微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について
―副食は、野菜を中心に―

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

雑食動物のヒト

 未精白の食物を主食にした場合、副食は何を摂ったらいいのかが問題になります。
 やはりこの場合も、考え方としてはヒトの食生活の歴史、口からはじまる消化器の観察、様々な実際の体験、健康長寿者の研究などから総合的に結論を導くのが正解にたどりつく道ということになるでしょう。
 まず大昔からのヒトの食生活をみると、これは、典型的な雑食です。
 飢えをしのぎ、生き延びるために、食べられる物なら何でも食べてきたという表現が一番ぴったりでしょう。
 人間はサルから分化したと言われています。サルは果実、草の実、木の実、葉っぱを一番良く食べますが、小動物を食べることもあります。ご先祖様はやはり雑食タイプだったようです。
 しかし、人間としての歴史を歩みはじめてからは、民族によって食性は、相当違ってきました。住みついたところの気候風土、環境で、食性の違いが発生したのは当然のことだったのでしょう。

穀物・菜食民族と 肉食民族

 農耕民族の日本人の場合は、米などの穀物を中心に、主として野菜類を副食の中心として、動物性食品は魚程度というのが一般的でした。
 今は当然のように食べている牛や豚も、明治維新までは四つ足といって仏教の教えからいって、食べる人はまずいませんでした。一般人が食べるようになったのは、明治時代からです。しかし、それも経済的事情もあって、たまにのことでした。今のように、誰でも毎日食べるようになったのは、この終戦後、特に、オリンピック以降の高度経済成長からのことですから、歴史的にみればほんの最近のことといえます。その結果、成人病、慢性病に悩む人がどうしようもなく増えてきたのです。
 狩猟民族の欧米人の場合は、肉食がメインディッシュでした。
 経済的に豊かになるに従って食べる量も増加の一途をたどります。歯の型は肉食動物ではないのに肉中心にしていたら、いくら長い間に体が慣れてきたからといって、健康上問題が起こらないわけにはいきません。
 肉をたっぷり食べ栄養たっぷりの筈なのに、どうしてこんなに病気が増えてしまったのか、と最初に国をあげて問題にしたのは欧米諸国でした。
 その結果、肉食は否定しませんでしたが、動物性脂肪の摂りすぎはよくないということと緑黄色野菜を沢山食べるべきだということ、未精白の穀物をもっと食べるべきということがコンセンサスになってきたのです。(アメリカン・ダイエット・ゴールなど)
 日本人は西洋人に比べて腸の長さも相当なものだといわれます。菜食型動物が肉食型動物より腸が長いのに対比して考えられるべき点でしょう。
 日本人の場合は肉はやめてしまって、(もともと食べていなかったのだから、食生活をもとに戻して)副食は野菜類を中心にしたほうが、食生活の歴史からは正解ということになるのです。

消化器の入口 である歯を 考察してみると

 次に消化器の入口である口の中の歯を観てみると、その動物が肉食動物であるのか、菜食動物であるのかがわかります。
 肉食動物のライオン、犬、猫などは、肉を切り裂くのに適した歯ばかりです。
 牛や馬、羊などは、前歯も臼歯のようになっていますし、噛み方もすりあわせるような噛み方をしています。
 これは、その動物が地球上でどんな食生活をしてきたのか、どんな食物に適応してきたかをよく示しています。
 人間の歯をみると犬歯は四本しかありません。これは肉食動物の歯のパターンとは言えません。
 三十二本の歯のうち、四本の犬歯の残りは穀物と野菜を中心に食べる生活に適応してきたことを示しています。前歯は野菜を噛み切るのに一番適した歯の型なのです。
 したがって、消化器の入口にある歯を観察した結果からも、副食は野菜を中心に摂ると、体はうまくいくように仕組まれていることがわかるといえるでしょう。
 肉食動物である猫や犬なども、赤ちゃんの時から習慣づけると、穀物と野菜で育ちます。
そうして育つと、性格もとてもおとなしく、温和になるケースが殆どと言われます。
 肉をやればやるほど肉を欲しがり、かつ、性格も獰猛になるのです。
 仮に、人間が犬歯四本分、肉食動物の素質を残していたとしても、同じことが言えます。

現代の理想的な 食事は、 穀菜食+サプリメント

 穀物と野菜しか食べない馬などに無理やり肉をやりますと、その消化がうまくいかず、死んでしまうのです。
 たしかに肉、卵、牛乳といった動物性食品は、濃厚な味と歯ごたえがありますが、現実にさまざま不調、病気、特に成人病に悩んでいる人の多くは、動物性食品をたっぷり食べているのです。
 副食のポイントの一つは、この動物性食品を摂らない方がよいということにあります。
 肉食を積極的に勧める人もいます。
 その人達の言い分は、「肉食をすると蛋白質が十分に摂れる。特に卵は、必須アミノ酸がバランスよく含まれている安価で手軽な完全食品である。また、人間の歴史をたどってみても、貝塚には、貝、魚、そして動物の骨がかなりみつかるということは、人間が肉食をしていたという証拠になる」と言うのです。石のやじりにしても、「人間同士の戦さとともに大型動物をこれで殺して食べていた証拠だ」と言うのです。
 「ヘビだって鳥の巣を襲って、卵やヒナを好んで食べるし、それを見ている人間だって、同じことをしていたに違いない」と、言うのです。
 「だから人間の食性は穀物菜食だと言い切れない」と言うのです。
 しかしそのことは、現代人が、雑食を続けてよいということの論拠にはなりません。
 一つは現代人の生活そのものが頭脳労働型で、肉体を激しく使うということが、ほとんど無くなったということです。
 適度の運動は消化活動そのものです。今の人はそれが欠けているのでおおむね便秘になっています。一日一度お通じがあるから大丈夫という人も、便秘ではないという証明にはなりません。三度食べる人は三度排便してこそ便秘ではないといえるのです。
 肉食はこの便秘を積極的にひきおこします。
 そして、肉食による便秘こそが肝臓の大敵、成人病の引き金なのです。
 肉を食べないと栄養が偏ると心配する向きもありましょうが、決してそんなことはありません。 自然食ニュースが提唱しているように、動物性食品からしかどうしても摂れない栄養素(ビタミンB12など)は、サプリメントで補えばよいのです。