花粉症にはこうして対処

花粉症、私自身の体験

 昨年(95年)は花粉症のあたり年でした。94年の夏、たいへん暑い毎日が続き、杉の木が沢山の花粉をもち、その飛散量が格段に増えたからだといわれます。
 その中で、本誌が提唱する食生活に変えた方の中からは、例年おこる花粉症が何故か今年は起きない、ありがたい、まわりは花粉症花盛りなのに…というお声がずいぶんとあがりました。
 花粉症のすごさ、つらさというのはなった人でないとなかなかわからないものがあります。
 かくいう私自身、今から約8年ほど前、2年連続ですごい花粉症に悩まされました。
 はじめは花粉症だなど夢にも思わなかったのです。とにかくひどい喘息様気管支炎で、1週間位仕事を休んでゴロゴロしていたのですが(疲れからくる風邪だと思っていた)、どうしようもなく、近所の耳鼻咽喉科に行って飲む抗生物質をもらい、蒸気を吸入し、ルゴールを咽喉に塗ってもらい、約10日位でやっと下火になったのです。
 蒸気を吸入している時、窓の外の柳の木の葉が芽吹いてきたのが印象に残っていました。
 そして次の年、また同じようになったのです。やはり柳の木が芽吹く時です。
 2年目のその時やっと、アッこれは花粉症だと気がついたのです。
 それまで、ずーっと健康で日々を過ごし、花粉症なんて起きたこともなかったので、突然花粉症に悩まされるなんて夢にも思っていなかったのです。
 そうか!前年まで何ともなくても突然なることもあるとは聞いていたがこれだったんだ、と思ったことでした。
 それにしてもひどい症状でした。すぐマスクを買いもとめ、花粉をできるだけ吸い込まないように気をつけ、ビタミン、ミネラル等々の微量栄養素のサプリメントの摂取も定期的に摂るように心がけましたが、やはり時期がくると少々鼻づまりが起こりやすく鼻水が出やすくなり、喉も何となく腫れっぽくなります。
 しかし、私自身、今ではひどい花粉症から解放され、人様には殆ど分からないようになった昨今です。
1
鼻づまり、鼻水、
くしゃみ、目のかゆみ
3
 花粉症には四大症状といわれるものがあります。
 鼻づまり
 鼻水
 くしゃみ
 目のかゆみ||です。
 花粉は2月〜4月の杉花粉が代表的ですが、ブタクサ(夏〜秋)、イネ科植物(初夏)、ヨモギ(秋)等いろいろあります。
 これらが自動車等のディーゼルエンジン排気ガスと一緒に鼻の粘膜にとりつくと特に発症しやすくなるといわれています。
 花粉は晴れて風が強い日の、日中11時〜3時頃が一番飛散量が多いといいますから、敏感な人は、マスク、眼鏡等の花粉症グッズに頼りたくなる気持ちはよくわかります。

花粉症は鼻粘膜の炎症から

 花粉が飛散する時期は皆が花粉を鼻から吸い込んでいるわけで、花粉症の人だけが鼻の粘膜に花粉がとりついているのではありません。
 ある人がクシャン、クシャンとし、別のある人は平気なのはどういうわけなのでしょうか?
 それは鼻の粘膜に炎症が起きているかどうかの違いなのです。
 炎症を起こしている粘膜というのは透過性といって本来はそこを通さない筈のものを通してしまっているのです。つまり粘膜が生体にとってのバリア(防御壁)の機能を果たさなくなっているのです。
 粘膜部から花粉が体内に侵入してくるとなると、もし、ぬれた地面に落ちれば、やがて杉の木の芽を出すほどの異蛋白に富んだ抗原(アレルギーの元となる物質、アレルゲン)がストレートに(分解されず)入ってくるわけですから、免疫のシステムにとっては当然排除すべき対象ということで、急いでIgE抗体がつくられ、お定まりのアレルギー反応が起こりはじめます。
 すなわち抗体がとびだした肥満細胞等からはヒスタミンとかロイコトリエンがかなり出されるので、まずひどい鼻づまりが起こり、鼻水が出てクシャミが連続的に起きます。
 更にその悪影響が目にいけば、目はかゆくなり、喉から気管支を刺激すれば喉の腫れやアレルギー型の喘息が起きます。
 涙が鼻の中に出てくるように、あるいは飛行機などに乗った時におこる気圧変化による耳の異常があくび一つで治るように、鼻は目や内耳と密接につながっていますから、花粉症はどうしても周辺に炎症がひろがる傾向を持ちます。

鼻炎は万病の元

 花粉症は鼻炎を起こす箇所によっては万病の元ともいわれます。
 この図のあたりは鼻咽腔といわれ、ここに炎症を起こしていると、炎症につきものの発熱はその上部至近距離にある脳下垂体(生命の座ともいわれる)等、脳に重大な悪影響を及ぼし、ホルモンの分泌、中枢神経の活動等を混乱させて免疫機能を低下させるので万病の元になる、といわれているのです。
 よく、慢性的に鼻炎を起こす蓄膿症になると集中力を欠いて頭が悪くなるなどと昔からいわれてきましたが、このように考えると、鼻の炎症というのは、あだやおろそかにはできません。
 この鼻咽腔炎症は万病の元になると警告を発しておられるのは、杉花粉症を日光杉でみつけ、花粉症についても著述の多い日本医科歯科大学の斉藤洋三教授の指導教官をしておられた堀口申作同大名誉教授です。堀口先生によると、日本人の90%以上が何故か鼻咽腔に炎症をおこしているというのですから、要注意です。
 花粉症っぽいなと思ったら、まず鼻の炎症を鎮めることを考えましょう。

腸の炎症も

 花粉症で悩んでいる人の、花粉がその人のどこから入ってきたかを追求してみると、大方の予想を裏切って、鼻から入ってきた花粉は実は10%〜20%程度で、大部分は腸から入ってくるということもわかっています。
 つまり、その人が食べる物、飲む物に知らずしらずのうちに花粉がふりそそいでおり、そうとは知らずに食べるとアレルギー体質の人の場合では、食物アレルギーの一種として花粉症が起きているわけです。
 一般にアレルギーの8割以上は食物アレルギーといわれており、それは食物中の蛋白質が消化の過程で次第にアミノ酸になっていきますが、それがまだ分解途中のポリペプチドの段階で腸の粘膜から体内に入り込んできたとき、これに対する抗体ができてしまってアレルギーとなるといわれています。
 花粉も、まわりを難消化性の殻でくるまれていると、案外と消化が難しいということがあるかも知れません。
 それにもまして花粉症は小さい頃から次々と形態をかえて起こるアレルギーマーチの一つとしてあらわれることが多いのです。それはずっと腸の一部で炎症を起こし続けている人に起こるのです。炎症を起こした粘膜に透過性があるというのは、鼻の粘膜だけでなく、腸の粘膜についても言えるのです。
 妊娠期間中、母親が牛乳を飲んでいるだけで胎児に牛乳に対する抗体ができる危険性があるといわれます。
 生まれてからも、母乳を与える母親が牛乳を飲んでいたり、粉ミルクを与えただけで赤ちゃんはアレルギー体質になっていきます。
 赤ちゃんの腸は未熟ですから特に炎症がなくても、完全にアミノ酸に分解される前の段階で吸収されるので、一才のお誕生日までに牛乳に対するアレルギーが生まれてしまう子が多いのです。
 この難消化卵白(蛋白)が腸に炎症を起こさせるのです。発生史学的に見ても腸は免疫組織としての側面を持っています。
 一才過ぎたら卵(特に白身)が強力なアレルギー源になります。卵、特に蛋白質は数週間でヒヨコになるものですから、もともと本籍「草食動物」、現住所「雑食生活」といった人間のやわな消化液ではうまく消化(アミノ酸に分解)できないのです。
 あちこちに起きるアトピー性皮膚炎や小児喘息がおさまりかける頃、アレルギーマーチの一つとして花粉症が起きるというわけです。アレルギーマーチとしては最後は喘息による落命です。立派な大人が医者も手のほどこしようがないといわれる激しい喘息で不本意にもこの世を去っていくケースは日本だけでも年間六千人もあるそうです。
 その一歩手前が花粉症だというのですから要注意です。
 医者が書いた花粉症の本はどうしても対症療法中心で、やれレントゲンで鼻中隔彎曲かどうか調べろとか、ステロイドホルモン剤をシュッとやれとか、血管収縮薬を点鼻せよとかの項目があります。
 そんなことを考える前に花粉症もまた食物アレルギーの一種という認識をもって、その根本的対策をたてる方が先です。
 アレルギーに対しては本誌96年3月号に、下関中央病院の永田良隆小児科部長が、インタビューに応じて詳しくわかりやすく話して下さっています。
 お読みでない方は是非ご購読いただきたいと思いますが、要点は昭和30年代の和食生活にもどり、卵、牛乳、油(動物性、植物性を問わず)を大幅に減らせばたいていの食物性アレルギーは解消するというものです。
 花粉症の人は是非この教訓を生かしてほしいものです。

微量栄養素と花粉症

 私どもの基本的な考え方は二つです。一つは命のもとは食べ物、一つは万病のもとは(体の中で過剰に発生する)活性酸素ということです。
 人間たるもの、本来の食性にもどって純植物食にし、蛋白源は穀物と豆類を重量比で2対1で摂る、そして毎回食事の最中にミネラル・ビタミンなどの微量栄養素の総合的なサプリメントを摂っていれば、消化力もアップして、蛋白質をどんどん分解していきますし、過剰な活性酸素が生まれたら直ちに無害なものにしてしまう酵素(SOD、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ等)を働かせるのに必要なミネラル(亜鉛、銅、マンガン、セレニウム、鉄)や抗酸化ビタミンが十分入っています。
 この過剰な活性酸素が鼻炎であれ腸炎であれ、引き金を引いて炎症を起こすのです。
 そして、いったん炎症が起きると炎症部ではおびただしい活性酸素が生まれるので、何か消炎の手だてを打たない限り炎症は悪循環的にひろがり、アレルギーマーチを起こすなど、尾を引くことになりかねません。
 薬に頼らず炎症を上手におさめようと思ったら純植物食にし、総合サプリメントを毎食欠かさずにという一般的なアレルギー対策をいの一番にすることが大事です。
 これさえやっていただければ、花粉症はやがて次第におさまり、花粉がどんなに飛んでもどこ吹く風とばかり平気な顔をしていられるようになるのです。

逡巡しているひまに…

 人間の病気というのは悪循環的に悪くなっていくという面があります。
 目がかゆいといって、強くこすったりたたいていたら、やがて、それがもとで網膜剥離を起こして失明してしまったというケースもあります。
 そういう意味で、アレルギー全般からきれいサッパリと縁を切るには、純植物食+微量栄養素の総合サプリメントで花粉症とおサラバをするのが、多重的な悪循環から脱出する道なのです。
 まずはトライされたらいかがでしょう。よく食生活の改善は一生続けなくてはいけないんですか? と、先の先まで心配する人がいますが、そんなことはまず花粉症とおサラバしてから自分で考えてみればいいことです。