微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について
もと。αリノレン酸系の脂肪もサプリメントで。―

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

リノール酸の摂りすぎとアレルギーの増加

 さて、この十年間ほどを見ても、日本人の食用油の摂取量は約二倍から三倍も増えたといわれます。そういえば、お中元とかお歳暮とかの贈答品に食用油がよく使われますね。また、外食産業花盛りといわれますが、いずれも油で揚げたものや油を多く使ったものがメニューの主力です。私たちは知らずしらずのうちに油を沢山摂るようになってしまったのです。
 この油は実はアレルギーに悩む人が異常に増えていることとも関係が深いのです。子供のアトピーから大人の喘息まで、アレルギーそのものは主として異蛋白の体内侵入が根本原因です。肉、牛乳、卵はアレルギーのもとになるのでやめようといっていますが、蛋白質は消化され、アミノ酸に分解されて腸の壁から入ってくるので、この侵入量はそんなに多くはありません。
 少量の異蛋白で激しいアレルギー反応がおきてしまうのは、蛋白質以外の、糖や脂肪も関係があるからです。糖は低血糖の時にアレルギー発作が起きやすいこと、砂糖の多食は時間の経過とともに低血糖状態をもたらすことからいって、アレルギーの人は砂糖の摂取は極力へらすべきです。
 また、激しい発作の引き金となるロイコトリエンなどはリノール酸系列に属する多価不飽和脂肪酸から造られるものであることからいって、主として植物性油脂の過剰摂取が深く関連しているわけです。
 アレルギーになりたくないとか、治したいというのであれば、蛋白源を慎重に選択するとともに、糖分と植物油を控え目にすることが大事です。
 よく、青春のシンボルなどといって、顔中ニキビの花を咲かせている人が結構いますが、これも程度問題です。顔に跡が残るようなニキビは心配のない「尋常性坐愴」ではなく、アレルギーなのです。

三種の脂肪酸の考察

 さて、脂肪は飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、αリノレン酸の三つに分けて考察すべきだと申し上げましたが、これは正確さには欠けますが、分りやすくいうと、牛や豚などの動物性の脂肪、植物性の種子を絞った油脂、魚の脂肪の三つであるともいえます。
 この三つはどこが共通し、どこが違っているのでしょうか。これらの脂肪は生物の内部では分解され、脂肪酸のスタイルになっています。まだ分解されていない脂肪を摂ると、腸でリパーゼなどの酵素による消化作用をうけ、脂肪酸となってから吸収されます。
 脂肪酸の構造は、炭素の鎖に水素が図のようにつながっています。脂肪酸には沢山の種類があるのですが、鎖の長短、二重結合(炭素の結合子どうしが二本の手でつながっている)の数、その位置、生体内で合成が可能か否か、などで様々に分類できます。構造式が一緒でも立体構造が違っていれば、その化学的性質も違ってきます。
 飽和脂肪酸というのは、炭素の二重結合がゼロの脂肪酸です。安定しており、酸化の心配はいりませんが、その過剰摂取は血漿コレステロールの増加を招き、成人病の元になる高血圧をもたらし心臓病・脳卒中や、乳がん・大腸がんにかかりやすくなることはよく知られています。
 不飽和脂肪酸というのは、炭素の二重結合があるもので、ここに酸素が作用すると、容易に二重結合の手を離し、二本の手を持つ酸素と結合(酸化)してしまう性質を持っています。つまり、化学的には安定していません。酸化して、恐い過酸化脂質になる可能性があります。植物性の脂肪も魚の脂肪(αリノレン酸系列)もこの不飽和脂肪酸です。
 では、植物性の脂肪と魚の脂肪はどこが違うのかと云いますと、二重結合の位置が違うのです。
 脂肪酸の炭素のチェーンの端は、一方がメチル基、他の一方はカルボキシル基です。
 メチル基の炭素を1番目と数えて、3番目と4番目の間が最初の二重結合になっているものをω(オメガ)3タイプといいます。
 同様に6番目と7番目の間が最初の二重結合になっているものはω(オメガ)6タイプです。
 植物の種子に多いリノール酸などは、ω|6タイプです。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などαリノレン酸系の魚油はω|3タイプです。
 この最初の二重結合の位置が同じものは、人間の体内では相互転換して必要な脂肪酸が作られますが、最初の二重結合の位置が違うものは人体内では相互転換されません。
 つまりリノール酸を摂れば、ω|6系列のアラキドン酸などには体内で必要に応じて変換されますが、ω|3系列のαリノレン酸やEPA、DHAなどにはなりません。
 αリノレン酸を摂れば、EPAやDHAは体内で合成されます。

αリノレン酸系の脂肪の摂取はサプリメントで

 要するに脂肪には三種類あること、動物性脂肪と植物性の脂肪はすでに摂りすぎていること。魚の脂肪摂取量は増やしましょうということです。
 魚の脂肪を多くとっていると、脳硬塞、心筋硬塞で死ぬ人が少なくなるという有名な話があります。
 イギリスの北西の北氷洋にグリーンランドという氷に覆われた島があります。デンマーク領になっているのでデンマーク人とエスキモーが住んでいます。両者は食べ物が違います。デンマーク人は牛を沢山食べ、魚はあまり食べません。エスキモーはその反対です。同じような環境に住んでいるのに、デンマーク人の脳硬塞、心筋硬塞は多く、エスキモーには少ないのです。
 エスキモーのω|3系列脂肪酸摂取量 対 ω|6系列脂肪酸の摂取量の比は3対1、デンマーク人は1対3です。
 さて、現在の日本人の脂肪の摂り方をこの分析方法で考察してみると、どうなると思いますか?
 もちろん人によって違うと思いますが、平均的にみると、なんとデンマーク人より脳硬塞、心筋硬塞をおこしやすい1対5の比率になっているといわれます。
 自然食ニュースは、菜食中心をすすめているので、魚は必須ではないと考えています。日本は世界の海に進出し、ハイテク装備と底曳網で魚を根こそぎ捕りまくっています。無尽蔵と思われていた漁業資源も乏しくなってきました。私たちはもっと自制すべきです。その意味もあって積極的に魚を食べましょうとは言ってないのですが、αリノレン酸系列の脂肪は摂らなくてはなりません。そこで貴重な資源の無駄や、酸化の心配もなく、めざす量が必ずとれるサプリメントで摂ればいいと考えるわけです。ちなみに魚は新鮮なものでないといけません。ω|3系列脂肪酸は酸化の足の速い
s飽和脂肪酸ですから、日がたっていると、かえってよくありません。アジやサンマなど魚の干物など、もってのほかです。
 最後になりましたが、魚油に多いω|3系列脂肪酸は、αリノレン酸という形で比較的多く含んでいる植物もあります。高山の朝市でみかける「えごま」やシソに多いのです。八百屋で売っているシソは農薬のかかり方が多いといわれますので、その心配のない自家製のシソなどがあれば貴重な資源というわけです。
 これで油についての話しは終りです。