うつ病(1)
うつ病の原因は

ストレス時代の"心の風邪"

 学校や会社、家庭で生じる精神的ストレスや、大気汚染、化学物質、食品添加物などが与える身体的ストレス、コンピュータ社会のテクノストレスなど、私たちを取り巻く環境には様々なストレスが複雑に絡み合って存在しています。
 ストレスに対し、私たちの体は神経系、内分泌系、免疫系を働かせて体を守ろうとしますが、ストレスが大きかったり長期間続いたりすると抵抗しきれず、心身にひずみが生じてきます。その一つがうつ病です。体質や特徴的な性格(一般的にまじめで几帳面、頭が固い、責任感が強い)の人に、外から加わるストレスが誘因となって発症するといわれますが、栄養素の欠乏などの内的要因も大きく影響しています。
 "心の風邪"とも呼ばれ、ストレス社会の現代では、成人の100〜200人に1人が病んでいると言われるうつ病。今月は、ストレス時代の象徴とも言うべきうつ病についてお話しします。

うつ病の形態も様々

 誰でも悩みや不安を抱えて落ち込んだり、ストレスを感じて憂うつになることはありますが、それは一時的で、しばらくすればまた元気を回復するものです。しかしうつ病では、これといった理由がない場合でも、逃げ場のないような重苦しい気分を感じていつまでも精神活動が減退したり、全身倦怠感や頭痛などの身体症状が訴えられたりします。
 最近では、身体症状の方が強いため医師も本人もうつ病だと気付きにくい「仮面うつ病」や、本人がニコニコしているため周囲がうつ病を見逃してしまう「微笑みうつ病」なども多く、うつ病の形態も複雑化してきています。(表1・2)
 女性には、生理前に憂うつ、イライラ、肩こり、腰痛等を感じる「月経前緊張症」や出産後の「マタニティーブルー」、閉経期の「更年期うつ病」など、ホルモンの変動に伴ううつ症状がみられます。また、秋から冬にかけて発病し春に回復する「季節うつ病」というものもあり、これも女性に多くみられます。

うつを引き起こす要因

 うつ症状をもたらす要因としては、次のようなものがあげられます。
a神経伝達系の異常
 神経細胞間の情報伝達にかかわるドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質に異常が生じると、感情や思考、記憶などの脳の働きが障害されます。
b自律神経系の異常
 ストレスを受けると、自律神経の交感神経が副腎からのアドレナリンというホルモンの分泌を刺激し、アドレナリンが血糖値を上昇させエネルギーを高めることによって、体はストレスに抵抗する態勢をつくります。しかし、ストレスの刺激が続いて副腎が疲労したり、副腎の機能を助ける栄養素が欠乏したりすると、ストレスに対する抵抗力が落ちて、脳と身体の活動力は低下します。
c低血糖症
 血糖が一定のレベル以上になると、自律神経の副交感神経がインスリン分泌を促して血糖を下げる役割をします。しかし、未精製の炭水化物がゆっくりと消化・吸収されていくのに対し、白米などの精製穀物や、お菓子、清涼飲料水、白砂糖などに含まれる糖質はすぐに吸収されて血糖値を急激に上げるため、多量のインスリン分泌が刺激されて、逆に血糖値が著しく低下してしまう低血糖症を引き起こします。脳細胞は大量のブドウ糖をエネルギー源として利用しているので、血糖が低下すると精神エネルギーの低下を招きます。
d化学物質、有害金属
 新築家屋やゴミ処理施設から放出される化学物質や、大気汚染・水質汚染などによって体内に侵入する鉛、水銀、カドミウムなどの金属は神経毒性を持ち、神経・精神障害を引き起こします。
 ビタミン・ミネラルなどの各種栄養素は、神経伝達系、自律神経系、内分泌系の正常な働きを維持し、さらに有害金属の害を緩和してうつ病の予防・改善に貢献します。脳・精神の健康に不可欠なビタミン・ミネラルについては、次号で解説します。