微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について
―塩は自然塩にし、全て薄味に。 味噌、しょうゆは本物を―

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

塩は自然塩にし、 全て薄味に。

 いま、日本人の塩摂取量は平均で一日十五グラム程度といわれます。厚生省は一日十グラム以下が望ましいとして一日三十グラムも摂っている東北地域を重点に減塩運動を呼びかけ、地域の保健所がキャンペーンを張っています。減塩に成功した所では高血圧が原因の脳卒中が減るなどの成果があがっています。厚生省のいうところの「塩」は純粋に近い塩化ナトリウムですから、ナトリウム量では五グラム以下というのが目標になります。
 この量はもっと少なくても命に別状はないようです。アメリカなどは三グラム以下にしようと言っています。戦後約三十年、ナトリウムを殆ど摂らずに(一日平均〇、五グラム以下)グアム島に隠れ棲んでいた元日本兵の横井さんは、見つかった時まずまずの健康体でした。
 厚生省が減塩を呼びかけているのは、ナトリウムの摂取量が多いと血圧が高くなるからです。
 私たちも多すぎるナトリウム摂取には勿論反対です。しかし、減塩運動については、その前提として塩の質について考えておく必要があると思っています。量の問題は質の検討の後で考えるべきだからです。
 よく言われることですが、信長、秀吉、家康などが活躍した戦国時代の記録によると、日本人は驚くほど疲れ知らずでした。あの重い鎧兜を身にまとい、種子島銃や刀、槍などをもって走り回って戦えたのです。
 鍛え方が違うといえばそれまでですが、それにしても、あのスタミナは肉食から生まれたものではありません。
 焼き味噌をたっぷり塗った玄米にぎりに梅干、タクアン程度が戦さの携行食です。今と決定的に違うのがそれに使われる塩です。
 海水を濃縮して得られる白い結晶体、それが往時の塩でした。ニガリが多いので、マグネシウムはたっぷりです。 このマグネシウムこそ活発な活動の必然的結果として、細胞内に入り込み更なる活動ができないようにしてしまうナトリウムを、直ちに細胞外に追出すナトリウムポンプをまわすキーミネラルなのです。
 充分な量のマグネシウム無くしてあのような疲れ知らずの行動はありえません。
 玄米もマグネシウムが豊富ですが、ニガリにはケタ違いでかないません。
 この夏休み、海や山に出かけた人は相当いたと思います。泳いでいる最中、足がつってしまってゾッとした人はいませんか。山のぼりの最中に足がつってしまい、しばらくは動けなくなってしまう人もいます。こういう人は典型的なマグネシウム不足です。
 心臓の冠状動脈の筋肉でこれがおきれば狭心症の発作です。
 現代人の殆どがマグネシウム摂取不足です。だから疲れやすいのです。
 ただでさえマグネシウムが不足しているのに、アルコールを飲むとマグネシウムは尿から排出されてしまいます。塩を盛った桝酒を飲んでも、その塩がマグネシウムを含まない「食塩」だったら逆効果です。
 人を含め、あらゆる生物が発祥したのは海です。その海水中の塩分を総合的に含んでいてこそ、我々の生命を養う「地の塩」足り得るのです。 それを単なる調味料としてとらえ、経済性第一でイオン交換法による製塩法に変え、限りなく純粋に近い塩化ナトリウムにしたものを「食塩」としてしまったところに、生命の本質に思い及ばない国家行政側の哲学の貧困がありました。
 それで不足するミネラルは他の食品で補える筈だといったのですが、現実には補えないのです。中でもマグネシウム不足は厚生省も認めています。
 マグネシウムがゼロの「食塩」を毎日三十グラムも食べていれば、血管の細胞にナトリウムが入り込み、水ぶくれして血管の内径が細くなり、血圧が上がってしまうのは当たり前です。
 減塩運動は味噌汁も槍玉にあげました。一杯の味噌汁に入っている食塩は5グラムだから、味噌汁はやめるか、せいぜい一日一杯にしましょうというのです。
 食塩を塩化ナトリウムにしてしまったから、こんなおかしな話も大真面目でまかりとおってしまうのです。塩の質だけでなく、味噌汁の具のマグネシウムやカリウムを無視して、全ての話をナトリウムの量だけに絞り込むと味噌汁制限論に落込んでしまうのです。
 私達も今の人は昔ほど肉体労働をしなくなったので、自然塩であっても薄味にしたほうがいいとは考えます。しかし、味噌汁を一日一杯に限ろうというのは、味噌汁独特の栄養効果を甚だしく無視するもので到底組することはできません。全体に小食に、の枠内で自由に飲めばいいのです。
 なお、昔ながらの塩やそれに近い自然塩が自然食品店などにありますが、少なくともこの種の塩を用いたいものです。品質、種類はいろいろありますから、良く選ぶことが大事です。

味噌、しょうゆは 本物を。

 どの民族も固有の発酵食品を持っています。食べ物を栄養として体内に摂り込む腸で生化学反応を順調に進めるためにはなんらかの発酵食品が欠かせないことを経験的に知っていたからです。
 そして、活性酸素の暴発をふせぐ低分子物質も発酵食品を食べていると相当量摂れるので、体の調子が良いのです。 腸の調子の良し悪しは大便の状態で判断できますが、これも発酵食品を充分に摂っているかどうかで大いに違ってきます。
 味噌、醤油は日本民族の蛋白源でもあり、微量栄養素源でもある素晴らしい発酵調味料です。味噌などは大豆の蛋白質の半分以上が発酵によってアミノ酸に分解されていますから、アレルギーになりにくいのです。米に不足する必須アミノ酸のリジンやトリプトファンも充分持っていますから味噌は米を主食にする日本人にとって、何よりの蛋白源です。
 マクドナルドの戦略は日本人が味噌、醤油がおいしいという味覚をもっている限り、ハンバーグの売行きも希望が持てないとして、大宣伝費を投じてトマトケチャップとマスタードの味覚に若い世代を慣らさせ、その第一世代を通じてその子供達(第二世代)を三歳までにケチャップとマスタードの味に慣らさせようというものです。人は三歳までに慣れた味は一生好きだというのです。こうなれば、もはや大宣伝費をかけなくてもハンバーグ屋は商売繁盛、安心立命。マクドナルドの戦略は成功し、いま日本人はハンバーク第二世代に入っています。味噌と醤油の味は押されっぱなしです。インチキ味噌、醤油を作
闡アけて国民から愛想をつかされたメーカーが馬鹿だったのでしょう。
 せめて自然食品店にある良心的メーカーの本物の味噌、醤油を愛用したいものです。
 子供たちが肉食推進のマクドナルドの虜にならないためにも、発酵食品のすばらしい効果を与えるためにも、心込めた美味しい味噌汁をおふくろの味として第二世代を育てたいものです。