クローン病(1)
クローン病とは

第28回日本消化吸収学会総会記念市民公開講座
「クローン病患者さんのQOLと医療」

 5月25日、日本消化吸収学会(会長・日本大学医学部第三内科 荒川泰行教授)主催による市民公開講座「クローン病患者さんのQOLと医療」が、日本青年館大ホールにおいて開催されました。
 難病にも指定されている炎症性腸疾患「クローン病」は、食生活の欧米化に伴って日本でも増加しています。治療法はまだ確立されておらず、再発を繰り返しながら慢性的に経過するこの疾患では、社会生活や家庭生活における患者さんたちのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上が大きな課題で、それを支える医療側の取り組みも重要です。
 今回の市民公開講座では、内科医や外科医、看護婦、栄養士、保健婦、ソーシャルワーカーなどによる活発な討論が行われ、医師達が模擬患者役と医師役に分かれて演じる「ロールプレイによるクローン病Q&A」(写真)などユニークな企画に、会場に集まった多くの医療スタッフや患者さんたちは熱心に耳を傾けていました。
 クローン病については、本誌252(94・12)号、菅沼内科消化器科医院の菅沼登先生のインタビュー記事でも取り上げていますが、その後の反響は大きく、クローン病の増加、患者さんたちの不安がうかがえます。そこで、この市民公開講座の内容を踏まえて、クローン病についてお話ししたいと思います。

緩解、再発を繰り返す 慢性疾患

 現在、日本には約一万四千人のクローン病の患者さんがおり、毎年約15%の割合で増加しています(図1)。この分でいくと西暦2000年には2万人に達する見込みです。発症年齢をみると、10代後半〜20代の若者、特に男性に多くみられます(図2)。
 クローン病というのは、消化管に潰瘍や裂け目(裂溝)ができる病気で、症状が比較的落ち着いたり(緩解)、再燃・再発したりを繰り返す慢性疾患です。平均余命50年以上と、この病気自体で死に至ることはまれですが、その分病気と長くつきあっていく覚悟が必要でもあります。
 消化性潰瘍はふつう粘膜の表面だけに起こる炎症ですが、クローン病の場合は、粘膜の下層や腸壁など、全層にわたって炎症がおきるのが特徴的です。また、潰瘍性大腸炎は大腸全域におこりますが、クローン病の病変は口唇から肛門まで消化管のどの部位にも生じ、特に小腸と大腸に多く発生します。
 腸管病変だけでなく、様々な腸管外合併症もあります。例えば、虹彩炎(光を受けるとまぶしく感じる)や結膜炎などの目の障害、結節性紅斑、壊死性膿皮症などの皮膚病変、アフタ性口内炎、関節炎、胆石、腎結石、静脈血栓などがあり、特に学齢期に発症すると、この病気のために栄養障害をおこして成長が阻害されやすくなります。

下痢・発熱・腹痛が3大症状

 主な症状は次の通りです。
a下痢 症状がひどくなると、夜間にも下痢を起こします。
b発熱 通常は微熱ですが、肛門に膿がたまるなどして感染症をおこすと、高熱をきたします。
c腹痛 食後に痛くなるのが一般的です。
d肛門病変 クローン病の60〜85%が難治性痔瘻や肛門周囲膿瘍などを合併しています。若い人に肛門病変がある場合は、クローン病を疑ってみるべきだとも言われます。
e下血
f体重減少 a〜eの症状が長く続くと、体重が減少してきます。