第二回

毛髪分析とは

毛髪分析の 生まれ故郷はアメリカ

 毛髪分析とはアメリカで開発された、生体のミネラルの状況を知るための科学技術です。
 私たちの毛髪に含まれている鉄とか銅とかのミネラルの量は、毛髪を伸ばす栄養を与えられている血液の中に含まれている鉄とか銅などのミネラルの量とある範囲内ではありますが相関性があるので、毛髪の中に各ミネラルがどれ位含まれているかを正確に調べて、過不足を見つけ、その人の栄養の摂り方(ミネラルの摂り方)を反省、修正するよすがにしようという考えかたと技術です。
 一本の髪の毛からもいろんなことがわかります。
 例えば1821年にフランスで死んだ、かのナポレオンの遺髪から高濃度のヒ素(毒性ミネラル)が分析されました。
 おそらく、彼はヒ素中毒で狂い死したのです。ヒ素の毒を長期にわたって盛られて殺されたのかも知れません。
 例えば、天井の塗料の中に高濃度のヒ素を混ざっていれば、その部屋の空気はいつも微量ながらヒ素に汚染されることになり、そこにいつもいる人はいつも食べ物から、あるいは呼吸から、さらに経皮的にヒ素に汚染されることになります。
 アメリカは朝鮮戦争、ベトナム戦争の戦死者や交通事故で死亡した人を解剖し、それを素材に、人体とミネラルの関係の研究がずいぶん進みました。強い軍人をつくる必要があるからです。
 その研究成果の平和利用の一つが、オリンピックで勝つための選手をつくるミネラル、をはじめとする微量栄養素の研究、スポーツ医学の発展です。
 毛髪分析はこのような理由もあってアメリカで発達し、どうすれば病気にならないかの栄養(ミネラル)の摂り方を研究に応用され、その不可欠の方法の一つとなっています。

毛髪に含まれる ミネラルは 血液の約200倍

 昔から東洋医学でも毛髪は血の余りと言ってきました。
 毛髪は1ヶ月に約1センチ伸びますから、はえぎわから約1センチを切って調べれば、その人の血管の中をどのミネラルがどれ位の量、過去1ヶ月流れていたかの痕跡が残っています。
 毛髪は盛んに細胞分裂を繰り返す毛母細胞のところで伸びていきますが、そこで血液の流れに乗ってくるミネラルをアミノ酸がキャッチしとり込みます。
 血液の約200倍の濃度になっていますが、それでも実に微量なので、それを測定するには、コンピュータを使った高度の特殊な機器が必要ですが、現代の科学技術はその僅かなミネラルも正確に計ることができるようになっています。
 また、その分析値が何を物語っているのかを統計学的手法を使って、かなりの確率で当たる推論をすることができます。
 例えば、その人の毛髪を分析してみて、銅とクロームが極端に少なければ(多数の健康な人々と比較して)その人は遠からず動脈硬化をおこし、コレステロールがそこにたまりはじめ、やがて心臓発作をおこして死んでしまう可能性が強いということが統計的にみて言えますし、かなり高い確率で当たります。
 もちろん、絶対にそうなるということは、毛髪のミネラルだけでは言いきれません。
 しかし、他のどんな検査より早く(何年も前から)その危険性を指摘することができるのです。
 もし、あなたが毛髪分析をしてみて、たとえば銅とクロムが足りないということが判明したら、とりあえず、銅とクロムを多目多目に摂っていき多数の健康な人々と同じレベルにしておけばいいのです。
 その分だけ銅とクロムの不足による心臓発作による突然死のリスクが先にのばされたことになるからです。
 毛髪分析がアメリカではやっている理由の一つは、食生活の関係でアメリカ人に心臓発作で倒れる人が多いこと、そのため、生命保険の会社の中には、毛髪分析を費用として認めるところがあることなどのほか、信仰の関係で死に臨んでミサを受けずして心臓発作で突然死ぬと天国に行けないと思っている人が多く、その用心のため、毛髪分析を定期的にうける人が多いことなどがあげられます。
 毛髪は決まった方法で洗われ、強い酸で溶かされて液体となり、強い磁界で励起され、8、000度にもなったアルゴンガス(酸化しない)のプラズマの中に送り込まれて、一瞬の間に光り輝いて蒸発します。
 その時、どんな色(波長)の光をどれ位の強さで出したかを、太陽の光をプリズムで七色の虹に分けるようにスペクトル分析して、それぞれミネラル特有の波長帯に受光装置を置いて測定し、コンピュータを使って処理すると、その毛髪にどのミネラルがどれ位入っていたかを正確に測定できます。
 科学技術が発展した今日でこそできることです。
 私たちの健康づくりに積極的にいかし、科学進歩の恩恵を受けない手はありません。
 しかし、良く考えてみると、生活の全般にわたって豊かで便利さをもたらした、この科学技術の進歩は、昔は想像もつかなかったほどの環境汚染をもたらした元凶でもあるのです。
 ある統計によると、1年間に煙突の煙をつうじて空気中に排出される水銀の量は、なんと世界全体で8万トンを越すといわれています。
 チェルノブイリの事故だけでも放射能を帯びた物質のおびただしい量がヨーロッパ全体にばらまかれました。
 これが私達の体に入ってくると多量の活性酸素を作り続け、その強烈なパワーで私達の体細胞は核のなかの遺伝子にいたるまで異常になってしまいます。
 環境汚染が私達の健康に及ぼす悪影響は有害ミネラルによる微量かつ長期にわたる毒性の発揮、活性酸素などによる細胞膜や生体膜の過酸化脂質化の二つにまとめて考えることができます。
 これが、やはり科学技術の進歩があったればこそ可能になった加工食品の氾濫(これらのほとんどが日持ちのよさ、口当たりの良さと美味しさの追い求めるため微量栄養素を取り去っています)をもたらし、それがやはり、体内での微量有害ミネラルの毒性発揮、過酸化の促進に拍車をかけています。
 この犠牲者にならないために必要な知識をもち、適切な対処をすることこそ、現代人に求められる教養の第一ではないでしょうか。

毛髪分析で 推測できること

 毛髪分析という手法は、元来地域別、職業集団別に栄養素としてのミネラル、あるいは環境汚染としてのミネラルが人体にどの程度入りこんでいるかを、集団的に比較するためのスクリーニングテストとして使われてきました。
 中国の克山(ケシャン)病の発見にも(セレニウム)、水俣病やイタイイタイ病の原因追求(水銀・カドミウム)にも大きく役立ちました。
 それを個人の栄養摂取方法の改善や予防医学的に役立たせようとするとき、おのずと効用の範囲が限定されます。
 それは、どの値であればその人にとっての正常値かは個人差があるので、いちがいにはきめつけられないからです。
 どうしても同じ性、同じ年代の健康な人の多くの毛髪を集め、その平均との比較になりますから、その個人にとってこれこれこういう筈だと決めつけるわけにはいかないのです。
 「このような傾向ですから、統計的にみるとあなたの場合、こういう可能性が強い」と推定するだけです。
 しかし、このことを知った上で毛髪分析を使いこなせば、またとない予
防医学の資料となります。
 他のテストではみつからないことが毛髪分析でいろいろわかります。
 中でも、「ほぼそうだろう」という程度に高い確率で自信をもって推定できるのは、以下の5つです。

1、有毒ミネラルによる体内汚染

 体内に侵入してきた水銀、鉛、カドミウム、アルミニウム、ヒ素などの有害ミネラルは、汗や毛髪を通じて体外に排出されます。
 毛髪分析で検出されたということは体内にあったということです。
もちろん有効な対策がたてられます。

2、骨の空洞化

 カルシウムとマグネシウムがとても多く、他のミネラルが少ないときに疑われます。
 本格的な骨粗鬆症になったり、骨折する前にその危険性が予知できます。
 関連としてストレスの過多も推定できます。
 (カルシウム、マグネシウムが多く、ナトリウム、カリウムが少ない)

3、糖尿病のおそれがある

 クロムが不足していると糖代謝がうまくいかないため、インシュリン非依存型の糖尿病になりやすくなります。
 マンガン、亜鉛が同時に少ないとこの危険性はさらにたかまります。

4、近未来 心臓病

 銅の不足が見つかった人は、そのままにしておくと、心臓がおかしくなってくるということを認識してください。亜鉛と銅のバランスが崩れてくると特に要注意です。
 クロムも一緒に少ないとコレステロール値があがっていきます。

5、ミネラルの吸収不全

 微量ミネラル全体がグラフではっきりわかるほど少ない傾向を示します。
 胃酸が弱い人に多いので、ミネラル吸収補助のサプリメントを一緒に摂る必要があります。
 毛髪分析でわかるのはもちろんこれだけではありません。単に「可能性が強い」というレベルで推定できる体の異常は、この他に沢山あります。
 科学の進歩とともに、ミネラルの知見がひろがって、更にいろいろなことがわかってくると思われ、奥の深い興味がもてます。
 今のところ、これしか「ほぼそうだろう」と自信をもってわかるといえないとみるか、ここまでわかるのか、すごい、とみるのかは、その人次第ですが、十二分に実用的な毛髪分析とミネラルの知識を生かせば、あなたの健康づくりに大いに役立つことは疑いありません。