DHA (ドコサヘキサエンサン) について
自然食ニュースが提唱する日本人の食事指針の(4)では「αリノレン酸系の脂肪も意識して摂取を」とあります。
DHA(ドコサヘキサエンサン)はEPA(エイコサペンタエンサン)と並んで、αリノレン酸系の脂肪の代表的なものです。
そもそも脂肪には3系列あるということを、まず、頭においてください。
一つ目はいわゆる豚、牛、鶏とかの動物性脂肪です。飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸を含む)と呼ばれるタイプです。
二つ目はリノール酸系列の脂肪です。通常の植物性サラダオイルと呼ばれるものでアラキドン酸などもこれに含まれます。
三つ目がαリノレン酸系の脂肪です。EPA、DHAなどはこの系列です。海藻、それを餌とする魚、シソなどに多い種類の油です。
この三つの系列の脂肪は私達の体の中で互いに転換することはできません。つまり、三系列をバランスを考えて上手に摂ることが健康維持に必要なのです。
一昔前までは、油は動物性のものと植物性のものの二つに分け、動物性の脂肪はコレステロールが貯まるので動脈硬化のもとになるといわれてきました。
その後、植物性脂肪は活性酸素などによって過酸化脂質化されやすいので、摂り過ぎは危険だということもいわれてきました。
そして、最近はαリノレン酸系の脂肪について知識がひろがり、このタイプの脂肪の摂り方が少なすぎるので様々な不調のもとになっているともいわれるようになってきました。
脂肪に関してはここ十年位の間に随分と知見が変わってきたといえます。
DHAが 注目を集めるのは…
今から5年ほど前、イギリスの脳栄養化学研究所のマイケル・クロフォード教授が「人間は水産物からDHAを摂ることによって脳を発達させることができた」そして「日本人の知能が高いのは魚を食べるからだ」と発表しました。
αリノレン酸系の脂肪は海に漂う海藻がまず太陽光線を浴びてつくります。
それを、プランクトンが食べ、食物連鎖の中で次第に大きな魚が食べるうちに、EPA、DHAなどに変化するものが出て来て、背の青い魚には特にこれらが多くなります。
とくにカツオやマグロ・サバ・イワシの目の玉の後ろあたりには沢山のDHAがあることがわかっています。
人間は、どのタイプにしろαリノレン酸系の脂肪が入って来れば肝臓などでリノレン酸↑↓EPA↑↓DHAの相互転換ができます。
頭を良くする
DHAが人気を呼んだのは頭を良くする働きがあるというのが一番でしょう。子どもの進学に頭を悩ませている親は子どものために、そろそろ物忘れがひどくなってきた人は惚けないために、DHAに注目します。
動物実験などでも、たしかに脳の情報伝達機能に重要な役割を果していることが証明されています。ネズミの迷路脱出の実験などで、特に記憶能力、学習能力にDHAが必要ということがわかっています。DHAが不足すると視力障害もおこります。目は脳の出先器官とみれば当然のことなのでしょう。
妊娠中にDHAが不足すると頭の良い子は生まれてこないようです。
血栓を予防する
血栓が脳とか心臓に詰ると梗塞をおこし命取りになります。DHAを普段からとっていると血栓そのものができにくくなるというのですから、有り難い話です。
これは酪農製品を多く摂るデンマークの国民と、デンマーク領に住んで魚を多く食べるエスキモーの比較で証明されています。エスキモーには脳梗塞や心筋梗塞の人が殆どいないのです。
動脈硬化を防ぐ
このことは動脈硬化についてもいえます。そもそも血栓は動脈硬化の結果みたいなところがありますから、当然なのでしょう。
ただし、一つ考えておかなければならないのはαリノレン酸系の脂肪はリノール酸系列の脂肪と同様、酸化されやすいという弱点があります。従ってDHAを摂るときには、何らかの酸化防止の手段もあわせてとるということを忘れてはいけないと思います。総合微量栄養素サプリメント(栄養補助食品)のように抗酸化を基本的に考えたものを食後に食べていれば、この点でも安心です。
炎症に ストップをかける
炎症がおきるところ、必ず活性酸素が暴発していますが、そこにはリノール酸系列のアラキドン酸も関係しているのです。αリノレン酸系の脂肪の摂取がリノール酸系の脂肪を牽制して、アラキドン酸が炎症に関係するのを妨害することもわかっています。DHAが少ないことによるバランスの悪さが炎症を起こしやすくしていますので、DHAはアレルギーの予防にもプラスになります。
ガン予防にも DHAは関係している
先程の例では、エスキモーに血栓や動脈硬化が少ないことをあげましたが、彼らは同時に大腸ガンや乳がんが少ないことも知られています。
まだ、その機序は詳細には解明されていませんが、DHAなどのαリノレン酸系の脂肪をバランス良くとることが、これらのガンを予防する力を持つことは確かといわれています。