ガン

栄養因子とガン

 女性のガンの60%、男性のガンの40%は栄養の因子と何らかの関わりがあるということは、1982年に米国の科学アカデミーで発表されています。
 この栄養の因子と最も関連が深いのが、女性の場合乳ガンと子宮ガン、男性の場合の前立腺のガンと消化器のガンです。
 ガンを予防しようというときに良く知られているのが、低脂肪、多繊維食にすると良いということです。そして、燻製、ピクルス、塩漬け(これらはニトロソアミンを含んでいるので)の食品も避けると良いということもわかっています。
 今までの研究で、ガンの人は多くの栄養素群において、健康な人より不足していることがわかっています。これはセレニウムにおいて顕著です。ガンがしっかりと体制をつくってからだと難しいのですが、まだ前ガン状態といわれる段階では、微量栄養素のサプリメントで比較的容易に正常な細胞にもどることが証明されています。
 首にコブが出来かかったケースなどでは(特に葉酸が不足していた人の場合)、葉酸のサプリメントの摂取で正常化することが知られていますし、大腸細胞の異常増殖にカルシウムのサプリメントが良いということもわかっています。
 口腔の異常にビタミンAないしベータカロチンが良いということ、毎日1グラムのビタミンCの摂取が胃でニトロソアミンが生成されるのを防いでくれるということもわかっています。

予防の基本

・低脂肪
 ガンの場合、三大栄養素では脂肪の摂取過多が一番関係が深いということは、かなり以前から言われています。
 結論から言えば、できるだけ低脂肪の食生活にすることがガンにならない道です。
・乳ガン
 多くの乳ガンが脂肪の摂取と関連があるということがわかっています。特に不飽和脂肪酸の多摂取が乳ガンと関係があるといわれています。これは外科手術後の再発危険性においても事情は同じです。
 また、飽和脂肪酸である動物性脂肪の多消費も乳ガンを招きます。
・腸ガン
 高脂肪食は腸ガンの死亡率を高めます。
・卵巣ガン
 コーヒーとアルコールでは有意の差はみられませんが、バターやミルク、赤身の肉などで多くの脂肪を摂ると、ガンにかかりやすくなります。
・前立腺ガン
 高脂肪は前立腺ガンにとっても危険因子です。
・多繊維食
 腸のガンと乳ガンは多繊維食でかなり守られることがわかっています。
これは食品中に繊維分が多いと、各種発ガン物質とエストロゲンの除去がされるからです。
 欧米風の食事を好む婦人にとっては、食物繊維は乳ガン予防に特に重要です。早すぎる初潮と高脂肪食は乳ガンにとって危険因子です。乳ガンは女性ホルモンのエストロゲンに刺激されてなることが多いのですが、繊維分を多くとっているとエストロゲンの多くが大便から排泄されていくことがわかっています。
 高脂肪食は低繊維食を招くことが多く、低繊維食は高脂肪食を招きがちです。だからできるだけ繊維分を多く摂ることがとても大事になるわけです。
 世界各国の食生活と健康の関連の観察を通じて、高繊維食は大腸ガンを減らす決め手であることが証明されています。欧米風食生活の特長である高脂肪、低穀物、低繊維食は大腸ガン患者、死亡数を増やすのです。
・菜食主義
 菜食主義にすると脂肪の摂取は低くなり、繊維分は沢山とるようになります。また、女性ホルモンのエストロゲンの量も減るので乳ガンのリスクも低くなります。菜食主義の女性のエストロゲンの大便排泄量は、そうでない対照モデルに較べて2〜3倍その量がふえます。全粒穀物やまるごとの野菜がエストロゲンを吸着し、大便と一緒に排泄するのです。
・果実と野菜をたっぷり摂る。
 これもガン死亡率をさげる方法の一つです。
 六十六歳過ぎの人の統計ですが、ある時期、カロチンを多く含む野菜をしっかり食べると、その後5年位はガンの死亡率が下がるという傾向になるという調査があります。これらの食生活をした人は、そうでない人に比べ、ガン死亡率は三十%ほど低くなります。しかし、サラダでちょっと食べる位ではあまり効果はなく、野菜は煮つけて、ある程度量を確保することが必要です。なお、トマトとイチゴはガン死亡率を低下させる効果があることが知られており、ベータカロチン以外にも何か良い成分があるのかも知れません。野菜が特に良いのは、肺ガン、胃ガンです。肺ガンのリスクをあげるタバコを多
く吸っていても野菜を多く摂れば、そのリスクもある程度は下げることができます。(胃ガンの場合二十五%程度下げます)
・禁酒
 アルコールは上気道と胃のガンと関連しています。ビールの過飲は肺ガンと直腸のガンと有意的に相関しています。
・燻製・ピクルス(酢漬)・塩漬を避ける
 胃ガン・食道ガンを増加させます。ニトロソアミンと多価芳香族が犯人と思われています。
・卵と揚げ物の危険性
 菜食主義で知られるセブンスデイアドベンティスト教団の婦人で週三回以上卵を食べる人は、週一回卵を食べる人と比べて三倍以上の卵巣ガンの危険があるという統計があります。魚、チキン、じゃがいもも油で揚げるという調理法に限ってのことですが、この卵と同じ危険性を持っています。これはおそらく細胞毒性を発揮するタイプのコレステロールの合成量を増やすのです。(つづく)