微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

玄米が食べられない人は胚芽米を

 自然食ニュースは、消化過程を順調にするためにも、玄米をよく噛んで食べることをすすめますが、しかし、消化吸収能力が落ちている人や、特殊な事情のある人は、早く元気になって玄米ご飯がおいしくいただけるような体になるためにも、とりあえずは玄米にこだわらず、胚芽米(やむを得ない場合は白米)にして、そのかわり、大麦を三割ほど混ぜるようにとアドバイスしています。これには以下のようなことがあるのです。
 胚芽米というのは、玄米というのは、玄米から糠の部分だけを取り去り、微量栄養素が多く含まれている胚芽の部分を残したお米です。繊維分はありませんので、別に繊維分が不足しないような手立ては講じる必要がありますが、新しい胚芽米は口の中でモソモソすることもなく、ごく普通の電気釜でも炊け、白米を美味しいと感じる人は、その感覚で美味しく食べられます。これに慣れてくると、段々白米では物足りなく感じる筈です。
 胚芽米の欠点は、食物繊維分がないことと、劣化が早いということです。ヌカの部分が一粒づつのお米をきっちり包んでいるからこそ、米は生きており、酸化もせず、カビもつきにくいのです。糠をはずして生命を失った胚芽米は、時間単位の高スピードで酸化が進行し、カビにとりつかれます。少し割高でも最少単位の袋(2キログラム)づつ買い求め、開けた後は少しでも劣化を少なくするため、冷蔵庫で保存し、できるだけ早く使い切るようにしましょう。
 ところで胃腸が弱いという人は、胃の壁が薄く、胃酸が充分でない体になってしまっています。
 胃酸の化学的性質は塩酸です。胃の壁で水素と塩素の結合して塩酸が作られるわけです。食べたいなと思う食べ物が目の前にでてくると、お腹がグーッとなったりしますね。胃の中では胃酸をつくる準備がはじまっているわけです。口のなかで噛んでいるころ、どんどんと作られて、食べ物が胃袋に流れ込んでくると、その食べ物めがけてピュッと胃酸がかけられるわけです。イカの墨みたいなものですね。食べ物を時間をかけて良く噛むことの大事さは、ここにもあるのです。胃酸が充分できるゆとりが必要なのです。
 この胃酸が作られるときの塩素と水素の結合は酵素が媒介するわけですが、この酵素は亜鉛がないと活性化されない金属酵素なのです。つまり、亜鉛が体内に不足してくると、胃酸をつくる酵素は活性化できず、胃酸は満足にできなくなってしまいます。俗に無胃酸症といわれる多くがこのタイプです。

白米の方がいい場合

 今四十才を過ぎた人、特に女性に、この無胃酸症の人が多いといわれます。
 一旦無胃酸症になると、食物が胃袋に入ってきても、胃酸は分泌されず、食べ物の中のミネラルも酸によってイオン化されるということがなくなりますので、腸にいっても吸収がうまくいきません。仮に食物の中に亜鉛が充分入っていたとしても、その亜鉛は満足に吸収されないので、胃酸をつくる酵素にたどりつくことができません。かくて、その人は全般的にミネラル吸収不全におちいり、消化器は全体的に下垂してくるようになります。栄養があるものを食べても、さっぱり吸収されず、痩せたままです。
 こういう人は玄米より、又、胚芽米よりも、白米を梅干で食べたほうがいいのです。
 なぜかというと、米のなかの亜鉛は胚乳の中にもかなりありますし、胚芽のなかのフィチン酸が亜鉛の吸収を妨害するからです。
 フィチン酸というと、ビキニ核実験の後、放射能雨のなかにストロンチウム90が入り、それが玄米には白米より沢山含まれているので、玄米は危険だということが言われたのに対し、いや、玄米を主食にする人は少食なので、全体としては白米食者より口から入ってくるストロンチウムの量は少ないし、玄米の胚芽にはフィチン酸があるので、ストロンチウムの吸収を妨害するので返って安全であるとの反論がなされ、そのときから、その存在がすっかり有名になりました。
 原子周期率表でストロンチウムと同じ族に属するカルシウムやマグネシウムもフィチン酸で吸収妨害されます。玄米を食べている人にオヤッと思われるほど歯が悪い人が多いのも、このためといわれます。
 フィチン酸は有害なものは、農薬でもなんでも、みんな吸収妨害してくれると思い込んでいる人もいますが、そう都合よくはいきません。吸収妨害されては困るものも吸収妨害されるのです。
 白米ですと、亜鉛はフィチン酸で吸収を妨害されることなく、梅干で食べれば、亜鉛はクエン酸などでイオン化され、腸に入ってから吸収されることに希望がもてます。
 食物繊維も、亜鉛をはじめ、貴重な微量栄養素を、その繊維のネットの中にとりこんで吸収を妨害する要因になりますが、白米ご飯ですと玄米に比べ繊維の量は少ないので、焦眉の急たる亜鉛の吸収にとっては有利です。繊維は食事とは大幅に時間をずらしてサプリメントでとるといいでしょう。
 何故(やむをえない場合は白米)と食事指針に入れたかというのには、こういう背景があっての話なのです。

外食は日本そばで

 自然食に徹しようと思った時、意外に困るのが外食です。外食産業では何を食べさせられるか分ったものではありません。その点、どこにでもあり、気軽に食べられるものに蕎麦があります。あれこれ入っているより、ざるそばが一番いいのです。後は携帯容器に微量栄養素が総合的に摂れるサプリメントをいれて持ち歩けば心配はいりません。