紫斑病

紫斑病とは

 紫斑病は皮下出血による紫のアザ(紫斑)を特徴とする病気で、種々のものがありますが、1.血管の異常によるもの、2.血液中の血小板(血液を固める作用がある)の異常によるものに大別されます。
 血管性のものか血小板性のものかは血小板の検査(普通の血液検査)で判定できます。

1.血管の異常によるもの

〈単純性紫斑〉
 原因は不明ですが、一時的に毛細血管の内圧が高まってうっ血しやすくなると起きやすくなります。
 細かい紫斑が下肢に多く現われますが、上肢(太もも)にみられることもあります。
 特に女性では打ち身などの覚えがないのに、青あざが太ももなどに知らないうちに出ることがあり、医学的には女子深在性紫斑と呼ばれます。これも単純性紫斑の一つと考えられています。
 紫斑は大体1〜2週間で自然と消え、粘膜からの出血も血液の異常もなく、臓器障害を起こすこともないので、それほど心配はいりません。但し、隠れた病気が潜んでいることもあるかもしれないので、しばしば現われるようなら医師の診断を仰ぐべきです。
〈慢性色素性紫斑〉
 症状が何年にもわたる慢性の紫斑病で、原因は不明です。細かな点状の紫斑が出たりひっこんだりを繰り返し、次第に固まり集まって茶褐色のシミになるのが特徴的です。
 成人から高年齢者の下肢に多くみられ、丘状に盛り上がったり、かゆみを伴うこともあります。
 生活上の注意としては、下肢に多くみられることから下肢に負担をかけないことが大切で、長い距離を歩いたり、長時間の立ち仕事は避けましょう。下肢の血行が悪いために起きる静脈瘤のある場合は、サポーターの使用など静脈瘤の適切な処置が望まれます。
 止血剤や血管強化剤が用いられ、時に外用のステロイド剤も用いられますが、適度な運動やマッサージ、半身浴などで下肢の血行を良くすることに心がけ、同時に血管を強くする食事・栄養が望まれます。
〈老人性紫斑〉
 老化で血管がもろくなったところに、紫外線などにより皮膚の弾力繊維が老化してくると、外からほんのごく軽い力が加わっても容易に紫のあざが出来やすくなります。
 紫斑は外力(外からの力)を受けやすくかつ日光にさらされやすい腕の外側、手の甲、また背中などに出やすくなります。
 時間が経てば紫から次第に茶褐色になり、そのまま消えていったり、またシミになって残ったりすることもあります。
 治療は特に必要なく、美容上の問題を無視すれば放っておいて良いものです。
〈アレルギー性紫斑病〉
 アレルギー反応(抗原抗体反応)によって毛細血管が傷つき、皮膚にところどころで血液や血漿がもれ出す急性や慢性の血管炎です。
 小児に多く見られる疾患ですが、年長の子供や大人でもみられることがあります。小児では上気道感染後に発症することが多く、溶血性連鎖状球菌との関連が指摘されています。
 症状ははっきりしない腹痛や足の関節がはれた後、紫斑が四肢(上下腕、上下肢)、特に下肢に多く現われてきます。
 内臓や皮膚の病変を起こし、中でも胃腸の病変が起きやすく、それに伴い腹痛や黒色便が出ることがあります。また、皮膚や関節の病変ではジンマシンや特有の触覚過敏、関節痛、腎臓の病変では血尿や蛋白尿が出ることがあります。
 深刻な後遺症はあまり心配ありませんが、その中では腎臓障害が残る頻度が高く腎不全を起こすこともあります。
 以前はリウマチや腸の疾患との関連も疑われていましたが、今は薬による刺激が最も疑われ、原因となる薬の除去が最優先されます。
 生活上の注意としては、初期は安静が最も大事で、そのため入院治療がすすめられます。腎臓病の合併症を引き起こさないように食事は薄味にして香辛料は避け、体を温めるように心がけ、風邪や扁桃炎などの感染症を防ぐよう心がけます。また、腹部の症状が出やすいのでゆるめの着衣で腹部を圧迫しないようにします。
 良くなっても完治は難しく、再発の心配があるので定期的な検査、特に尿の異常に注意します。

2.血小板の異常によるもの

〈特発性血小板減少性紫斑病〉
 自分の体の免疫系が自分自身の血小板を壊してしまうことで起きる"自己免疫疾患"の一つです。
 成人の場合は今のところほとんどが原因不明ですが、小児の場合はウイルス感染から引き続いて起きます。
 血小板は血を固め止血する働きをしますが、この病気では血小板を作る元の細胞で血小板の産生が低下したり、血小板が壊されることで紫斑が四肢、胸、背中などに現われ、さらに、口の中の粘膜出血や鼻血、性器出血など全身の臓器から出血し、下血(肛門からの出血)や吐血(口から血を吐く)がみられます。
 急性のものは1〜2週間で自然治癒しますが、慢性のものになると数ヶ月以上続きます。しかし、一度完全に治れば再発の心配はほとんどありません。
 慢性の治療にはステロイドホルモン剤がよく使われますが、ステロイド剤は副作用の強い薬として知られ、長期に連用すると膵炎、糖尿病、白内障などの合併症を引き起こすケースもあります。
 生活上の注意としては打撲や外傷を受けないようにすることが一番で、吐血や下血など内臓からの出血が疑われる時はいち早く医師の診察を受けます。脳出血の危険もまれにはあります。
※血小板の異常はこの他、さまざまな疾患に伴う続発性血小板減少性紫斑病があります。

食事・栄養療法 〈血管を強くする〉

・ビタミンC
 ビタミンCが不足すると血管や皮膚がもろくなることが知られていますが、これはビタミンCはコラーゲン(体の組織細胞、歯茎、血管、骨、歯の成長と修復に重要な蛋白質)の形成に主要な役割を果たしているからです。そのため、欠乏症を来すと歯茎から出血する壊血病が起きます。
 また、抗酸化作用からは多くのタイプのウイルスや細菌感染の予防に働き、免疫力を強め、紫斑後に残るシミにも有効です。
 また、ビタミンCには、アレルギーの原因物質であるヒスタミンの生成を抑える効果があります。ビタミンCを補うことで、ヒスタミンのレベルが下がることが確認されています。
 ビタミンCは、バイオフラボノイド、カルシウムとマグネシウムと一緒に働いて血管の健康を保つことができます。
・バイオフラボノイド
 バイオフラボノイド類は、ビタミンCが適切な機能を果たすのに必要なビタミンで、毛細血管を丈夫にします。
・ビタミンE
 ビタミンE(アルファートコフェロール)の補充(毎日400〜600mg)で血管型の紫斑病が改善されたという報告があります。
 ビタミンEとビタミンCは一緒にとると互いの働きをより高めます。
・亜鉛
 亜鉛の不足・欠乏と老化による紫斑との関連が指摘されており、老人性紫斑では亜鉛の補充が役立つ可能性もあります。
・総合微量栄養素サプリメント(栄養補助食品)
 ビタミンC、バイオフラボノイドは柑橘類に、ビタミンEは胚芽部に多く、また亜鉛は無精白穀類や貝のカキなどに多いミネラルです。
 しかし、病気の予防や改善には食物からだけではなく、サプリメントで補充することをおすすめします。
 ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は上記したように、互いに相補って働き効果を高め合うので、微量栄養素のサプリメントは単独ではなく、バランスよく総合的に入っている総合タイプのサプリメントがすすめられます。

〈アレルギー・自己免疫疾患を防ぐ食生活〉

 アレルギーや自己免疫疾患は現代病とも言われ、先進国に多い病気です。患者の食事調査などから、「高脂肪・高蛋白・砂糖の多い欧米型の食事」による影響が指摘されており、実際、こうした食事が一般的になってから日本でも急増しています。
 自己免疫疾患の多くは難病に指定されていますが、食生活を本誌がすすめる日本型の食事(3頁参照)に改め、微量栄養素を総合サプリメントで毎食しっかりとるように心がけることで予防や改善が期待されます。
 さらに、サプリメントではDHEAの補充も自己免疫疾患に期待されています(本誌巻頭インタビュー、12頁参照)。