第三回
五大栄養素
私たちが毎日食べなければならない栄養素をよく五大栄養素といいます。
蛋白質
脂 質
糖 質
ビタミン
ミネラル
が五大栄養素といわれています。
この他に最近は
第6 食物繊維質
第7 各種生理活性物質
も加えて考えるようになってきました。
この講座ではミネラルに重点をおいて学びますが、ここでこれらの五大栄養素について概観しておきましょう。
蛋白質
蛋白質は人体を構成する基本的な物質です。
この蛋白質は100%自分の体内で生合成されます。
たとえば卵の蛋白質を食べたとしても、胃腸で消化され、アミノ酸に分解されてから、吸収されます。
分解されないまま例外的に吸収された蛋白質は、生体に紛れ込んだ異物として、免疫システムの攻撃対象となり、アレルギー反応をおこすもとになります。
つまり、私たちの蛋白質を作り上げる原料のアミノ酸の重合体が食物中の蛋白質です。
人体の蛋白質は、腸から吸収され血液を通じて配給されたアミノ酸を原料とし、それを必要とする現場の細胞の中で遺伝子情報に従って我が身特有の蛋白質に組み立てられます。
肝臓や腎臓、胃袋、毛髪など組織の新陳代謝が盛んなところではアミノ酸を大量に消耗します。
遺伝子は生殖関係の細胞に限らず、肝臓を始め全身のどの細胞にもあり、自分のコピーを正確につくる設計図の役割を果しています。
人体の構成部分の新陳代謝は案外速いスピードで行なわれるので、蛋白質も、毎日体重1キロあたり0・36グラム消耗されます。
食物で摂る場合、体重1キロあたり1・18グラムの蛋白質を補うことになります。
ただ、アミノ酸は種類が20種ありますが、そのうち8つは自分の体内では合成できず、どうしても食物から摂らなければなりません。
この8つを必須アミノ酸といいます。
一日30種の食物を摂ろうと厚生省が呼びかけているのは、ビタミン、ミネラル、アミノ酸のバランスを良くしようという意図もあるのです。
糖質
糖質はご飯やパンの主成分で、主たるエネルギー源になります。
簡単な構造の砂糖も、複雑な構造のでんぷんも、この糖質です。
でんぷんは加熱してアルファー化し、消化しやすくしてから食べます。
唾液の果す役割も大きいので、良く噛むことが大切です。
簡単な構造にまで消化分解されてから腸から吸収され、すぐ使われないものは、肝臓でグリコーゲンにされ、肝臓や筋肉組織に蓄えられます。
それでも余るものは、中性脂肪となり肥満のもとになります。
エネルギー化は、各細胞中のミトコンドリアという器官でクエン酸回路を通じておこなわれます。
ここでは活性酸素が電子伝達の働きをしてくれます。
脂質
糖質が1グラム当り4カロリーしか熱量を出さないのに、脂質は9カロリーもだしてくれます。
私たちはエネルギーの約2割を脂質から摂っています。
動物性脂肪は動脈硬化の所にたまるコレステロールの元になるといわれますが、コレステロールには比重の小さいLDLと比重の大きいHDLがあります。
LDLだけが悪玉で、HLDは血管壁からLDLを掃除してくれる善玉です。
植物性脂肪は必須栄養素を多く含みますが熱や光に反応して、過酸化しやすいのが玉にきずです
燐脂質(レシチン)は細胞膜の代謝に大切な成分です。
ビタミン
蛋白質、糖質、脂質などの栄養素の代謝やそれを原料とする生合成に関与する酵素の働きを助けます。
そのため助酵素とも呼ばれます。
ビタミン自体は人体中では生合成されないので、食物から摂取されることが必要です。
水溶性のビタミンと、油溶性のビタミンがあります。
ミネラル
良く知られたミネラルに鉄(不足すると貧血)とかカルシウムがあります。
もともとミネラルは、宇宙の構成要素である元素なのです。
私たち人体の元素を調べてみると、ほとんどは、酸素、炭素、水素、窒素です。この四つで全体の96%が占められます。
元素と区別してミネラルというときは、この四つははずして考えます。
残りの4%の元素のうち9割を占めるミネラルがカルシウム、リン、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウムの7つです。
この7つを多量元素(マクロミネラル)と呼びます。
残りの1割がグンと量の少ない、しかし大事な働きをしている微量ミネラルです。
これらはその構造上の陽子や中性子のまわりをまわっている電子のやりとりを通じて、エネルギーの移動がスムースにできるので、生体の中で大事な働きをしている無数の酵素にくみこまれて、その活性度を左右しています。
マクロミネラルのうち、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等は人間を含め、生命現象が海の中でうまれた名残りで、血液など体液の中で電解質として存在して、その酸・アルカリのバランスを保ったりする上で大事な働きをしています。
私たちの肉体は基本的に蛋白質の代謝がその中心になって、時々刻々と変化しています。
その変化の中で体温も維持され、活動のエネルギーもうみだされます。
私たちの体は一大生化学工場です。
その変化は、数千とも数万ともいわれる酵素が媒介するから可能なのですが、酵素が働けるのはミネラルを中核にもち、その電子のやりとりで活性化されているからに他なりません。
そういう意味では、ミネラルこそ栄養素の活動の中心といっても過言ではないのです。必要なミネラルがないと生体の代謝のほとんどはうまくいきません。
その過不足が定期的に伸びてくる毛髪中の量に反映されるのです。
毛髪はテープレコーダのテープのように、その人のミネラルの過不足を記録しています。
たとえばある人が鉛の汚染をうけたとします。
まっ先に血中濃度があがりますが、その摂り込みがなくなればすぐ血中からは消えてしまいます。
次の日血液をしらべても何にもわかりません。
尿も同じようなものです。
しかし毛髪はしっかりとその汚染を記録しています。
しかもいつごろ汚染があったかも、その鉛がふくまれていた髪の毛の位置でわかります。女の人の長い毛髪を1cmきざみに調べれば、例えば30cmあれば、30ヶ月の過去にさかのぼって調べられるわけです。
また、カルシウムなど食事からの摂取量の不足がつづいても血中濃度ではわかりません。
血液中のカルシウムが不足すると自動的に骨からカルシウムが溶けてバランスをとってしまうからです。
しかし、毛髪ではその異常をキャッチできます。