肥満(3)
運動療法・ストレス対策

 成人病で問題となる体脂肪を減らすには運動が不可欠です。今まであまり運動をしていなかった人や、糖尿病や高脂血症などの病気がある人は、医師のチェックを受けた上で、体力に合った適度な運動を行なうようにしましょう。
 また、ダイエットの成否をにぎる重要なポイントとなるのがストレスです。
 前回の食事・栄養療法に「運動療法」と「ストレス対策」を加えて、危険な肥満を解消しましょう。

体脂肪を減らす運動療法
日常的な運動が不可欠

 運動をして脂肪の燃焼を繰り返すと、体が脂肪をエネルギーとして使いやすく、脂肪のつきにくい体質になっていきます。日常的に運動に取り組むことが大切です。
 脈拍が120位になる運動を、1日合計1時間行なうのが目安です。20分づつ3回に分けて行なっても可ですが、少なくとも1回に20分は続けることが必要で、5〜10分程度の短い運動を繰り返してもあまり効果はありません。
脂肪を燃焼させる有酸素運動 体脂肪の燃焼に効果的なのは、酸素を十分に取り入れながら体を長時間動かす有酸素(エアロビクス)運動です。筋肉の中で脂肪酸の代謝に働くのは、持久的な運動で活動する赤筋という筋線維で、脂肪酸の燃焼には大量の酸素が使われます。
 有酸素運動としては、毎日の運動として最適なウォーキングやサイクリング、水の浮力で体への負担が軽くなる水中エクササイズなどがあります。

基礎代謝を高めるレジスタンス運動

 太りにくい体をつくるためには、筋肉を鍛えて基礎代謝を高めるレジスタンス運動が重要です。基礎代謝とは、体温を生産するという生きていくために最低限必要なエネルギー代謝で、筋肉がその働きを支えています。
 中年太りは筋肉が衰えて基礎代謝が低下するためです。
 レジスタンス運動としては、室内で手軽に行なえるダンベル体操やチューブ体操がおすすめです。
 肥満解消には、有酸素運動とレジスタンス運動の両方を上手に組み合わせて行なうと効果があがります。
 運動に重要な微量栄養素 運動は肥満解消や健康増進に役立つ一方、体内でビタミン・ミネラルを消耗したり、万病のもととなる活性酸素を大量に発生させる危険性もあります。運動選手の血中ビタミンE濃度を調べた研究では、活性酸素を消去するために、体脂肪に貯蔵されたビタミンEが大量に消耗されることが分かっています(図1)。運動をする人は特に、ビタミンEをはじめとする抗酸化物質の確保が必要です。
 また、運動をやり過ぎると筋肉や関節をいためたり、疲労や免疫力低下を招いてしまいます。お腹がすくので、つい過食にもなりがちです。
 運動の弊害を避けるためにも、食事はゆっくり特に良く噛み、サプリメントで微量栄養素を確保しましょう。
a活性酸素の消去
 ビタミンA(ベータカロチン)、ビタミンC、ビタミンEは抗酸化ビタミンと呼ばれ、活性酸素消去力が優れています。
 体内の抗酸化酵素の活性化には亜鉛、銅、マンガン、鉄、セレニウムが必要となります。
b筋肉痛や疲労の予防
 筋肉痛や疲労の原因となる乳酸は、糖を代謝するクエン酸回路の過程で発生します。ビタミンB群の働きでクエン酸回路が円滑に行われると、乳酸の生成は抑制されます。マグネシウムやビタミンEも筋肉痛・疲労の緩和に役立ちます。
c免疫力の向上
 微量栄養素の総合的十分量摂取が免疫力を高めます。

ダイエットの成功には 肉体的・精神的ストレス対策を

急激なダイエットで免疫力低下 厳しい食事制限や激しい運動などの肉体的ストレスは、NK細胞などの免疫細胞の活性を低下させることが明らかになっています(図2)。
 ストレスの研究で知られる聖マリアンナ医科大学の星恵子先生は、1ヶ月3kg以上の急激なダイエットは危険だと警告。軽度肥満なら3ヶ月で1kg程度の減量が適当だと指摘しています。

精神的ストレスが摂食異常を招く

 食事療法にしても運動療法にしても、「食べてはいけない」「やらなければ」という強迫観念をもつと精神的ストレスになり、かえってそれがダイエットの行き詰まりを招いてしまいます。
 イライラを感じている時には、"やけ食い"や"気晴らし食い"などの「食べる」という行為で紛らわせがちです。
 肥満の原因として脳疲労(ストレス)説を指摘している九州大学健康科学センターの藤野武彦助教授らは、厳しい食事制限は脳疲労を増やすので、1日1回十分に満腹感を満たす「一日一快食」をすすめています。
 しかし、前回もお話しした通り、一食ドカ食い主義はかえって太るというケースも多くあります。自分にとって長続きする方法をとりましょう。

※一日一快食

1日1回満腹感を得ることで脳疲労を解消し、食欲中枢の本来の働きを取り戻そうとするもので、藤野先生は、ダイエットにありがちなリバウンドもおこらず、約1500人を対象とした研究では、1ヶ月で平均3kg減、半年で95・4%が減量に成功したと話しています。
 a朝食は紅茶や緑茶、みそ汁などの水分食中心、b昼食は補助食品を利用し、お腹がすいたら、リンゴ、そば、うどんなどを食べても可、c夕食は和食を心ゆくまでおいしく食べる。