ミネラル各論・ (クロムCr、コバルトCo、モリブデンMo、 リンP、セレニウムSe、バナジウムV、 シリコンSi)
糖代謝と耐糖能力に働く クロム
クロムは、糖代謝と耐糖能力を維持するのに必要なミネラルです。ブドウ糖は毛細血管から細胞外液に移行し、そこから細胞に移行します。ブドウ糖は細胞内にとり込まれて、はじめてエネルギー源になります。このブドウ糖の移行がスムーズに進行し、細胞にうまく入るためにはインスリンがインスリン受容体に上手に作用し、その刺激で細胞膜中にブドウ糖が通過するドア(細胞中に沈んでいたグルコース・トランスポーター4が細胞膜中に浮いてきてドアになる)が開くこと、細胞外液が酸性に傾きすぎていないことなどの条件が必要となります。
クロムはインスリンの働きを助け、耐糖能力をあげ、細胞外液のぺーハーを調節するのにも必須のミネラルです。
細胞外液の重要性
成人病型の糖尿病はブドウ糖が毛細血管から細胞外液を経由して細胞に移行できず、そのため血糖値があがりっぱなしのケースが多いといわれます。
西洋医学は、この細胞外液のペーハーのコントロールということにまだ意を用いていません。
しかし、東洋医学の手当法の多くは、結果としてこの正常化に成功しています。東洋医学的手法で奇蹟的に病気がよくなることがよくあるのは、この細胞外液のペーハーの正常化が大きく作用していると思われます。
ペーハーが酸性に傾き、生命活動の基本的な場で働く酵素の活性がグンと落ちてしまっていたのが、本来の働きができるようになるからです。この差は実に大きいのです。
体液をアルカリ性に傾ける努力をして、慢性病タイプの病気がウソみたいによくなることがあるのも、こういうことが関係しているのだと思います。
血液は、酸性食品の摂りすぎなどにより、もし酸性に傾こうとするモーメントが働くと、副甲状腺からホルモンが出て骨から強制的にカルシウムを溶け出させ、弱アルカリ性を保とうとします。
しかし、細胞にとっての直接的環境である細胞外液のペーハーをコントロールする直接的な機構はありません。
血液からのアルカリ物質の拡散により徐々に作用するだけです。ホメオスターシスが無いわけではありませんが、緩慢に作用する働きは弱いわけです。
成人病としての糖尿病
医学が今日ほど進歩していなかった時は、このクロムの働きも知られておらず、糖尿病とみなされると、すぐインスリンの注射を打たれました。(今日でも不勉強な街医者にかかると、あなたは糖尿病ですから、一生インスリンの注射をうちつづけなさい、などといわれます)
インスリンは、ホルモンですから三ヶ月以上注射をつづけると、分泌器管(膵臓のランゲルハンス島)が萎縮してしまい、それこそ一生注射しつづけなくてはならない羽目になる人が多いのです。
そうなる前に総合的サプリメントでクロムも充分量含んだものを摂ってみてください。
クロムは吸収がむつかしいので、その吸収を助ける酸を一緒に摂った方がいいでしょう。
クロムの不足をほおっておくと、やがて動脈硬化から心臓病のコースをたどることになるおそれもあります。
クロムと銅が同時に不足気味であればこのコースをたどる危険は相当高いとみて警戒した方がいいのです。
ビタミンB12の構成要素
コバルト
コバルトは、ビタミンB12の構成部分です。
鉄や銅・モリブデンと協力しあって働きます。
また、赤血球の形成に欠かせません。
コバルト不足の人は貧血になっていないかどうか、血液検査でチェックしてみて下さい。
菜食主義でサプリメントでコバルト又はビタミンB12を補給していない人は要注意です。もし、不足していたらビタミンB12をサプリメントで補っておきましょう。コバルトはそれで補えます。
アミノ酸や核酸の代謝に働く
モリブデン
アミノ酸代謝・核酸代謝に関係するミネラルです。不足すると痛風になることが知られています。
また、鉄・銅・コバルトと協力しあって赤血球の形成にも寄与しています。
またモリブデン不足は白髪の一因でもあります。
男性の場合、不足すると精力も弱ります。
過剰摂取に気をつけたい
リ ン
体内では、その八割が骨や歯の中にあります。
普通の食べ物を摂っていればリンが不足することはほとんどありません。
心配しなければならないのはもっぱら過剰摂取による害です。
ほとんどの加工食品には、食品自体のペーハーを安定させるため、リン酸塩が相当量つかわれています。(ポリリン酸ナトリウムなどと表示してあります。)
近年の食生活の特長は、加工食品の著しいシェアアップです。
こういうものからリンが過剰に入ってくると、カルシウムや鉄の吸収を妨害しますから、貧血や骨粗鬆症になりやすいのです。
カマボコ(リンが多い)好きな人で鉄欠乏性貧血と言う人がけっこういます。
また、夏になると町中の自動販売機で清涼飲料水を飲みたくなりますが、甘いタイプのものは白砂糖とリン酸がたっぷり入っていますから要注意です。
貧血の人はこのタイプの清涼飲料水(リンが多い)などやめることが第一です。
代表的な抗酸化ミネラル
セレニウム
セレンともいいます。
水銀など有害ミネラル害作用をブロックしてくれる頼もしいミネラルです。
また、抗ガン作用があることがわかってきて、近年脚光を浴びています。
この抗ガン作用は、SODと並んで抗酸化力がある酵素、グルタチオンペルオキシダーゼの活性化にセレニウムが必要ということと関係があります。
やはり抗酸化力のあるビタミンEと一緒にとると、生体膜の過酸化脂質化防止の働きはグンと強化されます。
皮膚のシミなどには、この生体膜が過酸化脂質化してリポフスチンという色素になったタイプのものがあります。
ビタミンEだけでは、すでにシミになってしまった色素を還元する力はきわめて弱いのですが、セレニウムが一緒だとシミも消えていくことが期待できます。
老化の進行やガンは、生体膜の過酸化脂質化と相関性があるので、セレニウムの不足がないように配慮したいものです。
現代人の生活で一番問題となるのは公害物質(有害ミネラルを含む)による汚染と体内での酸化作用の進行の二つといえます。
この二つの問題さえ解決できれば元気にみちた生活、長寿と健康は約束されたも同然です。
そしてセレニウムの適量の摂取はこの二つに対して同時に有効です。
毎日少なくとも300〜600マイクログラム程度の摂取がのぞましいといわれますが普通の食生活では100マイクログラム程度しか摂れていないのです。
従って毎日250〜500マイクログラム程度はサプリメントで補っておきたいものです。
ただし何事も過ぎたるは及ばざるが如しといわれますがセレニウムも一緒です。
ガンのときの特殊治療の時以外は700マイクログラム以上の毎日の摂取はおやめください。
サプリメントは毎日適量つづけるところに意味があるのです。
克山病
中国の黒竜江省に克山県というところがあり、その地方では心臓病で倒れる人が特異的に多かったのです。
長い間、一種の風土病であろうと考えられていましたが、ある調査で克山県一帯は、土壌中にセレニウムがとても少なく、そこで出来る作物にもセレニウムが不足していることがわかって、サプリメントで全住民にセレニウムを与えたところ、克山病は見事に消えました。
日本は土地の中にセレニウムはあることはあるのですが、近年公害の影響で、硫黄分を含む酸性の雨が降ってきたり、化学肥料の硫黄を大量に使用するようになって、作物にセレニウムが含まれにくくなっています。
また、食生活の欧米化もセレニウム不足に拍車をかけています。
中年男性の精力弱化、血管の内膜の過酸化脂質化による動脈硬化にセレニウム不足が大きな影響があります。
また、糖尿病や筋ジストロフィーや関節リウマチ、アルコール中毒にもセレニウムが有効といわれています。
脂質の代謝にも働く
バナジウム
酒の友の珍味、ホヤに特異的に多いことで知られるバナジウムは、体内では脂質の代謝に関係しています。不足をすると虫歯になりやすかったり、貧血の人は治りが悪いこともわかっています。
また、セレニウムとともに筋肉細胞にぶどう糖をとり込むのに必要なインスリンレセプターを活性化してくれます。
糖尿病の人はサプリメントを選ぶときはセレニウムとバナジウム、あとクロム・亜鉛・マグネシウムも入っているものを選びましょう。
皮膚に関連の深い
シリコン
皮膚やその附属器官(毛髪・爪)の発生に関係していますが、その生理学的意味については、詳しいことは今日のところ、あまりよくわかっていません。
ただ、不足してくると、骨などの強度が弱くなるという報告があります。