肥満(1)
肥満の危険性

肥満は成人病のもと

 私たちは食物からエネルギーをとり、余ったエネルギーは脂肪組織に貯金して、体内で必要に応じて利用しています。この貯金が膨大化して体脂肪過剰になった状態が"肥満"です。
 肥満は、外見や美容の面から問題にされることも多いのですが、深刻なのは、糖尿病や動脈硬化、高血圧、高脂血症、心臓病など、様々な成人病の引き金になるという点です。
 女性の場合は、無月経や不妊症になりやすく、妊娠しても高血圧や浮腫などの妊娠中毒症になる危険性が高くなります。
 また、肥満者は標準体重の人に比べて免疫力が低下することも報告されています。
 最近は子供の肥満も増加しており、飽食日本では肥満はますます深刻な問題です。
 今月から3回にわたり、肥満について考えてみたいと思います。

肥満とは

 まず、何を基準に肥満と判定するかというと、国際的に最も広く用いられているのがBMI(Body Mass Index)という肥満度指数です。
 国内でBMIと疾病率の関係を調べた研究では、BMI22前後を境に疾病率が上昇することが明らかになり(図)、日本肥満学会ではBMIの標準値を22として、日本人の理想体重を計算しています。
 しかし、肥満というのは「体の中で脂肪の占める割合が多い」ことなので、一見スマートでBMIが標準値でも、体脂肪率は高い――という"隠れ肥満"もいます。特に若い女性の中には、無理なダイエットで脂肪とともに骨や筋肉まで失い、リバウンド(急激なダイエットの反動で体重が急増する)の際には脂肪だけが増加するというパターンを繰り返すうちに、見た目は以前と同じでも、体の中は脂肪だらけになっていくケースが多いようです。
 成人病との関係で重要なのは体重よりも体脂肪です。成人病発病率は体脂肪率25%を越えると増えはじめ、30%以上になると急増します。
 また、その脂肪が体のどの部位につくかが非常に重要な問題です。

お腹の中にたまる脂肪が成人病の元凶

 肥満には、皮下に脂肪がつく「皮下脂肪型肥満」と、内臓が収まっている体腔内に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の2種類があります(写真)。成人病に、より悪影響を与えるのは後者の方です。
 最近になって、脂肪細胞は単にエネルギーの貯蔵庫としての役割だけでなく、様々な生理活性物質を分泌する働きもあることが明らかになってきました。そして、内臓脂肪から分泌されるそれらの因子が、成人病の発症に関与していることも報告されています。
 例えば、内臓脂肪は肝臓の上流に位置することから、内臓脂肪が分解して脂肪酸が放出されると、それらは直接肝臓へ流れ込みます。肝臓では中性脂肪が産生されていますが、脂肪酸はその中性脂肪の材料になるので、内臓脂肪型肥満の人は中性脂肪が高くなり、脂肪肝や高脂血症になりやすくなると考えられます。
 また、内臓脂肪からはインスリン抵抗性を引き起こすような物質(レプチン、TNF―α)や血栓性疾患の因子となる物質(PAI―1)も高濃度に分泌されており、糖尿病や高血圧、動脈硬化、心筋梗塞などの発症に関与することが示されています。

肥満タイプの見分け方

 自分が内臓脂肪型か皮下脂肪型かを見分けるには、次のような方法があります。
a皮下脂肪の厚さ
 指でお腹をつまんでみて、その厚みが薄ければ内臓脂肪型、厚ければ皮下脂肪型と、おおまかに予想することができます。
b体型
 肥満者の体型を大別すると、お腹から上に脂肪のつく「リンゴ型」と、腰から下に脂肪のつく「洋なし型」があり、前者の方が成人病の危険因子になりやすいと言われます。内臓脂肪型は、上半身肥満であるリンゴ型と一致することが多いので、ウエスト(cm)をヒップ(cm)で割った数値が1・0以上になると、内臓脂肪型である可能性が高くなります。
cCTスキャン
 しかし、a、bともある程度太っている人でしか測定できず、見た目はやせていても実は内臓脂肪型肥満という人も多いので、確実に判定するにはCTスキャンによる診断が必要です。

内臓脂肪の方が減りやすい

 皮下脂肪と内臓脂肪では、脂肪細胞の脂肪のため方が違います。内臓脂肪の場合は、ひとつひとつの細胞がたくさん脂肪をためこみやすく、細胞自体が太る傾向があります。一方、皮下脂肪の場合は、脂肪細胞の数自体が増える傾向があります。
 そのため、細胞の数そのものが増える皮下脂肪はなかなか減りにくいのですが、逆に、内臓脂肪型は脂肪を燃焼させればよいので、食生活の改善や運動が効果的だと考えることができます。
 肥満の解消法については、次号で解説します。