パーキンソン症候群

初老期からの神経疾患

 1817年、イギリスのJ・パーキンソン医師によって、手足のふるえ、筋肉のこわばり等を主症状とする病気が初めて報告されました。これが慢性進行性の脳神経疾患、パーキンソン病です。
 パーキンソン病は50代前後に多く、高齢者では100人に1人程度と、脳神経変性の疾患としては割と頻度の高い病気です。
 主な症状は次の4つです。
a振顫(手のふるえ)じっとしている時にふるえが強くなり、何か動作をしようとすると止まります。
b筋固縮 筋肉が硬くこわばり、関節もカクカクと歯車のように動きます。顔は無表情、まばたきも少なくなります。
c寡動 動作が緩慢になります。歩行時には手の振りが小さく、足を引きずるようにして小刻みに歩きます。
dバランス障害 姿勢は前かがみになり、体を傾けると転倒しやすくなります。歩行開始時に足が出にくくなったり(すくみ足現象)、前のめりの姿勢を立て直せないまま小走りに突進する現象もみられます。
 このほか、顔が脂ぎる、便秘、起立性低血圧などの自律神経機能不全がみられたり、また、精神的には抑うつ的になりがちです。10〜30%は痴呆を併発するといわれます。

発病のメカニズムは

 脳の中脳の黒質にはメラニン色素を含む神経細胞があり、ここでは神経伝達物質の一つであるドーパミンがつくられています。この細胞が何らかの原因によって変性・萎縮するとドーパミンの産生は減少、代わって別の神経伝達物質が多くなり、神経活動のバランスが崩れてしまいます。その結果、神経間の情報伝達がうまくいかなくなって運動障害がおこると考えられています。
 しかし、なぜ神経細胞が変性してしまうのか、くわしい仕組みは明らかになっていません。
 一方、脳炎や脳血管障害、一酸化炭素中毒、マンガンなどの重金属中毒、向精神薬の副作用など、何らかの原因によって黒質の神経細胞が変性した場合にも、パーキンソン病と同様の症状が出ます。
 原因不明のパーキンソン病に対し、これらを症候性パーキンソン病といい、両者をまとめてパーキンソン症候群と呼んでいます。

病院の薬物療法

 治療には、一般にレボドーパという薬が使われています。これはドーパミンの生体内前駆物質で、脳内で不足しているドーパミンを補うものです。
 これによって、症状はかなり良くなりますが、吐き気や唾液過多などの副作用をはじめ、あまり長期間にわたって使用し続けると効果が落ちるため、他の薬との併用で症状のコントロールを図らなければならないのが現状です。
 なお、原因が明らかであるパーキンソン症候群の場合には、もとになっている病気の治療と並行してパーキンソン病の治療がおこなわれます。薬物性のパーキンソン症候群に関しては、休薬によって改善が可能です。

症状の改善、治療成果の向上に役立つビタミン、ミネラル

 パーキンソン病の治療に有効な微量栄養素としては、まずビタミンBがあげられます。10〜100mg/日のビタミンB投与で、振顫・筋肉の硬直が減少、歩行の安定にも効果を発揮することが報告されています。
 なお、前述のレボドーパを服用している場合、Bの摂取がレボドーパの効果を打ち消す可能性があります。しかしこれは、Bに亜鉛を補足することによって防ぐことが可能です。また、ビタミンBの摂取に際しては、Bだけを大量に摂取してもかえってマグネシウム欠乏による弊害を招きかねないので、マグネシウムもバランスよくとることが必要です。さらに、B節約作用をもつビタミンB群も併せてとり入れるとより効果的です。
 ビタミンCにはレボドーパの副作用を軽減する作用があります。パーキンソン病の患者にレボドーパとビタミンCを与えると、副作用の唾液過多などが抑えられ、さらに振顫や運動障害も少なくなりますが、レボドーパに偽薬を加えただけでは体調の悪化は防げないことが確認されています。レボドーパの治療効果を上げるためには、ビタミンCの補足も不可欠でしょう。
 このほか、メチオニンなどの必須アミノ酸やオクタクサノールなども、筋肉のこわばり等の改善に役立つことが報告されており、パーキンソン病対策として期待できます。
 ところで、マンガンを大量に曝露する鉱山労働者などには、マンガン中毒による症候性パーキンソン病発症の危険性があります。しかしこのマンガンは、不足によっても振顫などのパーキンソン症状を引き起こしますので、適度なマンガン補給は大切です。マンガンは神経と筋肉の興奮の伝導には不可欠で、マンガン欠乏による振顫の患者に対しては、マンガンの補給が大変効果をあげています。また、マンガンはコリンの代謝にも働きますが、コリンにも振顫の改善効果があります。

日常生活での心掛け

a便秘を予防する
 パーキンソン病ではもともと便秘の傾向が強いうえ、治療にレボドーパを使用している場合は、その副作用でも便秘になりがちです。そのため、普段からイモ類や海草類などの食物繊維の豊富な食事をとるよう心掛けて下さい。味噌やしょうゆなどの発酵食品や、たまねぎ、ゴボウなどに含まれているオリゴ糖も便秘の解消には効果的です。また、便を軟らかくする作用のあるマグネシウムの補給も大切です。
b可能なかぎり体を動かす
 運動機能の低下を防ぐため、身のまわりのことはなるべく自分でし、意識的に体を動かす習慣を身につけましょう。
c積極的に外出し、人と会う
 パーキンソン病では抑うつ的になりやすい傾向があります。そのため、積極的に外出したり、友人に会ったりして、精神的刺激を保つようにして下さい。
 この病気の進行は比較的ゆっくりですので、症状を悪化させないよう気をつけつつ、じっくり治療に取り組みましょう。決して悲観的になることはありません。