞれ違います(表)。
 まず、自分がどのタイプの関節炎かを見極めることが大切です。

〈加齢に伴う――変形性関節症〉

 変形性関節症の中で最も多いのが膝におこる"変形性膝関節症"で、他に指先が変形する"ヘバーデン結節"や、股関節におこる"変形性股関節症"などがあります。
 関節は図1のような構造になっています。
 関節をスムーズに動かすことができるのは、骨の表面を覆っている軟骨がクッションの役割をしているからです。
 しかし、長年にわたって関節を酷使しているうちに軟骨はだんだんすり減ってしまい、また、年をとるにつれて軟骨が作られる速度より分解される速度の方がまさるのです(図2)。
 軟骨自体はすり減っても痛くはありませんが、すり減った軟骨の成分(摩耗成分)が滑膜を刺激すると、滑膜はその成分を取り除こうと分解酵素を出し、この酵素が滑膜自身にも炎症をおこすので痛みが生じます。
 さらに、この酵素は正常な軟骨まで分解しようとするので、関節炎は悪循環的に悪化してしまいます。
 変形性膝関節症が進行すると、膝に水がたまるようになります。水というのは、滑膜から分泌される滑液のことです。通常は1cc以下で、関節運動を滑らかにし軟骨に栄養補給をする働きがあるのですが、炎症がおこるとそれを鎮めようと異常分泌され、関節がはれて痛みをおこします。
 さらに進行すると、足がO脚に変形してしまいます。

〈自己免疫疾患の一つ||慢性関節リウマチ〉

 一方、慢性関節リウマチは、自分の免疫が自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。
 発症の仕組みとしては、aまず滑膜に炎症がおこり、b炎症をおこした滑膜が増殖して軟骨や骨を破壊し(図3)、c骨が変形したり関節が固まって機能障害をおこすことが確認されています。
 ところが最近になって、滑膜の炎症は二次的な症状で、軟骨下骨の破壊こそがリウマチの引き金ではないかという新説が、東京慈恵会医科大学の藤井克之教授によって提唱されました。
 藤井教授は、免疫細胞のマクロファージなどが軟骨下骨を破壊することを動物実験で確認し、「壊れた部分からコラーゲンが流出し、これがリウマチ患者の血中の抗体と結合して関節に沈着すると滑膜炎を、関節外の組織に沈着すると腱鞘炎をおこす」とみています。
 軟骨下骨がなぜ破壊されるのかはまだ分かっておらず、今後の研究が期待されます。
 なお、リウマチの発症にはウイルス感染の影響も指摘されています。
 慢性関節リウマチ患者123人中13・8%が、95年に発見された"G型肝炎ウイルス"に感染していたことが、聖マリアンナ医大の西岡久寿樹教授らの研究で確認されています(図4)。

食事・栄養療法

 病院では一般に、鎮痛剤で痛みを抑えるなどの対症療法的な治療が行われますが、ステロイド薬や抗リウマチ薬などは、時に重い副作用をおこす恐れもあります。
 薬に頼り過ぎず、食生活をはじめとする生活習慣の改善が重要です。

危険因子となる欧米型の高脂肪・高蛋白食

 関節炎はもともと欧米に多い病気でしたが、最近日本でも急増しています。背景には、高齢化と共に食生活の欧米化の影響が指摘されています。
 肉・卵・牛乳に代表される動物性高蛋白食は、草食動物出身の人間の消化液ではうまく消化できず、消化不十分のまま腸から吸収されるとアレルギーのもとになります。
 リウマチなどの自己免疫疾患は、免疫の過剰反応でおこるという意味でアレルギーとは兄弟の病気と考えられ、アレルギーの原因となる高蛋白食は控えるべきです。
 また、アレルギーの炎症を悪化させる高脂肪食も避けましょう。
 植物油に多いリノール酸は、体内でアラキドン酸(肉や卵にも多い)に変化し、アラキドン酸からはアレルギー反応をおこすロイコトリエンと、炎症をおこすプロスタグランディンという物質がつくられます。

軟骨を修復する にかわ質の成分を補給

 変形性関節症では、老化に伴う軟骨の合成能力の衰えが問題です。
 軟骨の主成分は、にかわ質のムコ多糖類(コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸など)や、コラーゲン、水分などです。にかわ質の材料となるグルコサミン(図5)は、若い頃は体内で十分に合成されますが、年をとるにつれて合成が分解に追いつかなくなってきます。
 そこで、不足しがちなグルコサミンを補うことで、軟骨の修復が期待されています。
 これまで一度すり減った軟骨は二度と再生しないというのが医学界の常識でしたが、大阪外語大学の梶本修身講師らが行った臨床試験では、変形性関節症の7割に効果が認められました。また、アメリカでは今、グルコサミンとコンドロイチン硫酸の併用が、変形性関節症にもリウマチにも優れた成果があると話題になっています。
 グルコサミンやコンドロイチン硫酸は、フカヒレや魚の煮こごりなど動物の軟骨成分に広く含まれ、また、食物繊維の摂取で腸内善玉菌が優勢になると、グルコサミンの吸収が高まります。

関節炎の改善に役立つビタミン・ミネラル

●軟骨の合成
 ビタミンC、亜鉛、マンガンなどは、体内でグルコサミンの合成を高めます。ビタミンCはコラーゲンの合成にも不可欠です。
●炎症を鎮める
 炎症部で発生する過剰な活性酸素の消去には、抗酸化ビタミンのA(ベータカロチン)、C、Eや、抗酸化酵素を活性化させる亜鉛、銅、マンガン、セレン、鉄などのミネラルが役立ちます。
 特に、リウマチ患者では体内の抗酸化酵素のグルタチオンペルオキシダーゼの活性が低いことが指摘されています。この酵素は、セレンを中核に働きますが、リウマチ患者70人を、aセレンナトリウム1日200μg、b偽薬||の2群に分けた研究では、a群はb群に比べ、関節の痛み、腫れ、朝のこわばりが少なかったことが報告されています(1997年、ドイツ)。
●免疫機能の正常化
 年をとって免疫力が衰えると、免疫系が誤って自分の軟骨を攻撃してしまう可能性が指摘されており、リウマチだけでなく変形性関節症にも免疫の働きは重要です。
 亜鉛やセレンは、免疫細胞をつくる胸腺の機能を維持し、白血球のT細胞が自己と非自己を見分けて攻撃する能力を高めます。
 ビタミンB6も免疫反応を正常にするのに役立ちます。

その他、注目の成分

●ショウガ
 消炎・鎮痛作用があり、古くから湿布薬などに利用されています。
 最近のオランダの研究では、ショウガの摂取で関節炎の痛みが和らぐことが報告され、辛味成分のショウガオールやジンゲロールが有効成分ではないかと考えられています。特に、中国産とインド産のショウガが効果が高いと言われています。
●悪魔の爪(Devil's claw)
 アフリカやヨーロッパでは古くから知られているハーブの一種。ドイツやフランスの研究で、非ステロイド系の薬に匹敵する抗炎症効果があると報告されています。
●ブロメライン(Bromelain)
 パイナップルの幹からとれる酵素で、関節炎に対し優れた抗炎症効果があると報告されています。

日常生活の注意

a関節への負担を減らす
 肥満は足の関節に負担がかかり、関節炎を悪化させます。適正体重(身長(m)×身長(m)×22)を保つよう心がけましょう。
 さらに、買い物や荷物を運ぶときはキャリーバッグを利用したり、家事は椅子に座って行う、寝る時には首に負担のかからない低い枕を使う――など、日常生活の中でさまざまな工夫が必要です。
b適度な運動を
 その一方で、ある程度は運動も必要です。痛いからといって関節を動かさないでいると、関節が固まったり、関節を支える筋肉や靭帯の力が弱くなって、かえって関節への負担が大きくなってしまうのです。
 無理は禁物ですが、水泳のように浮力で体が軽くなり、全身の筋肉が動かせる運動がおすすめです。
c冷えを防ぐ
 冷えは関節痛を悪化させます。夏は冷房の温度に、冬は温かい服装に気を配り、特に患部はサポーターなどで保護しましょう。
d笑いの療法
 ストレスも症状を悪化させる一因ですが、反対に、精神的な明るさはリウマチの改善に働くことが、日医大第一病院の吉野槙一教授らの研究で報告されています。
 リウマチ患者30人に1時間落語を聞いてもらったところ、痛みの軽減をはじめ、リウマチの指標の一つであるインターロイキン6の数値が1ml40ピコグラムから10ピコグラムまで下がることが確認され、吉野教授は「インターロイキン6をこれほど下げることができる薬は現在見当たらない」と説明しています。