糖尿病と 微量栄養素

 ここのところ、糖尿病の方からの微量栄養素療法の相談が増えています。
 何せ、日本には今六百万人以上の糖尿病患者がいるということです。
 なってしまってから「しまった」と思っても、もとより知識がないものだから、お医者さんに全面的に頼るより仕方が無く、インスリンの注射をして貰うだけ。注射で一生血糖値をコントロールしましょうなどと言われながら、あとは食べ過ぎないようになどともっともらしく言われるだけです。だんだん目も見えなくなり、足も田中角栄さんのように切断せざるを得なくなって、情けない姿でこの世と別れを告げることになります。

まず、糖尿病本体に対する 食養生の眼目としては

1.糖質は砂糖・果糖のような単純な構造の糖の摂取はやめ、全粒穀物のでんぷんのような複合的炭水化物タイプで摂り、かつ、食物繊維を同時に多めに摂る。
2.ミネラルではサプリメントでセレニウム、バナジウム、クロム、亜鉛、マグネシウムを補う。
3.ビタミンではビオチン(ビタミンH)、ピリドキシン(ビタミンB6)を補う。
4.活性酸素対策にアンチオキシダントといわれる微量栄養素群をサプリメントで摂っておく。

次いで、糖尿病の合併症に対する 食養生の眼目として

A.神経症に対して
 ビタミンB群を総合的に多めに摂る。
 知覚神経機能を正常に保つにはアミノ酸のイノシトールを摂る。
 神経不安からくる苦痛緩和にはピリドキシン、ナイアシン、ビタミンB12が効果がある。
B.腎臓トラブルに対して
 糖尿病からくる腎臓のトラブルに対してはニコチン酸アミドが効果がある。
C.網膜症に対して
 マグネシウムが不足していると、網膜が弱点になりやすい。亜鉛、マグネシウムを必要充分量摂る。
D.毛細血管症に対して
 ビタミンC不足が毛細血管のトラブルの引き金をひく。ビタミンCは毎日2グラム程度摂りたい。

糖尿病を寄せつけない、 食物繊維に富む食事

 食物繊維の多い食べ物は糖尿病を作らないことが知られています。これは食物繊維を多く食べるアフリカ住民に糖尿病がないことがヒントでみつかりました。自然食は玄米など未精白穀物を主食にするので、食物繊維に富む内容が大きな特徴です。食生活が贅沢になるに従って舌先三寸を楽しませる精製食品、加工食品を多く食べるようになりますが、それは糖の急速な吸収を容易にするので、血糖値は短時間に上昇し、急降下するということになります。これが糖尿病の素地をつくるのです。血糖値ができるだけ緩やかにあがり、緩やかにさがるようにするには、食物繊維を
多くとることがとても大事です。
 白米ご飯は精白した分だけ食物繊維が少ないので、血糖値のアップダウンが激しくなります。白米ご飯、白パン、精白麺類などが現代人の主食ですから、糖尿病に悩む人が七百万人もできるわけです。
 なんらかの食物繊維を健康食品で定時的に補い、微量栄養素を総合的なサプリメント(栄養補助食品)で補給するというのが、糖尿病で一生を棒に振らないために必須ということになります。

食物繊維のいろいろ

 食物繊維はいろいろありますが、たいていの食物繊維は糖の急激な吸収、血糖の急上昇の抵抗体になります。穀物や豆の繊維は特にお勧めです。りんごに多く含まれるペクチンも食物繊維です。様々な状況で洋食をする人は一日二個のリンゴは必需品です。

菜食

 菜食にすると食物繊維分は自動的に多く摂れるようになります。また、脂肪を摂る量が少なくなるのも、菜食の利点です。菜食を旨とする宗教、例えばキリスト教のセブンスデーアドベンティスト信者やモルモン教徒に糖尿病が少ないのは良く知られています。(ガンも少ない)

砂糖・果糖の問題

 少しの糖でも調子を崩す糖不耐、インスリン感受性低下、網膜症、腎臓トラブルなど糖尿病を巡る病的トラブルは砂糖・果糖の摂取と深く関係しています。何といっても意志を強くもち、甘い物依存症にならないように変身していくことが必要です。砂糖・果糖の強烈な甘味は我が身を滅ぼすと悟り、イメージトレーニングなどで、潜在意識で遠ざける工夫をすると良いでしょう。
 砂糖・果糖はビタミンB群を中心としたビタミンを大量に消耗する他、尿からクロム排出を促進します。クロム不足は、糖不耐症に傾斜しやすくなります。

セレニウム・バナジウム・ 亜鉛・マグネシウム以外の 注目すべき微量栄養素各論

イノシトール 糖尿病につきものの各種神経症の改善に有用です。
ニコチン酸 インスリンを助けるGTF(グルコース トレランス ファクター)はニコチン酸なしでは作れません。この補給は腎臓トラブルを起きにくくさせます。
ピリドキシン(B6)糖尿からくる神経障害を防ぎます。糖尿の兆候があって妊娠した人は特に必需です。またインスリンの水準を上昇させその感受性も上げます。
チアミン(B1)知覚神経病の症状改善に役立ちます。
コバラミン(B12)糖尿性神経障害に効果があります。
ビタミンC 毛細血管のトラブルを防ぐだけでなく、慢性的不足は糖尿病自体の引き金を引くといわれています。糖尿病の人は毎日2グラムは摂りたいものです。耐糖性を良くするにも、コレステロール値や中性脂肪値を下げるのにも有効。ビタミンCが効果をあげるためにはフラボノイドも必要です。
ビタミンE 充分量摂っていればインスリン要求量を下げ、フリーラジカル消去をしてくれるので、細胞がダメージをうけるのを予防してくれます。
カルシウム 高血圧、血管のアテローム変性予防に役立ってくれます。
クロム GTFの生成に必須。三価クロムであることが必要です。血清中のクロムの価は血清インスリンレベルと関連しています。クロム値が低いとインスリンの反応性は落ちます。