体内のあらゆる場所に到達し、活性酸素を安全に消去する

水素は究極の抗酸化物質悪玉活性酸素「ヒドロキシルラジカル」の消去と、多彩な健康効果

一般財団法人未来医学財団理事長山野井 昇先生

水素は活性酸素による酸化ストレスを撃退する

 生命維持に欠くことのできない水─その水の注目点は今、単に生命をつなぐだけではなく、病気の予防・改善、健康や若さ、美を与えてくれる水へと変遷しています─
 その中でも、水素が豊富な「水素水」は、究極の抗酸化物質としてアンチエイジングの旗手ともいわれるほど、医学や美容の世界で注目されています─
 水素はその特性から、全身隅々に行き渡り、老化や万病の元といわれる「活性酸素」、中でも最も毒性の強い活性酸素「ヒドロキシルラジカル」を安全に消去してくれるからです─
 山野井昇先生は、40余年にわたって東京大学大学院医学系研究科で、元素の物理的観点からヒトの健康を究明する「生体物理医学」を専攻、生体物理医学者として、医療、健康、福祉、美容などの最先端研究に従事されてきました─とくにイオン研究の第一人者として知られ、イオン応用科学の先駆けとして早くからその実用性を提唱し、水素水についてもいち早く研究されています─
 平成24年3月に東大を定年退職後は一般財団法人未来医学財団を設立、マイナスイオンや水素、電子、磁気、香りなどの応用技術の発展に取り組まれながら、統合医学の充実を目指されています─
 山野井先生に、水素の健康効果についてお聞きしました─

 水素は宇宙根源の元素宇宙の中の水素とからだの中の水素

山野井 原子番号を1とする「水素」(H:原子状水素/H2:水素分子・水素ガス)は、宇宙で最初に生まれた元素(物質の根本材料)です─最も簡単な原子構造をもち(図1)、最小にして最も軽く、宇宙には最も多く(宇宙構成物質の約92%)、遍く存在しています─
 水の惑星と呼ばれる地球では、水素は、ほとんどは酸素と結合して水(H2O)として存在し、地表の約70%は“海”という水におおわれています─その海から地球の生命(生命体)は誕生しました─
 ヒトの体内では水素は、酸素、炭素に次いで多く、やはりそのほとんどは水(血液、リンパ液、細胞の内外液等の体液)として存在する他、生体を構成する蛋白質、細胞、細胞の集合体である臓器、DNAと広く含まれ、臓器ではとくに、生体の化学工場である肝臓や、膨大な数の腸内細菌が存在する腸内に貯留しています─
 人体に約60兆個ある細胞内では、エネルギーの代謝(生産)器官である「ミトコンドリア」が酸素や水素を使って、エネルギーを放出する物質「ATP(アデノシン三リン酸)」を産生し、そのATPの原料となる糖質、脂質、蛋白質の主成分も水素です─
 このように、水素は人体に限らず、細胞をもつ全ての地球生命体にとっても根源的な存在なのです─

 水素は21世紀、最も注目される元素

山野井 近年、水素はエネルギー変換効率が高く、燃焼後にCO2を排出せず、水になるクリーンエネルギーとして注目されています─水素自動車や水素ステーションなどが話題になり、農業、畜産、水産などの分野でも水素の利用が注目され、水素循環社会の実現が期待されています─
 中でも、最も期待されているのが医学・健康への利用です─

 水素の摂取は究極のアンチエイジング──超悪玉活性酸素を選択的に消去
 日進月歩の医学・健康分野の水素研究

山野井 医学分野での水素研究は2007年、日本医科大学の太田成男教授が国際学術誌『ネイチャー・メディシン』に──動物実験において脳虚血などで生成される細胞障害性の強い活性酸素「ヒドロキシルラジカル(・OH)」に対し、水素は選択的に還元(抗酸化)作用し、治療に有効な抗酸化剤として機能できる──と報告して以降、急速に進み、基礎・動物実験のみならず、医療現場での有効性(臨床効果)が次々実証されるようになりました─
 現在、日本、米国、中国、韓国、カナダ等々、国内外の研究報告は300報を超え、@抗酸化作用、A抗炎症作用、B抗アレルギー作用、Cエネルギー代謝亢進作用──等々、20種類以上の疾患・症状に対する水素の効果が報告されています(表1参照)─
 これらの作用の基盤にあるのが、水素の優れた抗酸化作用(還元作用)です─

 老化・万病の元「活性酸素」──活性酸素の大部分はミトコンドリアで生成

山野井 呼吸から摂取した酸素の2%は、活性に富む、不安定で、反応性の高い「活性酸素(種)」に変化します─
 活性酸素は免疫機能に寄与する(主に白血球の「好中球」が必要に応じて活性酸素を生産し、その活性酸素が病原菌やガン細胞等を撃退する)一方で、細胞の膜や、遺伝子を障(傷)害し、炎症をもたらし、鉄が一旦錆びる(酸化)とボロボロになっていくように、周辺のものを次々に酸化障害して、老化や、ガンをはじめ多くの病気を引き起こします─
 病気の90%は活性酸素が関与しているともいわれています(表1・図2参照)─
 体内で活性酸素は主に、細胞内に複数ある小器官「ミトコンドリア」の電子伝達系でつくられます─
 呼吸によって肺に取り込まれた酸素の約80%は、血液(赤血球中のヘモグロビン)に運ばれて、ミトコンドリアで栄養素(糖質や脂肪、蛋白質)を燃やしてエネルギーを生成するために使われます─その過程で酸素は電子を4個受け取って最後には水になって安定します─
 しかし、ミトコンドリアの中で酸素は全て水に還元されるわけではなく、そのうちの約2%は電子1個の還元(還元とは水素と化合することで酸化物から酸素を奪うこと─※原子や分子は電子軌道に互いにスピンの向きが逆の電子2個が対=ペアになって存在すると安定する─図3)、つまり、酸素分子が不完全に電子を与えられて還元されることで電子不足(不対電子)になることで、酸素は不安定で反応性の高い、活性酸素となります─酸化と還元の関係を模式図で示します(図3)─
 活性酸素は、普段の呼吸でミトコンドリアでつくられる他にも、放射線や紫外線、農薬や有害金属、タバコの煙、大気汚染物質、薬や食品添加物、虚血再灌流、ストレス、糖化蛋白質、炎症──等々に曝された時にも体内で発生したり、体に取り込まれたりします─
 現代はまさに活性酸素生成要因に取り囲まれた環境にあり、それにより過剰な活性酸素が生体内で生成されていることが指摘されています─

活性酸素の生体防御
還元酵素と抗酸化物質──悪玉活性酸素「ヒドロキシルラジカル」とは

山野井 生体には、活性酸素に対してそれを分解・消去する酵素(抗酸化酵素・還元酵素)などを備えて、それを無害化する防御システムがあります─
 最初にできる「スーパーオキシドラジカル」に対しては「SOD酵素」が分解して「過酸化水素」に変換し、「過酸化水素」は「カタラーゼ」や「パーオキシダーゼ」によって安全な水へと分解されます─ところが、スーパーオキシドラジカルや過酸化水素が大量につくられたり、過酸化水素が鉄や銅などの金属イオンや紫外線や放射線に曝されると、非常に活性が高く毒性の強い「ヒドロキシルラジカル」ができます(図4)─
 ヒドロキシルラジカルは糖質や蛋白質や脂質などあらゆる物質と反応し、とくに脂質を攻撃して過酸化脂質を生成し、一旦過酸化脂質がつくられると、細胞膜のリン脂質や周辺の蛋白質を次々に過酸化脂質化(連鎖的脂質化酸化反応)し、生体に大きなダメージを与えます─
 ところが、この最も凶悪なヒドロキシルラジカルに対して、生体は消去酵素を備えていないのです─
 一方、活性酸素を消去するには還元酵素の他にも、ビタミンのA(βカロテン)やCやE、ファイトケミカル(ポリフェノールなどの植物性抗酸化物質)、生体内のグルタチオンや尿酸やシステイン等の抗酸化物質があります─ヒドロキシルラジカルはこれらの抗酸化物質によって消去されます─
 しかし、これらの抗酸化物質をバランスよく十全に備えていなかったり、活性酸素が大量につくられたりすると、ヒドロキシルラジカルは体内で暴発し、生体を無差別に障害し、ガン、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、アレルギー疾患、糖尿病とその合併症、自己免疫疾患──等々、万病の引き金を引くのです(8頁図2)─

水素は、究極の抗酸化物質 そのわけは……
──「ヒドロキシルラジカル」を選択的に安全に消去

山野井 この超悪玉活性酸素「ヒドロキシルラジカル」を、水素(水素分子‥H2)は選択的に還元して、安全に消去してくれることがわかってきました─
 さらに、動物実験や臨床試験で水素の摂取による様々な疾病の予防・改善効果が実証されるようになり、近年、究極の抗酸化物質として注目されるようになったわけです─
 ではなぜ、水素は究極の抗酸化物質となり得るのか─
 それは、水素は最も軽く、小さい分子であり、水にも油にも溶けるという特性からきています─その特性により、水素は体の隅々に行き渡り、細胞のあらゆる場所で抗酸化作用を発揮するという他の抗酸化物質にはない優れた働きをするからです─水素の特徴と有用性をわかりやすく表にまとめてみましょう(表2)─
 具体的には次のようなことがあげられます─
(1)他の抗酸化物質では分子の大きさが妨げになり、必ずしも全身に行き渡らないが、水素は体の中で拡散し隅々まで入ることができ、異物をシャットアウトする関門のある脳や卵子にも水素は入ることができる─
(2)脂溶性と水溶性を兼ねているために、例えば水溶性のビタミンCや脂溶性のビタミンEは抗酸化作用を発揮する場所が限られるが、水素は脂質や蛋白質を内包する細胞膜を透過して、結合水を内包する細胞内に入って、細胞内のあらゆる場所で作用する─活性酸素が最も多く発生するミトコンドリアの核内にも入り込んで、ヒドロキシルラジカル(・OH)が発生した時点で消去する─
(3)一般に、抗酸化力が強すぎるものは必要な活性酸素まで除去しかねないが、水素は最も悪玉のヒドロキシルラジカルを選択的に消去して無害な水に変える─
(4)ビタミンCなどの抗酸化物質は活性酸素に電子を与えて無害化した後、自分の電子が足りなくなって周囲の分子から電子を奪い、連鎖的酸化反応を引き起こす可能性もある─
(5)また、水溶性のビタミンCやポリフェノールも、水素を誘導することによって抗酸化作用を示す─
(6)一般の抗酸化物質を含む食物や栄養物は胃や腸で消化吸収されてから血液に入り、細胞に届いてはじめて機能が発揮されるが、水素は様々な栄養素や酵素と水素結合することで容易に体液や脂質に溶けて、細胞へ送り届けられる─
(7)他の抗酸化物質では過剰摂取による副作用の可能性もあるが、水素は還元後は安全な水になり、副作用の心配がない─

水素の有効利用と健康効果
水素水(高濃度水素含有水)と第3世代の水素活用

山野井 水は速やかに細胞に出入りし、生体膜や脳血液関門も自由に透過できる唯一の物質です─人体の約3分の2(60〜70%)は水であり、血液、リンパ液、細胞内液や細胞外液などの体液として、形を変えた結晶水で成り立っています─
 その水が、水素が豊富で、高い還元力をもっていれば、病気や老化の予防と改善、ひいては美容にも大きく寄与することになります(表3)─
 日本をはじめ、世界各地で水素を多く含む天然水が病を癒す「奇跡の水」と呼ばれています─例えば、多くの難病に改善効果があるといわれるメキシコの「トラコテの水」には、豊富なミネラルと共に、溶存水素が普通の水の10倍も含まれていることが、九州大学の白畑實隆教授の調査でわかっています─
 水素水には、@電気分解の陰極で精製される水素水、A水素ガスを混入した水素水、B固体セラミック方式(還元ボトルなど)などがあります─
 現在、水素のマーケットには、水素水の他に、水素ガス吸引(吸入器・高濃度水素カプセル・水素風呂など)、内包水素発生カプセル(水素サプリメント)などの種類があり、それぞれ健康効果が確認され、数多くの体験報告や水素の研究事例が報告されています─
 さらにサンゴカルシウムやマグネシウム、なかにはケイ素などの混合パウダーの添加例があり、水素も分子状、原子状があり、その作用機序の差別化、さらに濃度表示の規制と標準化、摂取量、有効時間などなど、基本的な宿題が水素研究に存在します─
 また、製造法の違いで生成された水素成分が、どの種の活性酸素に、どう効いたのかを明瞭に分類化し、医学や生物学、農学の分野別に体系化された学術研究を深めていく必要があります─
 医学の分野では幸いなことに、水素には副作用がありません─臨床試験を進めやすいという利点があります─ただし、水素は体の様々な部分に総合的に作用するため、体のどの部分に効果があったのか、因果関係がわかりづらい欠点があります─
 長年の水素研究者として水素研究の将来を展望すると、最も大事なのは、さらに臨床家とともに、ヒトを対象にした症例改善の事例を多く集めることが喫緊の課題と思います─

近年の水素研究の成果と最新動向

山野井 最後に、近年の水素研究と最新の動向を紹介しましょう─
 水素水の効用について、動物実験で研究を続ける日本医科大学加齢科学教室では、水素分子(H2)が抗酸化剤として、疾患の予防と治療に応用できることを科学的に証明しました─さらに水素分子は活性酸素種の中で最も反応性の高いヒドロキシルラジカルを選択的に還元し、細胞を酸化ストレスから防御することを発表しました─
 その後、水素ガスの吸引によって酸化ストレスが軽減し、肝臓の虚血再灌流障害を軽減することを、慶應義塾大学再生医学教室と共同研究で確かめています─
 さらにマウスを拘束することで長期間身体的ストレスを与えると、学習・記憶能力が低下しますが、このマウスに水素水を与えるとその低下を予防することができました─その他、動脈硬化が生じやすいマウスに水素水を4ヶ月間飲ませると動脈硬化が抑制できました─
 京都府立医科大学の研究では、水素水を2型糖尿病患者に与え、その効果を調べたところ、脂質と糖代謝が改善され、耐糖能障害が抑制されました─
 名古屋大学医学部神経科学教室の研究では、ラットに水素水を与えたところ、パーキンソン病に似た挙動が抑制され、九州大学薬学部での研究では、パーキンソン病モデルマウスに対し、水素水の飲用効果が示されました─岐阜国際バイオ研究所では、水素分子に抗アレルギー作用があることが示されました─
 諸外国からの研究報告では、上海第二軍事医科大学の研究では、水素分子を溶かした生理的食塩水の注入は、虚血再灌流による小腸障害を抑制すること、米ボストンのフォーシス研究所の研究では、遺伝子組み換えによって水素を発生しない大腸菌を作り出し、腸内に戻すことにより、腸内細菌が発生させる水素に抗炎症作用があることを発表しました─
 ピッツバーグ大学の研究では、水素ガスと一酸化炭素の吸引によって、心筋の虚血再灌流障害に対し相乗効果を示しました─
 最後に、水素の最新動向として私がとくに注目するのは、「水素ガス吸引」が昨年末、国の行政機関である厚労省の先進医療Bとして認可されたことです─水素ガスの効果と安全性が世界ではじめて国から認められました─「心肺停止後の水素ガス供与が有効である」とのことは、水素ガスの大きな可能性を示唆しており、今後、多くの医療関連機関で活躍の場が与えられることでしょう─