微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について23 最終回

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

まとめ
世界の激しい変化を 見つめながら

 だいぶ長くなってしまいましたので、この自然食ニュースが提唱する「日本人の食事指針」についての話は、今回で最終回とさせていただきます。
 スタートしてから丸二年、必要なことは大体お話申し上げたと思いますが、この間にも世の中は随分と変りました。
 あまり激しく変っていくので、歴史のビデオを高速モードで見ているような感じがします。
 中国の天安門事件にしろ、ソ連のクーデターとその失敗の流れにしろ、お茶の間にいながら歴史の転換点を同時進行で見られるわけですから面白いといえば面白いですが、いろいろ考えさせられます。
 それだけ全世界が一つのきずなに結ばれ、互に深く影響しあっているということでしょう。
 お隣りのソ連、この国の名前も早晩変ることになるのでしょうが、食糧難、燃料難、輸送難でこの冬の間に暴動がおこるのではないかといわれているくらいです。
 飢えと寒さで倒れる人々の様子をお茶の間テレビで見せられることになるのでしょうか。

見かけの豊かさとは 裏腹に 寒々しい 日本の食糧事情

 人間は、いつも飢えと寒さの不安の中で暮して来た長い歴史をくぐり抜けてきました。近年になって生産力が飛躍的に向上し、特に経済成長で成功した豊かな日本で暮していると毎日二回ないし三回の食べ物が確保できないなんて想像ができなくなってしまいましたが、世界で最初にスプートニクをとばした大国でさえもいまや自国民を飢えと寒さにさらしてしまっています。
 ソ連で今一番忙しい仕事場はルーブル紙幣印刷工場だといわれます。毎日三交代で休みなしに紙幣を印刷しているのだそうです。
 ルーブル紙幣をどんどん刷って配らないと炭坑ストが起きるのでやむをえないのだそうですが、こんなことをすれば、ルーブルの貨幣価値が暴落して、いくらルーブルを持っていても月に一個の石鹸も食べ物も買えなくなることは火を見るより明らかです。
 こうなれば、暴動になっても不思議はありません。
 このような国の隣にいて、引っ越しもできない日本は、この影響を大きく受けない筈はありません。
 日本も食糧の確保という点では、一皮むけばお寒い限りです。
 加工技術と貿易でかせいだドルというお金で全世界から食糧を買求めているわけですから、相手に売れなくなった事情が発生すれば、いくらお金を積んでも食糧にかえることはできなくなります。
 今までは余剰農産物を安く買い集めていたのが、ソ連援助にそれらを使って、相手がもはや売るべき余剰食糧を持っていないということもあるでしょう。
 世界的な天候不安定やアメリカ農地の土壌流出で農作物の生産量が少なくなるということも考えられます。
 そうでなくともドルが暴落して、食糧が馬鹿高くなるということもあるでしょう。暴落しない保障はどこにもありません。今やドルは金にもリンクされていないし、アメリカ経済はゆらいでいるし、暴落したほうが得となれば、アメリカが謀略を使ってでもドル暴落させるという手もあります。
 手に暴落したルーブル札を握りしめても食糧を求められない明日のソ連国民の姿から、同じく暴落したドル札をもって、食糧とかえられない明後日の日本人を想像するのはそんなに難しいことではありません。
 もし、こういう流れになった時でも、自然食ニュースが提唱する「日本人の食事指針」
は最も有効な食事指針として機能するという点を強調しておきたいと思います。

「日本人の 食事指針」とは 何か

 そもそも食事指針を大々的に国民に向けて打出している国はアメリカをはじめとする経済先進諸国です。
 これらの国では炭水化物、蛋白質、脂肪の三大栄養素のバランスが崩れ、それが国民の多病のもとになっているとして、まず、脂肪を減らすこと、炭水化物は砂糖を減らし、穀物なら全粒で摂るなどして複合体で摂ることというのが二大眼目です。
 飽食のツケが成人病多発という形でまわり、国家経済発展のブレーキになったから、何とかしたいというので出たのがこれらの指針です。
 この成人病を防ぐという点ではこれらを肯定的にうけとめ、そこをさらに追究したのが自然食ニュースが提唱する「日本人の食事指針」です。
 三大栄養素のバランスをとるのは当然のこととして、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸といった微量栄養素に気を配り、サプリメントを肯定的・積極的に評価し、肉食・牛乳・卵をやめ、発酵食品と水を考え、有害金属汚染から身を守るため毛髪分析をすすめているのが最大の特徴です。成人病予防だけでなく、環境汚染から身を守る確かな方法を目指しています。
 そして、動物性蛋白質と縁を切ることを呼びかけています。これは世界的食糧難に対し根本的に有効な策となります。
 肉にしろ卵、牛乳にしろ1キロカロリーを得るには10キロカロリー以上もの穀物が使われています。
 この穀物を人間が精白しないで食べれば、同じ地球上で生きる人が飢えで苦しむことがなくなります。
 この食生活が地球から飢えの苦しみを除き、なおかつ、健康に良いというのですからひろがらせない手はありません。
 そして資源の無駄がなく、とても安上がりですから、貧の苦しみも解決できます。
 同時に同じ地球上に共生する動物を、ただ食べるために飼ったり、殺して売り飛ばしたり、そしてお金で買って食べることは残酷でないでしょうか。
 世界平和を唱える人々は沢山いますが、このような残酷さを平気でしている人が唱える世界平和は他に動機があってのマヌーバーと見たほうが良いのではないでしょうか。
 自然食ニュースが提唱する「日本人の食事指針」は、このあたりのことも考え、人類の貧苦、病苦、老苦からの解放、世界平和が自然に得られる方法論としても提唱しています。
 どうぞ、この自然食ニュースが提唱する「日本人の食事指針」を吟味いただいて、手直しが必要な個所があれば御教示ください。