鼻炎
スギ花粉症はそろそろ終息に向かう季節ですが、中には、いつまでも鼻をグズグズさせている人や、一年中鼻の不快感に悩まされている人も少なくありません。
鼻の粘膜に炎症をおこす鼻炎には、風邪などのウイルス感染に伴うもの、アレルギー性のもの、自律神経の失調からおこるものなど、いくつかの種類があります。いずれも、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが三大症状です。
鼻炎にも さまざまなタイプが 感染に伴う鼻炎
風邪などをひくと、咳や発熱などと共に、鼻水や鼻づまりなどのいわゆる"鼻かぜ"の症状もおこります。これは、ウイルスが鼻の粘膜に付着して炎症をおこすためで、このような鼻炎を「急性鼻炎」と言います。
安静にしていれば1〜2週間程度で治まりますが、くりかえし鼻炎をおこしたり、きちんと治さないまま不摂生な生活を続けていると、炎症が長引いて鼻粘膜が腫れたり厚くなったりして「慢性鼻炎」に移行してしまいます。
さらに、炎症が鼻腔から副鼻腔にまで広がると、「急性副鼻腔炎」や「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」になり、頭が重く感じて集中力がなくなったり、鼻で呼吸できない、ニオイが分からないなどのトラブルがおこってきます。
虫歯や顔の外傷から細菌感染をおこして副鼻腔炎に至ることもあります。
こうした一連のウイルスや細菌感染に伴う鼻炎では、黄色や緑色がかった粘液性の鼻水が出るのが特徴的です。
アレルギー性鼻炎 水のような透明の鼻水が出て、鼻がムズムズしたり、くしゃみが立て続けに出るような場合には、アレルギー性鼻炎の可能性が高くなります。
戦後、蓄膿症が減る一方、アレルギー性鼻炎が増えています。空腹時には自律神経の交感神経が優位になり、白血球の顆粒球(細菌を攻撃後、膿の一部になる)が増加することから、食糧事情の悪かった時代は膿性の蓄膿症が多かったのです。
一方で、満腹時には副交感神経が優位になって白血球のリンパ球(異物に対し抗体をつくる)が増えることから、飽食の現代は、過剰な抗体反応によるアレルギー性鼻炎が多くなっていると、新潟大医学部の安保徹教授は説明しています。
毎年同じ季節におこるものを「季節性アレルギー性鼻炎」と言い、花粉が抗原(アレルゲン)となるものを特に「花粉症」と呼びます。花粉症の原因植物はさまざまですが(図1)、中でもスギ花粉には、日本人の約15%が悩まされていると言われます。
一年中症状が出る「通年性アレルギー性鼻炎」では、ハウスダスト(室内塵)の中のダニの死骸やフンが原因であることがほとんどです。
また、これらの吸入性のアレルゲンの他に、卵や牛乳などの食物アレルギーが引き金となることもあります。その場合は、鼻炎単独ではなく、皮膚炎や喘息などと合併しておこることが多いようです。
なお、アレルギー性鼻炎は、図2のような仕組みでおこります。
血管運動性鼻炎 温度の急激な変化などに対して自律神経(血管運動神経)の調節がうまくいかないときにおこるのが「血管運動性鼻炎」です。症状はアレルギー性鼻炎と似ていますが、アレルギー反応は認められません。
食事・栄養療法
・食事はアレルギー性鼻炎にしろ、他の鼻炎にしろ、鼻粘膜には炎症がおこっています。炎症を亢進する卵・牛乳・肉などの高脂肪・高蛋白食や、油、砂糖は、なるべく控えましょう。
さらに、炎症部で暴発する活性酸素を消去するため、ビタミン・ミネラルをしっかり確保することが大切です。
・活性酸素の消去には、抗酸化作用のあるベータカロチンやビタミンB、C、Eなどのビタミン類、SODなどの抗酸化酵素を活性化させる銅、マンガン、鉄、セレニウムなどのミネラル、特に亜鉛をきちんと確保しましょう。
・亜鉛には、肥満細胞から炎症物質のヒスタミンやロイコトリエンが放出されるのを抑える働きもあるので、炎症をしずめるのに大変役立ちます。
・ヒスタミンの抑制には、ビタミンB群のナイアシンやパントテン酸、ビタミンCも効果があります。
・鼻粘膜の強化には、ビタミンAが活躍します。粘膜を強くすれば、アレルギーの引き金となる抗原や、風邪のウイルスの侵入を防ぐことができます。
しつこい鼻炎に悩まされる人は、南米アマゾン原産のノウゼンカズラ科の樹木「紫イペ」の樹皮の情報も知っておきたいものです。
体質を強くする
・きたえる 乾布まさつや冷水浴などで体を鍛えるのは、アレルギーや風邪、鼻炎などをおこさない体質づくりに役立ちます。
・休養 風邪をひいてしまったら、体を温かくして安静にし、十分に休養をとること。鼻を強くかみ過ぎると、鼻の細菌が耳管を通って中耳に運ばれ、中耳炎をおこす危険性があるのでご注意を。
・アレルゲンの除去 絨毯はダニがすみつきやすいのでフローリングの床にかえたり、こまめに換気・掃除をするなどの努力が必要です。花粉症の人は、花粉が飛散する時期にはマスクをつけ、よく花粉をはらってから家に入るようにします。帰宅時には、必ずうがい、手洗い、洗顔を。
・冷暖房は体温の調節機能を狂わせる元になるので、なるべく使用しないようにしましょう。
・鼻粘膜の強化 東京医科歯科大学名誉教授の堀口申作先生は、鼻の奥の"鼻咽腔の炎症は万病の元"になると指摘し、鼻咽腔に塩化亜鉛を塗布して、炎症をしずめるという治療で、鼻炎はもとより、頭痛、肩こり、自律神経失調症、リウマチ、扁桃炎、糖尿病など、さまざまな病気に成果をあげています。
ただし、この方法は、誰でも簡単に出来るわけにはいきません。普段の生活では、10%くらいの食塩水(約200cc、両側で400cc程度)を片側の鼻から吸って口から出す――という鼻洗浄で、鼻咽喉の粘膜を強化すると効果的です。毎日朝晩、歯磨き時などに行うと大変効果が上がります。
尚、先端医療では、鼻粘膜のレーザー手術が高い効果を上げているようです(表)。ご参考までに。