薄毛・脱毛症b

――食事・栄養療法――

 前回は、中高年男性に多い遺伝性の「壮年性脱毛症」についてお話ししましたが、最近は、ストレスや食生活の乱れなどが遺伝的素因に拍車をかけ、若年層や女性にまで髪のトラブルを抱える人が増えています。
 また、病気や薬の副作用による脱毛症に悩んでいる人も大勢います。
 今回は、髪の健康全般について、食事・栄養をはじめとする生活習慣の改善から考えてみましょう。

若者、女性にも増えている

 薄毛の体質が遺伝することはよく知られています。遺伝的素因があると思ったら、早くから髪の健康に良い生活を心がけることが大切です。これを無視して不摂生をしていると、遺伝的素因に拍車がかかり、若くして髪の悩みを抱えることになってしまいます。
 最近は、ファストフードやインスタント食品に偏った現代型食生活で、髪をつくる栄養素が不足している若者が多く、さらに、茶髪やパーマなどで頭皮を傷めていることなども影響して、若い層にどんどん薄毛が広がっています。
 また、女性にも薄毛の悩みを抱える人が増えており(図)、特に、若い女性の髪は年々細く、薄く、茶色くなる傾向が指摘されています。
 男性同様、家系に薄毛の人がいる女性に多いと言われますが、男性ホルモンとの関係は明らかではありません。無理なダイエットによる栄養失調や、美容情報に躍らされて刺激の強いシャンプーやリンスを使い過ぎること、社会進出によるストレスの増大なども背景にあると考えられています。

その他、さまざまな脱毛症

〈ストレスや自己免疫疾患が疑われる円形脱毛症、抜毛症〉
 ストレスは、"円形脱毛症"の引き金にもなります。
 円形脱毛症は、頭に円形状の脱毛がおこる病気で、1ヶ所におこる単発型から数ヶ所にわたっておこる多発型、さらには、頭全体に及ぶ全頭型や全身の毛が抜け落ちる汎発型まであります。
 ストレスを受けると、自律神経の交感神経が緊張し、血管が収縮して血流が悪くなります。その結果、毛根へ栄養が行き届かなくなって脱毛するのではないかと考えられています。
 また、最近は自己免疫疾患説も有力で、自分の免疫が自分の毛の細胞を異物と誤認して攻撃してしまうのではないかと考えられています。実際、患者には慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を併発している人が多く、抜け毛には免疫細胞のT細胞が多く含まれていることも確認されています。
 円形脱毛症の原因と仕組みについてはまだまだ不明な点が多いのですが、ストレスが原因となる脱毛症にはこの他に、無意識のうちに自分で髪を引き抜いてしまう"抜毛症"などもあり、ストレスが髪の天敵であることは間違いありません。
〈病気が原因となる脱毛症〉
 アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚の病気や、膠原病の全身性エリテマトーデス、甲状腺機能低下症など、何らかの病気の影響でおこる脱毛もあります。これらは、原因となっている病気が解決すれば頭髪も自然に回復するので、まずは病気の治療が先決です。
〈薬の副作用による脱毛症〉
 抗がん剤の副作用による脱毛がよく知られています。抗がん剤にはがん細胞の増殖を抑える作用がありますが、ちょうどがん細胞と同じくらいの速さで分裂している毛母細胞の細胞分裂がストップさせられてしまうために脱毛がおこります。
 ピルなどのホルモン剤の乱用も脱毛を招くことがあります。
〈老化に伴う脱毛症〉
 年をとると誰でも多かれ少なかれ髪は薄くなるものです。これは皮膚の老化や細胞の新陳代謝の低下に伴うもので、自然な老化現象の一つです。
 しかし、長年にわたってビタミン・ミネラルの欠乏した食生活を送っていると、実際の年齢以上に早々と老け込み、頭髪の衰えも早くなってしまいます。

食事・栄養療法

 食生活は髪の健康を大きく左右します。
 日本人はもともと黒々とした太い毛質で、年をとってから髪が薄くなることはあっても、青年期から薄毛になることはほとんどありませんでした。それが戦後、食生活の欧米化に伴ってコシのない、茶色がかった毛質の人が多くなり、薄毛・脱毛が増えてきたと言われています。
 薄毛の遺伝的素因がある人はもちろん、早老化による脱毛を予防するためにも、次のような点に注意が必要です。
a高脂肪食を避ける
 肉・卵・乳製品・油などに代表される欧米型の高脂肪食のとり過ぎは、毛髪に次のような悪影響を及ぼします。
・皮脂腺が肥大し、そこから分泌される酵素が男性ホルモンを変化させ、壮年性脱毛症の一因となる。
・毛穴につまった皮脂が毛根部への酸素の供給を妨げる。
・皮脂が酸化すると頭皮に炎症がおこる。
・血液中のコレステロールが多くなると、血の巡りが悪くなって、毛根部に栄養が行き届かなくなる。
b精製加工食品の多食や
無理なダイエットは厳禁
 ファストフードやインスタント食品など、精製加工食品の多い現代型食生活では、発毛に必要な栄養素が不足しがちです。
 また、極端な食事制限や偏食など、女性に多い無理なダイエットも、栄養失調から脱毛を招きやすくなります。
c毛髪の材料となる
蛋白質をしっかり確保
 毛髪をつくるアミノ酸の中でも、含硫アミノ酸のシスチンはシスチン結合といって、髪に強い弾力性を与えるのに欠かせない成分です。
 良質の蛋白質は、穀類と豆類の組み合わせでとることができます。「麦ご飯(麦2〜5割に、米は二分搗米か発芽玄米)+納豆+具沢山のみそ汁」を基本とした伝統的な和食が理想的です。
d発毛を助ける
ビタミン・ミネラルを確保(表)
 毛母細胞の細胞分裂を促すには、細胞の成長・増殖に働くビタミンAと亜鉛が欠かせません。
 また、蛋白質の合成を促して健康な髪をつくるには、ビタミンB群(特にB6やビオチン)やヨウ素が重要です。ビタミンB群は、髪の成分である硫黄と結合して毛髪の健康を保ちます。ヨウ素は甲状腺ホルモンの成分として蛋白質の合成に働き、ヨウ素不足で甲状腺の機能が低下すると脱毛しやすくなります。
 末梢血管の血行を良くし、毛根へ栄養成分を行き届かせるためには、ビタミンEやバイオフラボノイドが役立ちます。
 ストレスに強い体をつくるには、"抗ストレスビタミン"といわれるパントテン酸が役立ちます。パントテン酸は副腎の機能を強め、ストレスへの抵抗力を養います。
 不足しがちな微量栄養素をサプリメントで補う場合は、総合タイプのものを選びましょう。

髪に優しい生活を

 日常生活の中では、血液の循環を悪くする喫煙や睡眠不足に気をつけ、自分なりの上手なストレス解消法を身につけることを心がけましょう。
 きちんと洗髪をして、頭皮を清潔に保つことも大事です。髪の毛が抜けるのが恐くて洗髪の回数を減らす人もいるようですが、頭皮が皮脂で覆われているとかえって脱毛の原因になり、また、毛穴に皮脂がつまっている状態で発毛剤や育毛剤を使っても、毛根まで成分が行き届かないので意味がありません。
 なお、市販のシャンプーやリンスのほとんどが、洗浄成分に石油系合成界面活性剤を使っています。合成界面活性剤は分解されにくい上に非常に浸透力が強いので、よくすすがないと、皮膚を荒らしたり毛髪を細くするもとになります。洗髪には、分解されやすい石鹸シャンプーを使いましょう。
 髪をブラッシングすることも、頭皮に刺激を与えて血行を良くするのに役立つので怠ってはいけません。ナイロンやプラスチック製の櫛は、静電気をおこして頭皮を傷める恐れがあるので、動物の毛を使った柔らかいブラシの使用がおすすめです。