万病の元 「冷え症」

 西洋医学の概念には「冷え症」という病気はなく、病気の一つの症状か、もしくは自律神経の失調からくる不定愁訴の一つとみなされています。
 しかし、冷え症に悩まされている人は特に女性では多く、最近は子供にも「低体温症」が増えて問題になっています。冷え症が原因で不妊になるケースもあり、さらに冷えが元でいろいろな症状も起きやすくなります。
 以前は秋から冬に症状がひどくなるのが常識でしたが、最近は冷房の普及で、夏でも冷え症に悩まされている人が多くなっています。

冷え症は万病の元
女性、特に日本女性に多い

 「冷え症」は、手、足、腰を中心に、体の一部に不愉快な冷たさを感じる症状をいいます。
 特に女性に多く、その理由としては、
」骨盤の構造の違い 男性の骨盤内腔と違い、子宮や卵巣がある女性の骨盤では血流が子宮や卵巣を還流するプールになって、腰などが骨盤内部から冷えやすい
」体型的な違い 一般に女性は男性に比べて体に脂肪をたくさん蓄えており、脂肪組織は発熱作用がない上に熱を通しにくい――などが考えられています。
 中でも、日本女性に多いといわれ、日本女性に多い理由は医学的には解明されていませんが、
a糖や脂肪が燃えにくい(代謝が悪い)という民族的な遺伝要素と、b何事も気にしやすい日本人的な気質が自律神経の失調をもたらし、毛細血管を縮めやすくしていると考えられ、さらに、cビタミンEやクロムなどの摂取量が欧米人より少ない||という指摘もあります。
 女性の場合、冷え症は十代後半から起きやすく、妊娠後は改善され、更年期に入って再び激増する傾向が見られます。

子供や女性に増えている「低体温症」

 冷え症に相通じる症状に「低体温症」があり、最近、子供や若い女性に増えて問題視されています。
 急増の背景には、冷暖房の普及や戸外での活動が少ないために汗腺が十分発達しない、また微量栄養素が不足しやすい現代型食生活、ダイエット――などが指摘されています。
 健康な人の体温は約36・5度ですが、36度を切り、ひどい人では35・6度くらいの低体温の人もいるといわれています。
 脳や心臓、肝臓や腎臓などの臓器は36〜37度くらいの安定した状態でないとうまく機能しません。そのために、体には温度調節の仕組みがあり、発汗の他に、手足はラジエーター(放熱器・冷却器)の働きをして熱を発散させます。低体温症では、大事な臓器に血を巡らせるのが最優先されるために、ラジエーターの働きをする手足には血が巡らず、このために手足が冷たくなるのです。
 さらに、体の中でさまざまな代謝に働く生体内の酵素は36・5度前後で一番活性化するので、35度台の低体温症では酵素の働きが鈍ってしまう結果、
a腸内では腐敗菌が増えて異常発酵をおこしやすくなる
b女性ホルモンの分泌が衰えて卵巣機能が低下し、生理不順や不正出血、生理痛、不妊症につながる
c免疫系にも影響を及ぼし、アレルギーや感染症になりやすくなる――などのリスクが高まります。
※『子どものからだと心・連絡会議』の正木健雄日体大教授らが東京都江東区の中学生2356人を対象にした調査では、午前中の体温36度未満の生徒は男子では14・2%、女子は26%。

自律神経の失調からくる冷え症が一般的

 冷え症は血行が悪くなるために起きますが、圧倒的に多いのが自律神経失調症によるものです。
 更年期に多いのぼせ症や冷え症も、ホルモンバランスの崩れからくる自律神経の失調が原因です。また自律神経は精神的なストレスが大きく影響するので、ストレスから自律神経に不調をきたし、冷え症になるケースも多いようです。
 血液の流れや、血管の拡張・収縮などには自律神経が大きくかかわっています。さらに、自律神経は心臓や腸管の働きなど基本的な身体の働きを調整しているので、一旦、自律神経が失調すると、血行障害の他、不眠、頻尿、動悸、腰痛、便秘、肩こり、足のむくみ、めまい、疲労感、関節痛、発汗、ひび、あかぎれなど、さまざまな症状が起きます。
 そのため、冷え症ではこうした症状が付随しやすくなります。

病気の一症状としての冷え症

 慢性の貧血症、糖尿病、高血圧、腎炎、動脈硬化、レイノー病などが蔭に潜んでいることがあり、まずは健康診断でこうした異常がないか確かめることが大事です。特に、女性では貧血症からくる冷え症が多いといわれています。
 高血圧や腎炎、レイノー症などは冷え症が進行して起きる場合もあります。

体を温める食生活
――特に気をつけたい夏場の冷たいもののとり過ぎ――

 一般的にいわれる"体を冷やす食べ物"をなるべく控え、"体を温める食べ物"の摂取に心がけます。
 その土地でとれた旬のものを基本に、主食は二分搗米など精白度の低い米を中心に大麦、アワなどの雑穀を混ぜ、副食は根菜類を含めた温野菜を中心に、魚などを少量加えると良いでしょう。
 これからの夏、特に注意したいのは冷たい物のとり過ぎです。冷え症の人ほど夏に冷たい物や水分を多くとる傾向があるようです。

栄養療法
熱源と、それを燃やす ビタミン・ミネラル

 熱源となるのは炭水化物や脂肪、それに蛋白質ですが、これを体の中で燃やして熱に変えるには、ビタミンではB群、ミネラルではクロム、亜鉛、マンガンが必要です。
 これらの微量栄養素は、穀類の胚芽部などに多いので、熱源となる主食は二分搗米に大麦、雑穀を入れたご飯、パンなら全粒粉で作られた黒パンがすすめられます。
 脂肪、特に動物性脂肪は蓄積すると体を冷やす性質をもつので、すすめられません。
 食品中のクロムは含有量が少なく、亜鉛などもとりにくいミネラルですので、冷え症の人は総合微量栄養素サプリメント(栄養補助食品)の摂取がすすめられます。

血行を良くする栄養素は ビタミンEが鍵

 鍵になる栄養素はビタミンEで、ビタミンEの学名トコフェロールはギリシャ語で「妊娠を維持する油」という意味があり、末梢血管の血流を良くする働きがあります。
 小麦の胚芽部に多く、冷え症の改善には一日100〜200mg必要とされ、サプリメントで補う場合は、最も活性の強いαトコフェロールがすすめられます。
 また、貧血からくる血行不良の予防には鉄と銅があげられます。鉄や銅はとり過ぎてもいけないミネラルなので、サプリメントで補う場合は、やはり、総合微量栄養素サプリメントがすすめられます。

日常生活の注意

 運動不足、ストレス、過剰冷暖房など、日常生活での間題点のチェックも大切なポイントです。
 生活の中での予防対策には表があげられます。