不妊症

不妊症が急増している!! C 急増の背景に、食生活の乱れからくる体質の劣化

 排卵誘発剤をはじめ、レーザーで卵子に穴を開けて精子の通り道をつくる顕微授精、夫以外の精子を用いる非配偶者間人工授精(AID)――など、最近の不妊治療の進歩には目をみはるものがあります。少産化が進む一方で、こうした医療技術の進展は「子供が欲しいのにできない」という悩みが万古不易、いかに切実なものかを物語っています。
 今、不妊症は急増傾向にあり、背景には晩婚化や少子化にともなう子宮内膜症の増加がある他、食生活の乱れからくる体質の劣化が指摘されています。この根本にメスを入れない限り、強引に卵子に受精させて仮に妊娠・出産したところで、母子共々、トラブルにまきこまれるリスクが懸念されます。
 実際、不妊治療の進歩は多胎、極小未熟児、子宮外妊娠の急増||など新たな母子保健の問題を生み、子供を望む親にとっても生まれる赤ちゃんにとっても決してバラ色の技術とはいえないのが実情です。
 私たちは、不妊症の急増は人間の種の存続が危機に瀕していることの警告であり、これを打開するには仮に最新医療技術のお世話になるとしても、食生活の改善から歩を進めるほかにないと考えています。

精子の数の減少と、 精子の生命力の低下

 一般に、正常な夫婦生活があっても子供ができず、その期間が3年以上(2年以内に90%が妊娠)に及ぶ状態を不妊症と言い、原因が男女のどちらにあるかによって、男性不妊症、女性不妊症と分けられます。そのうち約50%は男性側に問題があると言われています。
 男性の場合、1ml当たりの精子数が2千万個以下になると不妊症と診断されます。精子数は年々減少する傾向にあり、昨年発表されたフランスの研究者の報告でも、健康な男性の精子数がこの20年の間に3分の2に減少しているということでした。
 加えて、精子の生命力自体が衰えてきていることも男性不妊症における大きな問題になっています。
 不妊症の検査の一つに子宮の粘液と膣の中の精子との適合性を調べ、精子の数や運動性を確認するヒューナー・テストと呼ばれるものがあるのですが、この検査では、膣内で適合性を欠き動けなくなっている精子が増加している傾向が明らかになっています。
 精子の数が減少し、さらにその生命力が弱くなって運動できないものが増えているのでは、卵子と結びつく確率は限りなく低くなってしまいます。最大の原因は女性の場合と同じく食生活の不適合にありますが、それは後述するとして、男性不妊症でまず注意すべきはその下着のあり様です。
 精子を生み出し貯蔵をしている睾丸を収納している陰嚢は、何故、体外ともいうべき位置にぶら下がっているのか? これはラジエター機能を発揮させて、低温を保つためと考えられています。
 それなのに男性の下着の形態の一つにブリーフがあるのはいかがなものでしょうか。
 男性器をすっぽりと覆うブリーフは陰嚢を温めることで、精子の機能を低下させる働きをします。男性不妊症を解決するにはまずは風通しの良い下着、理想的には越中フンドシがベストですが、とりあえずはトランクスなど風通しの良い下着にすべきです。
 他に、酒、タバコ、社会的ストレスなど男性に多く見られる不摂生やストレスが、こうした精子機能の低下を招いていることが指摘されています。

精液はミネラルの宝庫

 精液中には、他の体液に比べて微量元素が高濃度に存在します。これは精子が正常に機能するためにミネラルが必要だからです。
 下着を風通しの良いものにし、酒やアルコールを慎んでも、それでも検査の結果、男性に問題ありといわれたら、ミネラルが総合的に入っているサプリメントをとることを提案します。加えて、次に説明するように、特に重要なセレニウムはセレン摂取用サプリメントを加えて補給すると良い結果が得られるかもしれません。
・セレニウム
 セレニウムは精子形成に重要な役割を果たしていることが知られており、順天堂大学医学部の千葉百子先生の研究では、同大付属病院の不妊外来を訪れる精子数の少ない男性の、精液中の微量元素の濃度を測定すると、セレニウムの濃度が低くなっていることが認められたということです。
 さらにセレニウムには水銀やカドミウムなどの毒性を消す作用がありますが、動物実験ではこれらの有毒金属を過剰に投与すると、視床下部|下垂体|卵巣|子宮系に悪影響を与えることが報告されています。人間の場合にも、有毒金属を知らないうちに摂取することが不妊因子となる可能性は十分にあり得ますので、その意味からもセレニウムが不妊症治療に果たす役割は大きいのではないでしょうか。
・その他のミネラル
 この他ミネラルでは、カルシウムやマグネシウムは精子の運動性と関係があり、スズや亜鉛は前立腺や精巣などの実質器官に必要とされ、またマンガンは性ホルモンの産生に関与していることが知られています。これらのミネラルは総合的なサプリメントを毎食きちんと摂っていれば十分です。

女性不妊症の陰に、 低体温症からくる ホルモンバランスの不調

 卵子に対してはその生命力、受精能力を検査する方法はありませんが、精子の生命力が低下しているのと同様に、卵子の生命力も衰えてきている可能性が高いと思われます。
 女性不妊症の原因の一つとして、ホルモンバランスの乱れがあります。これには、ストレスや急激なダイエットなども大きく関係していますが、不妊症に悩む女性の共通点として、低体温症とそれにともなうホルモンバランス失調があることが指摘されています。
 ホルモンの働きによって、女性の体には約1ヵ月を周期とするリズムが起こります。
 基礎体温で見ると、1ヵ月の間には低温期と高温期があり、低温期の間は卵胞ホルモン(エストロゲン)が排卵に備えて子宮内膜を厚くし、排卵が起こると黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されて高温期へと変化します。
 このように、排卵というのは低温期から高温期への転換ポイントになっているのですが、排卵も起こらず、一年中低体温という女性が今増えて、問題視されています。
 健康な女性の基礎体温は、低温期でも36・5度くらいはあるのが普通ですが、低体温症のひどい人になるとこれより1度も低くなっています。
 私たちの体はすべて酵素の働きで生命活動が営まれているのですが、酵素は正常の体温より1度も低くなるとその活性が大幅に下がるものがほとんどです。
 多種多様な酵素が満足に働けなくなるほどの低体温は、更に酵素の働きを悪くさせ、悪循環的にトラブルを拡大していきます。低体温の状態が長く続くとホルモンの分泌も衰え、卵巣機能は低下し、やがて無月経、無排卵を経て、最終的には不妊症へとつながります。
 冷え性や体がだるい、疲れやすい、朝起きても疲れが残っている――等の症状を訴える低体温症の女性は、明らかに不妊症の予備軍なのです。
 低体温状態が引き起こすホルモンバランスの乱れは、無自覚流産も引き起こします。普通、卵子が受精すると、黄体ホルモンの働きによって受精卵は子宮内膜に着床します。しかし無自覚流産とは、子宮の温度が低いことも原因となって受精卵が子宮内膜に着床せず本人には全く自覚のないうちに流産してしまうもので、この場合もそのまま放置しておくと不妊症になる可能性があるので要注意です。

低体温症を招く食生活

 このように基礎体温が低体温に傾いてしまうのは、卵・牛乳・肉などの動物性食品、化学添加物や化学調味料の多いインスタント食品やファーストフード、白砂糖をたっぷり使った菓子類が元凶となります。
 白砂糖は生理痛の原因でもあり、組織をゆるめる典型的なものです。さらに白砂糖の摂り過ぎはビタミンやミネラルを浪費することにもつながります。甘味料としては、調理に栗、カボチャ、レーズン、玉ねぎ等を上手に用いるようにしましょう。
 果物は自然の産物ですが、最近は糖分を多く含むように改良されているので、砂糖同様、不妊症にとっては危険な食べ物となっています。
 また野菜も、冷え性の人や病気の時などは生食は避け、煮てその煮汁もいただきます。油の摂り過ぎも冷え性を招くと言われるので、加熱調理は煮たり蒸したりすることをお勧めします。
 食品添加物は農薬や化学肥料のように体の中で活性酸素を過剰に生みだす中心物質として知られているので、難病、奇病、奇形の原因とも考えられています。そのため、低体温症を引き起こして不妊症のリスクを高めるばかりでなく、せっかく妊娠することができても、妊娠初期に食品添加物の多い加工食品を摂取していると、胎児の器官形成に悪影響を与える恐れがあります。因みに市販のジュース類には防腐剤、安定剤、着色料、香料などが大量に使用され、また砂糖、人工甘味料もたっぷり含んでいます。
 動物性食品も低体温症の引き金になります。動物性食品は一般に体を温めるとされていますが、動物性食品が低体温症の引き金になるのは、今の卵・牛乳・肉を食べて育っている子供たちを見ればすぐ分かります。子供の体温も昭和30年代に比べると約1度低いといわれます。試しにご家庭のお子さんの体温を計ってみて下さい。昔は36・5度が相場だったのに、今は約1度低いのです。体に合わない動物性食品は体温を下げる証拠です。

理想的な熱源は でんぷん質のものを よく噛んで

 人間は、もともと草食動物の出身ですから、如何に長い間、雑食生活をしてきたからといって、植物食が一番体に合っているのです。特に日本人の場合、お米、麦、芋といったでんぷん食を梅干などの助けを借りて、しっかりと唾液を出して、時間をかけてよく噛めば、順調にブドウ糖に変わります。これこそが私たちの体にとって理想的な熱源です。
 日本人を含むアジア人は昔から、熱源の約8割はでんぷんで摂ってきて、しっかりと体温36・5度を維持し、疲れ知らずだったのです。この体温が維持できれば、体の中の酵素は本来の姿どおり連鎖的に働き、ホルモンの生産・分泌も順調にいきます。
 こういう食生活にして、頭より体を動かす労働を毎日適度にしていれば、嫌でも赤ちゃんは次々とボロボロと産まれてきます。頭脳労働においまくられるとおのずとストレスはたまり、赤ちゃんは出来にくくなります。仕事に出るから、当然頭も気も使いすぎ、ストレスがこうじるのです。
 稼ぎはお父ちゃんに任せて、たとえ少なくともいただいてくるお給料をありがたく預かって、その範囲内でやりくりをして、「お父ちゃん、お父ちゃん」と夫をたてて、自分は朝から麦ご飯、梅干、味噌汁、煮野菜プラス微量栄養素の総合的なサプリメントで済ませ(お父ちゃんだけには魚少々足してもよし)、家中の床を固く絞った雑巾で(もちろん洗剤は一切使わず)四つん這いになってふき掃除、便器もかがんでピカピカに磨きあげ、買物は歩いて行き(途中の喫茶店でケーキ付コーヒーセットなどもってのほか)、洗濯はタライを持ち出して洗濯板を使い、マルセル石鹸でゴシゴシ(途中でゴロンとなっ・br> トテレビを観るなどとんでもない)。
 こういう生活こそ、赤ちゃんが欲しいだけ授かる生活だということに何故気付かないのでしょう?動物性蛋白質を良いと思い込んで摂りすぎ、体を動かさないことこそ、女性不妊症になる元凶です。

生殖能力を衰えさせる 飽食と化学添加物の害

 このように、不妊症増加の背景には、男女ともやはり食生活の大きな変化があります。
 第一に、動物性蛋白過剰、カロリーオーバーの飽食の食生活が生殖能力を低下させています。卵や牛乳、肉などの動物性蛋白質の摂取が奨励されてきましたが、その結果、従来の日本人の体質にあった食生活は崩壊し、アレルギーや成人病など多くの病気に悩まされるようになりました。
 植物も、肥料をやりすぎると花が咲かなくなったり、時には枯れてしまうことも良く知られています。動物も同じです。飽食で栄養過多の状態が続くと、種を保存するための本能的な働きが弱り、生殖能力が衰えてしまうのです。
 第二には加工食品やインスタント食品、甘味料や化学調味料など、化学添加物の大量摂取が細胞内のミネラルバランスをくずして精子の生命力を弱めていることが考えられます。
 今日の食生活では、化学添加物を摂らないように注意していても、毎日20〜30種類以上は体内に入ってきてしまうと言われています。体内に蓄積された化学添加物は、徐々に細胞の生命を奪っているのです。

生殖能力を高める微量栄養素

 これまで述べた様に、不妊症対策としては、不妊症体質をつくる誤った食生活全般を改善することが第一です。
 微量栄養素としては、男性不妊症の項でもふれたセレニウムや亜鉛などのミネラルが生殖能力を高めるものとして知られています。
 ビタミンではビタミンEが、不妊、冷え性を改善するビタミンとして有名です。欧米女性に冷え性が少ないのは、ビタミンEが多く含まれる麦類や豆類をたくさん食べるからだと言われています。ビタミンEには末梢血管の血流を良くする働きがあり、学名の「トコフェロール」は、ギリシャ語で「妊娠を維持する油」という意味の言葉から由来しています。
 なお、妊娠中のビタミンAの過剰摂取が先天異常児の発生に関係があるとされ、厚生省は妊娠前3ヵ月から妊娠初期3ヵ月の女性に対し、医薬品で5千IU以上、健康補助食品で1万IU以上の摂取を控えようと言っています。
 大抵のサプリメントは心配ありませんが、それでもサプリメントの摂取にあたっては、よく含有量を見て一日の摂取量に注意して下さい。
 尚、ビタミンAの前駆物質であるベータカロチンは、体内でビタミンAが不足しているときにビタミンAに変換されるものなので、ビタミンA過剰症の心配はありません。

不妊症でも 妊娠可能とする医療技術

 以上の根本的対策をこうじても、すでに大人になるまでの間に、たっぷりと卵・牛乳などを摂り続け、必要な微量栄養素を摂らずにくると、卵巣や卵管、子宮などの形態(器質)異常が生じて、残された妊娠可能期間には回復不能ということもあります。
 ひと昔前ですと、「赤ちゃんは諦めて下さい」というような異常であっても、不妊に悩む人を救いたいということで、とにもかくにも強引に妊娠させる小手先の技術が開発されてきたことも事実です。
 夫婦の精子と卵子を上手に取り出して、ガラス容器の中で受精させ、4〜8つ程度に卵割した受精卵を妻の子宮にそっと着床させる方法など、いくつものバリエーションが考えられます。精子がさっぱり元気がなくても卵管が駄目になっていても、夫婦の間の赤ちゃんが誕生する可能性はあります。
 しかし、100%うまくいくわけではなく、途中での流産を防ぐためにも縷々述べた食生活の根本的改善は是非おざなりになさいませんように。
 非常事態を乗り越えるためには、この手の情報(新聞、週刊誌、婦人雑誌、単行本に比較的よく出ている。技術開発の速度は速いので閉経期まではあきらめなくてよい)の収集にもおさおさ怠りのないように。