クローン病(2)
栄養療法

治療は食事・栄養療法が中心

 1932年に、米国の医師ブリル・バーナード・クローンらによってクローン病という疾患が報告されて以来、その原因は未だに明らかになっていません。腸管から未消化の蛋白質が吸収されることによる免疫異常、アレルギーの一種であることが指摘され、a食餌因子(食生活の欧米化)、あるいはb感染因子(ウイルス・細菌など)、c喫煙、d精神的因子、e環境因子、f化学薬品、g遺伝子的因子などの影響が考えられています。
 原因不明のため、現在のところ根本的な治療法は確立されていません。しかし、症状を抑えながら普通の人と同じように生活をすることは可能で、a症状のコントロール、bQOLの改善、c栄養状態の改善、d腸管外合併症の予防・治療、e精神的サポート等を目的に、各患者さんの症状に応じて内科的治療(栄養療法、薬物療法)や外科的治療(手術療法)が行われています。
 中でも多くの病院が栄養療法を中心としており、一般的には薬物療法、手術療法が主体である医療の現場でも、クローン病の場合は栄養療法が中心となっています。今月は、この一般的な栄養療法について解説します。

栄養障害を来しやすい

 本来、各種栄養素はほとんど小腸で吸収されるため、主に小腸に病変が発生するクローン病では、栄養喪失や吸収障害がおこりやすくなります。下痢によってもたくさんの栄養素が失われますし、下痢や腹痛を警戒して食事の量が減ってしまうことで、普段の食生活からも体に必要な栄養素が十分にとれなくなってしまいます。
 また、一般的に医師がクローン病に使う薬剤スルファサラジンでは、葉酸と吸収部位が拮抗するため、葉酸欠乏性貧血をおこしやすいことが報告されています。
 このように、クローン病では諸々の影響で栄養障害をおこしやすく、それを改善するためにも、栄養療法が重視されています。さらに、栄養補給は栄養状態の改善だけでなく、クローン病の病変や症状自体の改善も期待して行われます。

栄養療法の実際

 腸に病変があるクローン病では(図)、a腸を介さずに体に栄養を与え、腸に安静を与える方法(中心静脈栄養療法)と、b腸管そのものに栄養を与える方法(経管栄養療法、鼻から管を通して腸に栄養を送り込む)の2つがあります。
 aの場合、栄養吸収の要である小腸を回避して体に栄養を取り込むのは、やはり長期的には問題があり、6ヶ月を経過するとbに比べ効果が劣るとのデータも報告されているので、あまり長くは続けられません。
 多くの病院で栄養補給に用いられるのは、成分栄養剤エレンタール(表)です。この他に患者さん各自の病態に合わせて、経口のサプリメントが補助的に用いられる場合もあります。
 成分栄養剤エレンタールには次のような特徴があります。
a蛋白質の代わりにアミノ酸を使用
 蛋白質ではなく、アミノ酸の段階にまで分解したものが含まれています。アミノ酸に分解されていない未消化の蛋白質が腸の炎症部位から吸収されると、それが抗原となってアレルギー反応がおこり、クローン病の発症・悪化につながります。
b低脂肪
 脂肪は腸管の蠕動運動(便の排出を促進する筋肉運動)を著しく引き起こし、また、消化吸収が悪いため、クローン病では下痢や腹痛の原因になります。消化されずに腸内に残った脂肪が腐敗発酵して腸壁に悪さをするのではないかとも言われ、脂質は非常に少なくされています。
c低残渣
 消化吸収されにくいものは極力減らし、腸内に異物が残るのを防ぎます。