微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について
―肉・牛乳・卵などは、アレルギーのもと―

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

低カロリー ・低蛋白の食事が、 高峰三枝子さんと 美空ひばりさんの 死を早めた?!

 「湖畔の宿」や上原謙さんとのフルムーン旅行のコマーシャルで有名な高峰三枝子さんが亡くなりました。高峰さんはテレビなどで、晩年、玄米の効用を説いていました。玄米食に切り換えるまでは肉食過度だった高峰さんは、ある指導的人物(韓国系米人でマッサージの技能をもつ人物)の勧めで玄米食(小さなおにぎり等)と薬草茶の食生活に切り換えていたそうです。血圧が高かったのと、太り気味だったのを治したい一心でした。
 高峰さんの主治医は血圧が下がり、かなり痩せたのは事実としていますが、彼女の食事が低蛋白・低カロリーで急激に血圧が下がったのが、血管内で血漿成分が凝固したか、強烈なマッサージで血管壁から血栓のもとが剥がれてしまったのが原因、と述べています。
 一方、この高峰さんを指導していた人は、一周忌を迎えた美空ひばりさんをも指導していたというのです。
 主治医に内緒でひばりさんは玄米食をし、高価な薬草茶を飲み、マッサージをうけていたそうです。ひばりさんはこの費用に一ヵ月に二千万円を払っていたとか。
 死後、このことを知ったひばりさんの主治医は、「彼女は肝臓が悪かった。伝えられる彼女の食事はあまりに低蛋白だ。肝臓は高蛋白でないとダメージが大きく、ある限界を越えると、回復できなくなってしまう」と述べています。
 このことは自然食ニュースが提唱する日本人の食事指針に照して、どう考えるべきなのでしょうか。食事指針は少食を勧めていますし、動物性蛋白質はキッパリとやめましょうといっています。自然食ニュースは低蛋白食を勧めているのでしょうか?

栄養の確保は 大前提

 私たちは少食に関連して「食事は楽しく、良く噛んで、栄養確保で少食に」と提唱しています。つまり必要な栄養は「確保」しようということです。確保の内容となる質と量はすべての必須栄養素を必要量摂るということです。個体差がかなりあるのでいちがいにはいえませんが、具体的にはその人の毛髪分析のデータや、体の調節を見つつ決める以外はありません。高峰三枝子さんや美空ひばりさんは、玄米食・少食にしましたが、必要な栄養を確保していなかった疑いが極めて濃厚です。
 人間の体というか、動物の命というか、栄養が充分摂れていたら、若くしてあんなにももろく命を落とすことはないのです。
 もともと、蛋白質というのは、そのままでは吸収されません(紛れ込んだ蛋白質がアレルギーを起こす)。消化器でいったんアミノ酸に分解されます。蛋白質のまま吸収されて、栄養源になるということはあり得ないことなのです。私たちが腸から吸収して、自前の蛋白質を組み立てる材料となるのは、あくまでもアミノ酸です。誤解を恐れずに、というか厳密正確に言えば、私たちは蛋白質は全く摂る必要がないのです。ただし、私たちの肉体の蛋白質を作り上げる材料たるアミノ酸は必要かつ充分量摂る必要があります。
 動物性蛋白質にしろ植物性蛋白質にしろ、このアミノ酸の重合物ですから、食べてうまくアミノ酸に分解される蛋白質食品であれば、アミノ酸補給源として評価できるということなのです。
 例えば味噌などはその蛋白質の約40%が発酵過程でアミノ酸に分解しており、残りの蛋白質もアミノ酸に分解されやすくなっています。
 ところが、肉や牛乳や卵は、100%アミノ酸に分解される前に、その一部が高分子の蛋白質のまま腸の壁から吸収されてしまい、アレルギーの原因になったり、肉などは消化液が滲み込む前に、内部から腐敗が進行し、酸性有毒物となってしまうことが多いのです。だから、アミノ酸の供給源としては、これらは適切な食べ物とは言い難いのです。
 動物性蛋白質の利点としては、植物性蛋白質に比べると高分子で複雑なため、その重合を解いてみれば、八種類の必須アミノ酸を比較的多く含んでいるということがあげられます。それを表現するために、プロテインスコアという概念を編み出し、卵などはその評価では満点に近いなどと言っています。
 しかし、食物は一度に何種類も食べます。だから、一回分の総量を分析し、プロテインスコアを出して、評価の基準とするなら話の筋もそれなりに通ります。それをしないで個々の食品のプロテインスコアだけで論じるのは方法論として滑稽な位間違っています。
 ちなみに玄米や大豆は必須アミノ酸でそれぞれ欠けているものがあるため、個々の食品としてはプロテインスコアは必ずしも良くありませんが、それを普通に食べる程度に組合せてプロテインスコアを計算しますと、一方の不足アミノ酸を他方の過剰アミノ酸が補うかたちとなり、ほぼ満点に近くなります。
 しかも植物性蛋白質は構造が簡単なのでアミノ酸重合が解けやすく、アミノ酸源としては動物性蛋白質食品より、はるかに高く評価できるのです。
 肝臓をはじめ全身の細胞が必要としているアミノ酸は必要充分量摂取して供給すべきです。
 その意味では、私たちは「低蛋白」を提唱するものではありません。同時に必要量を越えた過剰蛋白質摂取はたとえ植物性蛋白質であっても体に良くないと断言いたします。よく蛋白質は植物性食品にはまるでないのではないかと思っている人がいますが、穀類は大体が高蛋白食品ですし、葉菜、根菜も皆さんが想像する以上に蛋白質を多く含んでいます。
 それでも少食にすると、どうしても必要量さえ不足するおそれが出てきます。
 自分の体調をコントロールすべきは、まず自分です。
 その意味でも毛髪分析、そして必要に応じて尿テストなどを参考にしつつ自分の体調をよく観察して「栄養確保で少食に」を実行して下さい。
 そのさいは安全第一です。栄養失調のあげく体内のセンサーも狂わしてしまってから体調を自分で判断すると、間違った結論が出ます。少食のあげく骨皮筋衛門になって、体が軽い、調子が良いなどと言っている人がいますが、抵抗力は相当落ちていますから、何かあったら危険です。
 何ごとも程々です。かっこよくいえば中庸です。無理して、高峰さんやひばりさんの二の舞にならないよう、(8)の「アミノ酸等の不足は適切なサプリメントで補うことが望ましい」とあるところに気がついて欲しいのです。
 自然食・少食でやせすぎの人は、アミノ酸の総合サプリメントを毎日六粒ほど摂っておきましょう。
 以上が自然食ニュースからの高峰三枝子さんと美空ひばりさんへの追悼の言葉でもあります。