セレニウム

ビタミンEの数百倍の 優れた抗酸化力

 セレニウムは必須ミネラルの一つです。一番注目されているのは、体内で抗酸化の働きをしてくれる酵素グルタチオンペルオキシダーゼの機能発現を活性化してくれるミネラルだからです。ビタミンEの数百倍のパワーを持っているといわれます。
 セレニウムは自然の酸化防止成分として、生体膜などの多価不飽和脂肪酸の酸化を防止することによって細胞や組織の弾力性を保持しつづけるのに役立つほか、局所ホルモンともいうべきプロスタグランジンの生産にも活躍してくれています。これは結果として動脈などの血管をいつまでも若々しく保つのに貢献してくれます。
 ガンとの関係では、もともと細胞の奥深くにある核の中に格納されている遺伝子の配列がその細胞をガン細胞化させるように狂う前段階として核の膜の多価不飽和脂肪酸がフリーラジカル等によって破壊されるということがあるわけですが、これがセレニウムの存在によって防げるということがあると同時に、体内の異物・ガンに対して細胞性免疫が働けるようになるよう、免疫システムにカツを入れる働きもセレニウムは持っているのです。
 更に、不幸にしてガンなどになった場合、化学療法や放射線療法を受けるような場合でも、それらの副作用を抑えるのにもとても役立ってくれるのがセレニウムです。

とり過ぎると中毒症状が

 ただ、このセレニウムはほんの少ししか摂らなくては、大したききめはない一方、過剰に摂るとヒ素と同じような毒性をあらわすともいわれており、安全といわれる範囲が他のミネラルに比べて狭いのも事実です。
 しかし、こういうことは人体実験ではなかなか試されないので、まだよくわかっていないというのが実情です。
 例えばマイケル・レッサー著大沢博先生訳の『脂肪と成人病』(ブレーン出版)の中では、「セレニウム中毒の閾値に近づくのは一日当り二千マイクログラムである。症状としては毛髪、爪、歯の喪失、皮膚炎、倦怠感、麻痺、ふるえ、ふらつき、肝臓検査での異常値、そして最終的には死である。土壌中のセレニウムの量が異常に高い、私の故郷のサウスダコタで行なわれた研究では、一日七二四マイクログラムのセレンを摂っている人にさえ中毒の証拠は見出されなかった」(P.239)とあります。

日本人のセレニウム摂取量が 減っている

 第二次世界大戦後、アメリカが日本人にガンが少ないのは何故かという調査をした時、当時の日本人の食生活から日本人はセレニウムを一日二五〇マイクログラム程度とっていることがわかったそうです。
 ガンが多いアメリカ人は平均して一日一五〇マイクロしかとっていないことがわかり、このセレニウムの摂取量の差がガンの発生の多少と関係があるらしいとの結論を引き出しました。
 そういう意味では、今の日本人の食生活は相当欧米化していますから、日本人のセレニウム摂取量も二〇〇マイクログラムを割っていると推定されています。
 特に田畑にまかれる化学肥料の中の硫黄ないし酸性雨に含まれる硫黄のために、セレニウムの穀物や野菜への吸収が妨害されるようになりましたから、国民のセレニウム摂取量は敗戦直後よりもかなり減っていると思われます。
 また、公害等の影響により有毒金属の摂取量が増えていますが、セレニウムはこれらと容易に結びついてくれます。その結果として有毒ミネラルはその毒性を発揮しにくくなりますが、セレニウムの抗酸化力もその分減殺されてしまいます。

不妊症克服のためにも セレニウムをしっかり確保

 これらを総合的に考え合わせるとセレニウムは七〇〇マイクログラム以下であれば毎日サプリメント(栄養補助食品)等で摂取していてもその危険性は心配するほどではないと考えられるのではないでしょうか(通常の食事から仮に二〇〇マイクログラム入っていたとしても、二五〇マイクログラムのサプリメントを二粒摂って合計七〇〇マイクログラム)。
 特に男性は精子が相当量のセレニウムを含む結果、その放出によってセレニウムはその分確実に体から出ていきます。男性に責任のある不妊症は男性がセレニウムを充分に摂取していないためのことも多々あるとのことです。これはサプリメントで摂るのが安全確実です。