野菜の効用

とにかく、野菜不足
がん予防には1日5種類以上、800g以上の野菜を!

 野菜をたくさん食べる人はがんや成人病になりにくい――、これはもう常識です。
 アメリカがん研究財団(AICR)は、1日5種類以上、800gの野菜・果物をとることをすすめており、肉類や高脂肪食品の多い米国人がこうした食生活に改善すれば、年に37万5千人のがん患者が減ると予測しています。
 日本の厚生省でも、1日に300g以上の野菜をとろうと呼びかけています。
 しかし、現代人の食生活をみると、1日に300g以上の野菜をとれている人はどのくらいいるでしょう。
 ご自分の食生活をちょっと振り返ってみて下さい。1日に何種類、何百g程度の野菜をとっているでしょうか。

野菜はなぜ体にいいか
||抗酸化物質の宝庫||
豊富なビタミン・ミネラル

 さて、野菜はどうして健康にいいのでしょうか。
 皆さんもよくご存知の通り、野菜にはビタミンやミネラルなどが豊富に含まれています。これらの中には、体内で発がんや炎症の引き金になる活性酸素・フリーラジカルに対抗する作用をもつものがあり、例えば、パセリやほうれん草、ブロッコリーなどに豊富なビタミンCや、胚芽米、大豆、落花生などに豊富なビタミンE、ニンジン、ほうれん草、小松菜などに豊富なベータカロチン(体内でビタミンAに変わる)は、互いに助け合いながら抗酸化作用を発揮します。
 また、ニンニクやネギ、ブロッコリー、胚芽米などに含まれているセレニウムにも優れた抗酸化作用があり、がんを抑制したり、動脈硬化の予防に役立ちます。

注目を集めるファイトケミカル
(植物性生理活性成分)

 さらに、野菜の中にはもっと強い効力をもつと思われる成分が次々と確認され、注目を集めています。それが、ファイトケミカル(植物性生理活性成分)です。
 ファイトケミカルとは、野菜などに含まれる植物性ホルモンや色素、植物性化合物などの総称です。例えば、最近「ポリフェノール」という言葉をよく耳にしますが、このポリフェノールもファイトケミカルの一部です。
 赤ワインやチョコレートなどに含まれ、動脈硬化を予防する効果があると言われるポリフェノールですが、一口にポリフェノールと言っても、実にさまざまな種類があります。
 例えば、玉ねぎやブロッコリーに含まれるケルセチン、大豆のイソフラボン、お茶のカテキン、ブルーベリーのアントシアニンなどがあり、これらの成分はいずれも、優れた抗酸化力をもっています。
 野菜類に含まれる代表的なファイトケミカルを表にまとめました。ここにあげたのはごく一部ですが、野菜にはいかに優れた成分がぎっしりつまっているかがお分かりいただけると思います。
 ビタミン・ミネラルやファイトケミカルなど、野菜に活性酸素を防ぐ成分が多いのには理由があります。
 植物は、毎日強い紫外線を浴びながら成長します。紫外線は、強力な活性酸素・フリーラジカルを発生させる源です。そのため、植物は活性酸素の害から身を守るために、抗酸化成分をたくさん備えているのです。ですから、太陽光線をよく浴びる緑の濃い葉ほど、抗酸化成分が豊富に含まれています。

食物繊維の効果も見逃せない

 また、野菜ががん予防などに優れている原因として、食物繊維の効果も見逃せません。
 食物繊維には、大腸の働きを活発にしたり、便の量を増やして、便通を良くする効果があります。便が腸の中にある時間が短くなるので、腸内で有害腐敗物質が生成されるのが防がれ、さらに、繊維成分が腸内にある発がん物質の濃度を薄めるので、大腸がんになりにくくなります。
 また、食物繊維は、ビフィズス菌をはじめとする腸内の善玉菌を増殖させ、悪玉菌の増殖を抑える働きもあります。

野菜の上手なとり方

・種類・量とも多くとるには
 健康効果をもとめるには、やはり、多くの種類、量の野菜を、バランスよく食べることが大切です。しかし、期待できる量の野菜を、毎日サラダなど生野菜で食べるのは大変です。
 熊本大学医学部の前田浩教授※1は、野菜スープなど野菜は煮て、汁も身も丸ごととろうとアドバイスしています。スープにして加熱すれば、野菜のカサも減りますし、難消化性の繊維も壊れ、消化吸収も良くなります。さらに、野菜の煮汁には有効成分が溶け出すため、生のままの野菜に比べ、抗がん活性が10〜100倍にも高まることが、前田教授の研究で明らかになっています。ビタミンCなど水溶性のビタミン類は加熱30分位で半減しますが、短時間では損失の心配は殆どありません。
 最近は野菜のファイトケミカルなどを集めた機能性食品も開発されてきています。こうした食品を利用するのも効果的でしょう。特に外食の機会が多い方にはおすすめです。
・旬の無農薬野菜を
 また、できるだけ、無農薬で太陽光を浴びた新鮮な路地栽培の野菜をもとめましょう。
 水耕栽培やビニールハウス栽培の野菜は、ミネラル、ビタミンなどの含有量が少ないことが報告されています※2。
 無農薬野菜が常時手に入りにくければ、水で洗い流せる農薬は結構あるので洗浄を徹底すること。キャベツや白菜など巻葉の野菜は(有効成分は青々とした外皮の方に豊富ですが)、外皮1〜2枚は捨てた方が安全でしょう。