平成31年1月12日(土) きゅりあん(品川区総合区民会館) 健康長寿講演会「あなたの人生が変わる!」

スーパーセンテナリアンへの道 如何にして認知症にならず健康長寿を実現するか?

──健康生活の基本は根本的食生活の改善から

認定NPO法人健康生活推進会 仙石紘二理事長

 センテナリアン(百寿者)に到達するには4つの病気にかからない

 きんさんとぎんさんが話題になった頃は、100歳を超える方は3000人少々(平成3年度‥3600人)だったそうです。それが現在は10万人を超えたのではないかといわれています。100歳超えはそんなに難しいことではなくなったということですね。
 日本人の平均寿命は現在、男性81歳、女性87歳とされていますが、自立して生きていける健康寿命は男性72歳、女性75歳弱で約10年以上の差があります。
 100歳を超えた方は「センテナリアン(百寿者)」、110歳を超えた方は「スーパーセンテナリアン」と呼ばれるそうですが、今生きている我々は、がん・認知症・心臓発作・脳卒中の4つの病気にならなければ、大体これくらいはいきそうだという時代になってきたといわれています。

免疫力の向上

──4つの病気にならないためには免疫力向上と腸内細菌
──我々は肉食動物ではない

 ではどうしたらセンテナリアンに到達できるかを考えていきたいと思います。
 人間は病気になっても自然と治る力(自然治癒力)、言い換えると「免疫力」をもっています。巷では今インフルエンザが流行っているそうです。免疫力の「疫」とは流行り病のことです。猛威をふるっているインフルエンザでも、かからない人がいます。それは、流行り病を免(まぬか)れる力、つまり免疫力をもっているということです。
 免疫力は具体的には、免疫担当細胞の白血球が担っています。白血球の約7割は腸の壁の中でじっと待機していて、約3割くらいが腸以外で血液の流れに乗って体の中をグルグルとパトロールしています。
 腸は食べ物が流れていくところですが、そこでよくいわれるのは悪玉菌とか善玉菌とか日和見菌などの腸内細菌が如何に大事な役割をしているかということです。我々人間は肉食動物ではないのに、肉を好んで食べたりしていると、悪玉菌が増えます。
 実は、「悪玉菌」自身も肉食動物と似た性質をもっていて、我々の腸の壁を餌としてかじり倒して体の中に潜入してくる、そして白血球の中にさえ入り込み、脳を含む臓器内に感染するといわれています。そういう意味でも、食べ物の選択は非常に大切になります。
 私どもでは「命のもとは食べ物」という観点から、食べ物の摂り方の知恵を磨いています。では食べ物のことをどう考えたらいいかというと、そもそもヒトは肉食動物ではないことを前提に、本来の食性から考えることが重要です。
 ヒトが肉食動物でない証拠としては、ごくごく単純化すると、肉食動物は獲物を捕獲するために爪が鋭い「鉤爪(かぎづめ)」であるのに対し、ヒトの爪は主として植物を食べて生きているチンパンジーやゴリラ系統の「平爪(ひらづめ)」であることです。
 平爪では、例えば素早く動くネズミをパッと捕まえてもスルッと逃げられてしまい、肉の餌にはありつけません。爪の形は遺伝子で決定されていますから、遺伝的に見ても人間は肉食動物ではないということになります。
 実際のホモサピエンスの食の歴史は「雑食」です。今から250万年くらい前から盛んに狩りをするようになり、自力では捕まえられなくても弓矢や棒の力を借りて動物を倒し、手に握った石器を利用して獲物を捕獲して、その肉を食べてしまう。
 ということで肉食動物が顔負けするほど肉を食べるようになってきたのには、美味しくて栄養があるということが大きいのですが、その結果、腸の中では悪玉菌が増えてしまい、これはまさしく腸の中で自分の腸を食べる肉食動物(悪玉菌)を飼っているようなものとなり、その辺を私どもは一番問題にしております。
 「肉食過多ではまずいね」という、これが一番今日、記憶に留めていただきたいところです。

AIがビッグデータから導いた 何をどう食べるか
──答えは4〜5の食べ物に収束された

 私どもは「命のもとは食べ物」という前提でお話をさせていただいているわけですが、命のエネルギーの元といわれる「NAD(nicotinamide adenine dinucleotide‥ニコチンアミド アデニン ジ ヌクレオチド」(酸化型(NAD+)と還元型(NADH)の2つの状態で、さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能する電子伝達体)は、食べ物と酸素から細胞内に寄生しているミトコンドリアの力を借りて生まれています。
 では、何を食べればいいか。それが明確でないと全体の方針が立てられません。ヒトはもともと、肉食動物ではない。遺伝的には植物を食べる植物食動物だという前提から総合的な方針を立てたいものです。
 テレビの健康番組等では、これを食べたら体にいいという情報がありすぎるくらいあり、何が何だかわからないほど沢山の情報に溢れて、それだけでは方針が立てられない、むしろ迷うばかりです。
 最近、こうした何を食べたら体にいいかという膨大なビッグデータを人工知能(AI)がメタアナリシスという方法で処理できる時代になりました。最終的判断は「致死率」、すなわち何を食べていると、死が早く来るか遅く来るかで判定するようですけど、そうすると、AIが挙げているのは4〜5くらいの食物に統計的に収束されるんですね。
 近頃は、「長生きしてる人は肉を食べている」と言いふらされ、年取ってきたら肉を食べなきゃと思う人が多いんですけど、AIの統計的判断では、健康で長生きしている人が食べているもののリストには肉は入ってきません。
AIの判断では、
一番は、魚。海に囲まれて生活している日本人にはピッタリです。
二番は、野菜と果物。
三番は、精白していない穀物。
四番と五番目はセットで、木の実とオリーブオイル。
 これが、人工知能が今、世界中の学者が「何を食べたら健康にいいか」というビッグデータを処理して出した結論なんです。だから、ここから外れるような生活をしていると、なかなか長生きできない。食養の世界でも「何を食べたらいい、こうしたらいい」といろいろいいますけれど、今の人工知能が出したデータをどこか頭に入れておいた方がいいですね。

 栄養面からAIの判断をみると

 栄養面でいうと、糖質、蛋白質、脂質のバランスの良い摂取が大事です。
 一番目の魚は蛋白質も動物性蛋白ですが消化がされやすく、脂肪もN3系をとりやすい。
 蛋白質は蛋白質そのままで摂りますと処理がうまくいかないことが多い。蛋白質が消化される時は消化酵素で分解されてペプチドになって最終的にアミノ酸になります。実際にペプチド化した蛋白質は吸収の効率が良いだけではなく、最後にアミンなどの毒ができにくいといわれます。よく発酵食品が良いといいますが、発酵食品も微生物が蛋白質をよく分解消化してペプチドに、そしてもっと小さくして1個のアミノ酸にもしていくわけですね。そういう意味でも味噌や納豆などの大豆発酵食品は吸収性も優れていますし、魚の味噌漬などはとても良い

 二番目の野菜と果物。植物食動物の遺伝子をもっているヒトにとっては、わかりやすいAIの判断ですね。
 野菜と果物をしっかり食べ続けている人は統計的に見ると健康長寿を保っているのです。AIの結論は何の野菜とか、どの果実ということまでは言っていません。とにかく健康長寿を願うなら多種類の野菜、果物をキチンと食べましょうということです。農薬の害のない野菜、果物がみんなの手に入りやすい世の中になって欲しいですね。
 三番目の糖質は精白していない複合糖質です。精白していない穀物、色でいえば茶色く見える穀物を食べている人が元気で長生きしている。今、糖質過多の食生活をしている人が多いので糖質制限がやかましく言われていますが、糖質は大きく分けて三つ考えておかないといけない。
 一つが複合糖質。玄米や二分搗き米、麦飯みたいに蛋白質も脂質もセットで摂れ、食物繊維も入っているものが複合糖質ですね。
 特に食物繊維では、水に溶けるタイプの水溶性食物繊維が複合していると腸内環境に良い。「どうしても白米でないと」という人は麦(大麦)を入れる。中でもオーストラリアが国策として生産輸出しているスーパー大麦は水溶性繊維の宝庫です。大麦にも、押し麦、もち麦、胚芽入り、いろいろありますが、いずれも水溶性繊維がとれますからお好みでどうぞ。
 そして、精白糖質の中で最悪なのが白砂糖です。糖質制限をいう時には、糖質の中身を考えて、砂糖のような単純化した糖質はとにかくやめた方がいい。
 人間は複合糖質を巧みに活用して生きている生き物ですから、これも摂りすぎはいけないけれど、長期に全く摂らないでいると、さっきいった腸の中に棲みついている悪玉腸内細菌が「エサをよこせ」と暴れ出して、人間の腸まで食い破って、血液の流れに乗って全身をおかしたりします。
 そういう意味では少食もやりすぎると危ない面があることを忘れてはいけません。けれども全体としては、今の飽食の時代では平気で食べすぎてしまう人が多いし、限界を超えて食べすぎて生活習慣病になることを防ぐことを第一に頭に置かなければいけないと思います。
 四番目の木の実はくるみとかアーモンドなどですね。最初は木の上で暮らしていたヒト本来の食性にマッチした食べ物です。
 五番目の油はオリーブオイルというのがAIの判断ですね。ところで油では医学界でも今一番注目しているのはEPA・DHA、いわゆる「n3系」の油です。植物油ではn3系のαリノレン酸(体内でEPA・DHAになる)が多いエゴマ油とかアマニ油を毎日大さじ1杯くらいは摂らないといけない。この油は必須栄養素の一つです。EPAは血栓ができないようにする、悪玉コレステロールを減らす、血管を軟らかくする。DHAは記憶力向上、認知症の予防ということで老化ストップ食材です。今ブームのサバ缶をはじめ、鮭缶、鰯缶、サンマ缶
等の魚の缶詰はこれらの脂質も摂れるのでおすすめです。特に砂糖など余分な調味料の入っていない水煮缶はすすめられます。
 DHA、EPA、αリノレン酸のn3系の脂質、食物繊維、ビタミンB群。こういうものが複合してくると、とにかく血管が老化するのを遅らせる効果があります。心臓病や脳卒中で倒れるのは血管の老化、すなわち動脈硬化という形で現れますが、動脈硬化がひどく進んでしまった人が長生きするのはその分難しい。

 免疫力向上と心の問題

 免疫力は心も非常に大きく関与しているといわれます。
 笑って暮らす大切さ。落語や漫才を聞くのでも何でもいいから、とにかく明るく楽しく笑うと長生きできる。がんで入院している時にも、とにかくよく笑うということが大事です。こんな時に笑えるかと思う時に努めて笑うことが大事です。
 楽しい笑いは自律神経の副交感神経の興奮を招きます。ストレスの多い現代人は自律神経の交感神経が興奮しがちです。副交感神経とのバランスを保つ生活を心がけてもらいたいものです。最近は「笑いヨガ」というのが人気ですね。一人では笑うのが難しい人は、こういうお仲間で笑う心のお稽古をするのも良いと思います。
 そして心といえば「潜在意識」。話す時は普通、意識して話していると思いますが、日常意識している「顕在意識」は、意識という大海原の氷山のほんの一角で、圧倒的なのは意識していない部分、潜在意識です。実は潜在意識と顕在意識の他に、第三の意識、仮に名付ければ「超意識」とでも呼べる意識を人間はもつ能力があるのではないかといわれています。病気やがんになった臓器に「治れ」というメッセージ物質を浴びせるように送り出せる脳になれる超意識がもてるようになると良いですね。
 そういうことにも思い至らせて、本日は自分の心の在り方、考えの癖を見直すきっかけになればいいなと思っております。

免疫力と酸素

 酸素は「生命エネルギー」と「免疫力」に一番関係しています。
 ヒトは酸素なしには生きてはいけません。普通の人は食べ物もないと生きてはいけませんが、実は驚いたことに、食べなくても生きている人は現在8万人を超えているそうです。そういう方々でも、酸素なしには生きられないのです。
 あまり健康ではないという方は酸素の吸い方が少ない、酸欠状態にあるといわれます。三浦雄一郎さんが8000mのエベレストに登った。あそこは酸素が平地の4分の1くらいしかないそうです。「我々は平地にいるから酸素は十分」といわれますけど、実は酸素の摂取能力がないとエベレストに登れないどころか、平地でも健康長寿を目指すのは難しいのです。
 高齢になるほど肺活量は若い時の3分の1、4分の1と減ってきて、息はしていても酸素を十分全身の細胞まで届けられない人が多いようです。
 今日は病気になる人は、酸素が足りていないことにも気がついてもらいたいと思います。

免疫力の総仕上げ
──生活から免疫力をチェック

 我々は肉食動物ではないということについては後でさらに詳しく述べますが、免疫力ということでのまとめのおさらいです。
 まず、自分の免疫力を、生活面からチェックしてみましょう。
1.野菜・果物をあまり食べない人。
2.慢性的な睡眠不足。普通の人は7時間半くらい寝るのが一番いいといわれています。それを忙しいとか、いろんな理由で夜更かしして睡眠不足が重なってくると、どうしても免疫力が落ちてしまいます。
3.運動不足も免疫力を下げます。一方で、過度の運動も免疫力を下げることがわかっています。有酸素運動に適度な筋力運動も加えて自分の身体状況に見合った運動を継続することが大事です。
4.過度のダイエット、これは絶対ダメですね。
5.風邪をひきやすい体質。インフルエンザは厳密には風邪とは違いますが、風邪をひきやすい、インフルエンザにかかりやすいという人は免疫力が落ちていると自覚しましょう。免疫力が落ちた人ががんや認知症にもなりやすいそうです。
6.呼吸器が弱い、口が乾く。これは普段からの口呼吸や、寝る時に口を開けて寝る人に多い。私は薬局で売ってる安い紙絆創膏を唇に貼って、口が乾くのを防いでいます。縦でも横でもいいです。
 口が乾くと、口の中のバイ菌は寝ている間に1000倍くらい増えるそうです。体内に入ってこなければ問題はないんですが、口が乾いていると、喉の扁桃腺はそうした外敵が体内に侵入するのを防ぐところなのに、反対に、口の中の雑菌を体内に入れてしまう玄関口、入り口になってしまうんです。昼間は鼻呼吸でも、寝る時は口の締まりがゆるくなって口を開けがちになるので、紙絆創膏で口を開かないようにしていただきたい。
7.冷たい飲食物を摂らない。冷たいものをやめると何がいいか。腸が冷えなくなります。比熱が1なので宇宙で一番温めにくく冷めにくいものは水です。冷たい水を摂ると腸が温まるまでに体のエネルギーをかなり奪われるだけでなく、冷えた腸からは腸内細菌が体の中に入って、いろんなところに炎症を起こします。
 これが認知症だとか、がんだとか、心臓病や脳卒中などの血管病の引き金になったりするんですね。ですから冷えた飲食物は摂らない。体温くらいの温度まで温めると腸は冷えません。
 NHKの『シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク』でも謳(うた)っておりますけど、今までは脳が司令部で脳から全ての臓器や、手足などの骨格筋を動かす指令が行くといっておりましたが、最近は、全ての臓器が互いに脳を介さないで情報をやり取りするメッセージ物質を血流に乗せて必要なところに運んでいるということがわかってきました。
 血液が流れているところが血管ですから、その血管を大事にするのは特に大事ですけど、実際には全ての臓器が互いに相談し合って人間を生かしているんだということですね。
 先ほどお話しした潜在意識、超意識を目覚めさせると、臓器同士の連絡がよりスムーズに働いて、がんが嫌うメッセージ物質を容易に出せるともいわれております。宗教などでもよく「心を変えるとがんが治る」といいますけど、これを信じられる人はいいですけど、普通はなかなか信じられない。
 でも、この臓器間でのやりとり、メッセージ物質を出し合うことを思い巡らすと、がんが嫌うメッセージ物質を心は出せるということで、それが意識…潜在意識を超えた超意識といわれるものを出せる人はいますし、誰でも出せる可能性はあるといわれています。

健康長寿を妨げる二大要因
その1.糖化(焦げ)

 私どもでは食生活を考える上で、糖化と酸化が一番危ないと考えております。糖化は焦げ、酸化は錆びに喩えられていますが、細胞が焦げたり錆びついたりしないようにするのが、非常に大事だというお話です。
 糖化は早い話、先ほどお話ししたブドウ糖などの単糖類、単純糖質が蛋白質に絡みついて、蛋白質がまともな活動、働きができなくなってしまうということです。
 命というのは蛋白質の活動だといわれてますから、蛋白質に糖が絡みつかれたらまともな動きができなくなってしまいます。
 糖化のなれの果てが活性酸素よりも始末が悪い「AGEs(最終糖化産物)」。これが生成されると細胞の中に入ってくる。普通は排出されるんですけど、一旦細胞の中にAGEsが入ってしまうと排出ができない。これが澱のように溜まっていって、細胞や遺伝子を壊すようになるとがんの元にもなるといわれています。
 AGEsが脳で発生すると、脳の毒性物質としてβアミロイドが生まれ、最後はタウ蛋白というものになると認知症になる。
 この糖化を防ぐには、意外と良いのはお酢だといわれております。何にでもお酢をかけて食べる人がいますが、今、お酢を摂取する食生活が見直されています。
 もう一つ見直されてるのはネギ。ネギの青い部分の内側の粘りが糖化を防ぐように働く。どれくらいとればいいかというと青ネギを1日20グラム。手の平に乗るくらいですね。緑茶もいいそうです。
 ともあれ、糖化で一番困りものは白砂糖の甘さ。ある意味でコカインよりも怖い依存性をもっているといわれています。それほど中毒性があるといわれています。その辺も頭に置いていただいて、食事の最後はスイーツのご褒美というのは1週間にいっぺんくらいにしましょう。

その2.酸化(錆び)

 酸化についてはかなり前からいわれていますが、活性酸素というものが体の中で生成されて、これが体内の脂質を酸化させて(錆びつかせて)おかしくさせる。
 細胞を守っている膜、すなわち細胞膜はリン脂質でできています。脂質が一旦酸化すると「脂質過酸化」といって次から次へと、燎原(りょうげん)の火のように体の中で酸化が拡がり、細胞がやられてしまいます。
 酸化を防ぐ代表的なものには体内に備わっている「抗酸化酵素」があります。その酵素を活動させるには補酵素のミネラル・ビタミン群が必要とされます。
 また、ポリフェノールとかフラボノイドとか、カロテン等の「植物性抗酸化物質」。イソフラボン、カテキン、アントシアニンなどもその仲間ですが、この植物性抗酸化物質は総称して「フィトケミカル(植物性化合物)」ともいわれています。植物が紫外線などの外敵から自身を守るために作り出す酸化を防ぐ化合物ですね。
 こういうものを十分に摂取して体内に備えていないと生体はたちまち活性酸素にやられてしまい、あちこちで炎症が起きるわけです。
 そういうところからも、野菜、果物、海藻といった植物性食品を多種類、十分に摂ることがすすめられているわけです。

慢性炎症と食生活
──全ての病気は慢性炎症である

慢性炎症と腸の健康
──認知症・がんと腸内細菌

 認知症が増えています。今、65歳以上の5人に1人、700万人が認知症。30年後は1000万人を超えるといわれています。
 栄養失調が続くと腸内細菌が腸壁を食べたり、腸の慢性炎症の原因になったり。この慢性炎症というのが今、注目を浴びています。
 体のどこかに慢性炎症がある人が冷たいものを摂ったりすると、腸内細菌が腸壁にいる免疫細胞に潜り込んで、その移動に伴って、脳を含む全身の臓器に感染を拡げます。
 細菌が血液の中をウロウロしていると白血球に食べられてしまうのですが、白血球の中に腸内細菌が潜り込んでしまえば、細菌は白血球を運搬用の乗り物として全身どこにでも腸内細菌が移動して、脳の中に入れば認知症になる。だから冷たいものをやめるというのは本当に大事なことなんですね。
 腸内悪玉菌をいかにして増やさないか、善玉菌を増やすかは、発酵食品を食べ、肉食の量をできるだけ少量にすることが大事です。

四つ足動物を食べると血管病をもたらす
──肉食と「Gc」の恐怖!

 2013年に放送されたNHKスペシャル『病の起源』は、肉の摂取が動脈硬化、心臓病とか脳梗塞になる原因を「Gc(N─グリコリルノイラミン酸)」という物質から追究した画期的な番組でした。
 この番組では、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校のアジット・バルキという教授が「人間は実は哺乳動物を食べるから動脈硬化になる」ことを話していました。
 哺乳動物の肉、日本では一般にブタ肉とか牛肉とかですね。これらは哺乳類ではない動物の肉、例えば鶏肉などとはどこが違うのか。
 バルキ教授は哺乳動物に含まれている「Gc」という成分が、動脈硬化、血管病には一番問題なんだと明言されました。今日の講演会では、このこともしっかり頭に残していただきたいと思います。
 我々はもともと、木の上で暮らしていたサルですから、この時に食べていたものは木の実とか果物などの類(たぐい)です。本来の人間の食物はそういうものだったわけです。
 ところが、いろんな事情で地上に降りて暮らすようになって、とにかくお腹が空く。そうすると、肉でも何でも食べられるものは何でも食べないと生きていかれない。
 肉を最初に食べたのは、肉食動物同士の争いで食べ残された肉の残骸を食べたのが始まりだといわれております。それがだんだん頭が良くなって石器を用いることができるようになると、動物を獲物として捕獲し、他の動物が残した肉の残骸ではなく、肉そのものを食べるようになった。それ以来、人間は心臓病で倒れるようになったということです。
 「Gc」の話はなかなか難しいんですが、とにかくN─グリコリルノイラミン酸といわれるGcはブタやウシなどの体内にはあるけれどもニワトリにはない、魚にもないということです。ところが、人間は哺乳動物であるにもかかわらず、Gcをもっていないんです。進化の過程でこれを体内から駆逐したんですね。それが功を奏して脳が急速に発達したといわれています。
 そのために、Gcをもっていない人間がGcを含む肉を食べると免疫反応が起きてしまう。つまり白血球が血液の中でGcと闘うわけです。その闘いの際に白血球は活性酸素を使います。そうするとその活性酸素によって血管が内側から炎症を起こし、慢性炎症の結果、動脈硬化が起きる。そのなれの果てが心臓病や脳卒中だという話なんです。
 ゴリラとヒトの比較ですが、ゴリラは動物性のものは食べない。けれども悪玉コレステロールは高い動物なんです。特に動物園なんかで飼われていると高コレステロール値が出る。このデータを見た学者たちは当初「ゴリラはやがて動脈硬化を起こして心臓病で死ぬ動物なんだろう」といっていたんですが、心臓病で死ぬゴリラはいない、動脈硬化を起こすゴリラもいないんです。
 それはなぜなのか。それは彼らはもともと、人間と違ってGcをもっている動物なので、動物性の餌からGcが入ってきても、免疫反応が起きないからです。哺乳動物の肉を食べて免疫反応を起こすのは人間だけなんです。そのことに気がついて、人間はたとえコレステロールの値が低くても、豚や牛の肉食でGcが溜まってくると動脈硬化が起き、やがて心臓病で死んでしまうというお話です。
 この話は実は栄養士の先生も、お医者さんも知らない人が圧倒的に多いです。95%くらいは知らない。この話がNHKで放映されたあと、NHK取材班が宝島社から『病の起源』という本を出版しております。皆さんは、その本も読むことができるのです。ぜひ読んでいただきたいと思います。
 そして、年を取ってきて「肉を食え」といわれたら「はいはい」といって、「逆らわず、いつもニコニコ従わず」の精神で、四つ足動物の肉をすすめられても「はいはい」とかわして、実際には食べるものは魚肉とか鶏肉を少量食べるようにされては如何ですか、というお話です。

栄養の掟(おきて)46種類の「必須(微量)栄養素」
──ビタミン・ミネラル・アミノ酸

 我々は寝ている間に新陳代謝といいまして、一晩で多く見積もって約1兆、少なく見積もっても約3500億個の細胞が入れ代わっています。
 それほど膨大な数の細胞が毎日入れ代わるのには、毎日三度三度の食事から入ってくる栄養が必須だということです。この栄養のバランスが悪かったり、栄養失調だったりすると、新陳代謝はうまくまわっていけない。免疫力が落ちて病気になりやすくなりますし、老化も、死期も早まります。
 体の中で合成できず、食物から必ず摂らなければいけないという「必須栄養素」は、46種類(ビタミン18種、ミネラル20種、必須アミノ酸8種・表)あります。
 これは蛋白質、脂質、糖質の多量三大栄養素の働きを助ける(活性化させる)ビタミン、ミネラル、アミノ酸の微量栄養素ですね。
 こうした必須栄養素が長期にわたって不足をしていくと死に至る。これが栄養失調の怖いところでもあります。そこも頭に置いていただきたいものです。
 必須栄養素が不足すると、新陳代謝が円滑に行われないだけではなく、先ほどからお話ししているように、肉食化した腸内細菌があなたの腸を食い破り、体内に侵入して皆さんの肉体を食べ始めます。
 そうすると今、遺伝子が決めている人間の寿命、115歳とか120歳とかいわれますが、そこに到達できるのは到底不可能であるばかりか、センテナリアン、つまり100歳も達成が難しくなります。
 私どもは昔から「麦飯・納豆・ライフライン」といってきましたが、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の微量栄養素を十全に摂るには、総合サプリメントも活用して、日々毎日の栄養を100点満点にすることが、新陳代謝を円滑に十全にする上で非常に大事だと考えております。
 そして、サプリメントでの栄養補給は咀嚼した食べ物と一緒に飲み込む。つまり、食事の時にサプリメントを摂取することで、胃の中で食べ物と混ざってそれが腸で吸収されるようにもっていくのが一番効率の良い摂り方だとおすすめしています。
 免疫力というのは20代がピークで、加齢に従って落ちていきますから、何とかして若い頃の免疫力を保つには、こうした方法による微量栄養素の十全な確保が非常に重要な鍵を握っているということになります。

血管の若さを保つ強い「毛細血管」を保つ
──高濃度酸素摂取

 今までお話ししてきましたように、血管を大事にする。これは健康を保つ上で非常に大事なことになるのは、繰り返し訴えたいところです。
 栄養を運ぶのも血液ですし、メッセージ物質を運ぶのも血液ですし、酸素を運ぶのも血液です。
 その血液は血管を通って全身に運ばれていきます。ですから、血管が傷んでくる条件は極力避けて血管を守る生活習慣を維持することが大事です。
 顕微鏡で爪の元を見ますと、毛細血管が見えます。年取ってくるとこれがゴースト(幽霊)化、つまり毛細血管がヨレヨレしてきたり、ユラユラと消えかかったり、最終的には消えてしまう現象をいいます。
 食事・栄養に加えて、酸素の吸い方が足りないと、毛細血管がゴースト化します。酸素を十分吸うということが大事です。
 爪元の毛細血管が減っている人は、脳内の毛細血管もゴースト化して減っています。脳の中では先ほどお話ししたβアミロイドという蛋白質のゴミ、これは毛細血管を通じて大小便で排泄されるのですが、脳の毛細血管がゴースト化してくると、排泄がうまくできなくなって脳にどんどん溜まってしまい、認知症になるんですね。
 だから普段から酸素を十分に吸うことは、食べ物と同じように非常に大事なことなんです。近頃では、大変コンパクトで手軽に高濃度酸素吸入ができる健康機器もありますから、それを利用するのも良いと思います。私などはテレビを見ながら、また、寝る前などには必ずこの機器を利用して酸素を十分摂取するようにしています。
 毎日20分ほども吸入していれば毛細血管は大分復活してきます。消えてなくなった様子の毛細血管の多くも、また復活してきます。
 毛細血管が健康になれば、肌のたるみ、しわ、しみも薄くなっていく、こういうことなんです。
 毛細血管は運動でも増えます。心の健康効果が期待される呼吸法もおすすめしたいものです。常日頃から深い呼吸をしている人は、精神が安定しているとよくいわれています。
 食べ物としてはシナモン(肉桂)を何にでもかけて1日5g、小さじ1杯くらい摂取していると毛細血管が増える方向にいくという研究結果があります。

 若返りホルモン「NMN」

 「NMN」。これは体内でビタミンB3を元につくられる若返りホルモンともいわれているものです。
 NMNは、ハーバード大学でも盛んに研究され、日本人ではワシントン大学の今井教授も研究に参画されており、今、一番確かな若返り物質ではないかといわれています。この研究は非常に注目され、マスコミでも随分取り上げています。
 老化は、DNAにいろんなタイプの傷がついて細胞がダメージを受けると、そこから慢性炎症を起こして、老化が進んでいくのが、一番の原因だそうです。
 NMNを十分に摂っていると、人間でも20歳くらい若返るのも可能ではないかということが、ネズミの動物実験から推測されています。
 NMNはサプリメントになっておりまして、若返りたい方はこうしたものを利用するのも賢い方法ではないかと思います。

健康長寿・センテナリアンの到達に最重要なのは「生きがい」

 最後に、健康長寿、センテナリアンの到達に一番大事なことは「生きがい」です。
 よく「連綿と長生きしてもしょうがない」という人達がいます。それはその通りですね。皆さんこれから120歳を目指す上では、何を生きる喜び、生きがいとしていくのかということをいつも頭に思い巡らせ、それを明確なものにしていただきたい。
 生きがいをはっきりさせて、残っている時間をそのために使う。そうするとその脳活が強いメッセージ物質を豊富に生み出し、全身に送られて、肉体の方も自動的に円滑に健康体を維持するようになってくるものです。
 小さな事、些細な事でOKですから、ぜひ皆様、ご自分なりの生きがいや目標を明確にもって、毎日を生き生き楽しく過ごされて、センテナリアン、スーパーセンテナリアンに到達されて下さい。