"抗糖化生活”でアンチエイジング・健康長寿酸化と並ぶ老化の元凶 「糖化」を防ぐ、抗糖化食品

──茶・野菜・発酵食品・ダシ等々──

同志社大学大学院生命医科学研究科 糖化ストレス研究センター准教授八木雅之先生

健康長寿の鍵は、普段から意識した「抗糖化生活」

 近年、酸化と並ぶ老化の元凶として「糖化」が注目され、多くの老化危険因子の中でも、糖化の制御(抗糖化)は健康長寿の実現に重要といわれています(図1)。
 糖化に焦点を当ててアンチエイジングの研究を進めている同志社大学「糖化ストレス研究センター」では、様々な角度から糖化を研究し、"抗糖化”に根ざした健康長寿社会の実現を目指しています。
 同センター准教授の八木雅之先生は、糖化やAGEs(最終糖化産物)の測定法、抗糖化食材の探索、抗糖化サプリメント等の開発──等々を研究されています。
 糖化対策の基本は「抗糖化を意識した普段の生活習慣、中でも、食習慣が重要」といわれる八木先生は、抗糖化食材も、普段誰もが手に入る食材から探索し、近隣の市場から500種類以上のサンプルを収集して、その一つ一つについて糖化抑制の活性(抗糖化活性)を調べています。
 その結果、抗糖化活性は──お茶をはじめ、健康茶やハーブティー、多くの野菜、果物、発酵食品、ダシ(出汁)──などに見られ、中でも野菜は211サンプル中、実に9割に抗糖化活性が見られました。
 こうしたデータなどから、野菜摂取の重要性や、お茶や野菜、発酵食品、ダシを用いる和食を高く評価されている八木先生に、抗糖化食品を中心に、抗糖化を意識した食習慣、生活習慣を教えていただきました。

酸化は"サビ”、糖化は"コゲ”老化・万病の元「糖化」とは 体内の糖化はこうしてはじまる
 ──老化物質「AGEs」の        生成・蓄積まで

八木 フライパンで焼かれたホットケーキは、生地の中に含まれる糖とタンパク質が熱を加えられることで茶色く香ばしくなったり、また固くなったりします。
 このように、@タンパク質と、A糖と、B熱(温度)が結びついて様々な変化を起こす反応を「糖化」といい、この反応は1912年にフランスの科学者、ルイ・カミーユ・マイヤール(Louis Camille Maillard)が発見したことから「メイラード反応」と呼ばれています。
 糖化は食品だけではなく、体内でも起きます。
 体内では体温37℃という条件下で、食事で取り入れた糖分のうちエネルギーとして消費し切れなかった余分な糖が体内のタンパク質と結びついて糖化が始まり、最終的には「AGEs」(最終糖化産物:蛋白糖化反応最終生成物)という老化物質が生成されます。
 食品の糖化では「メラノイジン」という褐変物質が生成して味わいを深くしたりしますが、メラノイジンもAGEsもどちらも「焦げ」のようなもので、酸化が「錆び(サビ)」なら、糖化は「焦げ(コゲ)」とイメージするとわかりやすいかも知れません(図2)。
 体内でAGEsが蓄積すると老化や様々な生活習慣病の原因となります。このような糖化反応を中心とするAGEsの生成・蓄積による生体へのダメージを「糖化ストレス」と呼んでいます(図3)。
AGEs蓄積は老化・万病の元──老化のスイッチをオンする「RAGE」
八木 脳、内臓、筋肉、血管、神経、骨、皮膚、毛髪、爪などの組織、また血液や代謝を司る酵素もタンパク質が重要な構成成分になっていますから、糖化が進むと、体の様々なタンパク質の働きが低下し、組織はダメージを受けます。
 最終的にAGEができて組織にたまると、たとえば、皮膚の真皮コラーゲン(コラーゲンタンパク質)ではシワ、クスミ(黄ぐすみ)、タルミの原因になり、骨コラーゲンでは骨質が低下して骨はもろくなり、たとえ骨密度が高くても骨粗鬆症を起こします。
 さらに、血管(コラーゲンやエラスチンなど)や、血中(血糖管理指標にもなるヘモグロビンA1cやグリコアルブミンなど)にたまれば動脈硬化や血流不全を招き、さらに、高脂血症、高血圧、肥満、糖尿病合併症(神経障害、網膜症、腎症など)などの要因にもなり、脳の蓄積では神経機能へのダメージやアルツハイマー病の関連も指摘されています。
 最近では、AGEsがAGEsの受容体「RAGE(receptor for AGEs)」に結合することで、老化のスイッチをオンにすることもわかってきました(図3)。
 RAGEは細胞表面にあって、近づいてきたAGEsをキャッチすると、「AGEsを感知した!」というシグナルが伝達され、細胞内に情報が伝わって老化のスイッチが入ります。伝達されたシグナルは、細胞内にある「MAPキナーゼ」というシグナル伝達系を通して、細胞内に炎症を起こすスイッチをオンにする結果、炎症が起こって組織を傷つけます。これが、老化や様々な病気を引き起こす原因になるのです。

糖化を促進する因子──高血糖・酸化ストレス・アルコール・タバコ

八木 当然ながら糖化の最大のリスク要因となるのは、糖質の過剰摂取による高血糖です。体内で糖化を起こす代表的な糖類は、炭水化物などから分解されたブドウ糖(グルコース)と、果糖(フルクトース)です。中でも果糖はブドウ糖の10倍もAGEsをたくさん作り出します(図4)。
 糖類以外にも、アルコールの代謝過程でできる「アセトアルデヒド」(カルボニル化合物)もタンパク質と結びついて、糖化を起こします。カルボニル化合物は酸化LDLなど脂質の酸化によっても生成されます。
 また、タバコや紫外線など、強い酸化ストレスを受けるとAGEsの生成・蓄積が促進することがわかっています。喫煙者のAGEs血中濃度は、お酒を飲む人よりもはるかに高い数値を示します。
 活性酸素(フリーラジカル)がもたらす酸化ストレスは、糖化ストレスと相互にリンクして生体にダブルパンチのダメージを与えます。糖化が起きると、タンパク質でできている活性酸素消去酵素はその機能を失って酸化が促進されますし、また、活性酸素自体が炎症を引き起こすRAGEと結合して炎症も促進します。

糖化にストップ!「抗糖化生活」でアンチエイジングの実現
老化も糖化も生活習慣次第で軽減!!

八木 老化の危険因子には「糖化ストレス」・「酸化ストレス」・「免疫ストレス」・「心身ストレス」・「生活習慣」などがあげられます(表1)。どれも避けることのできない因子ですから、健康な人であっても、老化は避けることはできません。
 しかし、生活習慣次第で、老化速度を遅くし、軽減することはできます。中でも、生活や運動が深く関係している糖化ストレスは、食生活や運動習慣次第で容易に軽減できる老化の危険因子なのです。
血糖値を上げない食生活──血糖の急上昇・食後血糖値は特に注意
八木 糖化反応を食い止めるためには普段の食生活を見直し、まずは血糖値を上げ過ぎないことが先決です(表2)。
 食品として摂取した糖質はブドウ糖(グルコース)に分解されて血液中に取りこまれ(血糖)、血液を通じて全身に運ばれ、膵臓から分泌されたインスリンによって細胞に取りこまれます。
 空腹時の血糖値は100mg/O前後ですが、食後は健康な人でも160mg/O程度に上がり、その後2時間程度で元に戻ります。
 ところが、過食(特に糖質)や一気食いや早食いなどで血糖値を急上昇させたり、間食(特に甘い物・ソフトドリンク)などをすると、食後も高血糖状態が長く続いてAGEsが増加しやすくなります。
 こうした状態が長く続けば、やがて膵臓が疲弊してインスリンの分泌や働きが低下し、糖尿病になっていくわけです。
 高血糖や血糖の急上昇を防ぐ食べ方は、炭水化物のとりすぎに注意し、ゆっくりよく噛んで食べるという他にも、
@食物繊維の摂取(野菜や海藻を先にor 主食の炭水化物と一緒に)
 胃から小腸への移動を遅くする、「食物繊維」の多い野菜や海藻、キノコなどを一番先に食べ、次にタンパク質の多い肉や魚、最後に炭水化物を食べる──という食べ方が、血糖の急上昇やインスリンの分泌が抑えられることが知られています。
 しかし、食べる順に従うという少々ストイックなこの食べ方は、多少のストレス、味気なさもあります。
 うどん県で知られる香川県は、うどんの摂取量も糖尿病患者数も全国1位です。そこで私たちは、讃岐うどんチェーンと共同で、うどんのトッピングの有無で血糖の上昇を比較してみました。
 その結果、野菜たっぷりのサラダうどんは、かけうどん(素うどん)よりも、食後血糖値の上昇を15〜20mg/O抑えることを確認しました。野菜だけでなく、温泉卵をトッピングしても、卵に含まれるタンパク質や脂質が糖の吸収を抑制することも確認しました。
 さらに、様々な食品の影響を調べた結果、たとえば、茄子とひき肉の「麻婆茄子」をご飯やうどんと合わせて食べれば、栄養のバランスも良く、血糖値の上昇を効果的に抑えることを証明しました。
 炭水化物を極端に制限したり、食事の順序を無理に変えたりしなくても、食物繊維やタンパク質、脂質をうまく組み合わせることで、美味しく食べながら、糖化を抑えることを示す結果だと思います。
A高GI値食品に注意!
 食品から摂った炭水化物50gが血液に入るまでのスピードをグルコース(ブドウ糖)を100として比較し数値化したGI値は、数値が大きいほど血糖が速く上昇することを示しています。GI値表を参考に、高GI値の食品は、カロリーや栄養バランスも考慮した上で控えめに摂るようにします(表3参照)。
 甘いものやスナック類はすぐ血中に溶けて腸に到達して血糖値を上げます。甘いチョコレートのGI値は91に対して、ブラックチョコは22です。
 主食は白より黒。未精白の玄米や全粒粉パンは白米や精白パンよりGI値が低く、ソバもうどんより低くなっています。
 野菜の中でも、じゃが芋やとうもろこし、かぼちゃ(特に西洋かぼちゃ)も炭水化物が多くGI値が高いので摂りすぎには気をつけます。にんじんもGI値は高めですが、炭水化物が少ないので大量にとらなければ問題ありません。

「抗糖化食品」を積極的に摂取!──和食に豊富

八木 一旦、体内で生成されたAGEsはなかなか代謝されず、どんどん体内に蓄積します。血糖値が正常になっても、合併症が治りにくいのはAGEsの蓄積が大きいといわれています。
 但し、生体には老化のスイッチをオンするAGEs受容体「RAGE」の働きをなくす「sRAGE」という物質の存在や、酸化されたタンパク質を分解する酵素「OPH」がAGEsの分解・排出にも働いていることがわかってきました。
 こうした物質の活性を高められる素材が見つかれば、AGEsの蓄積を防ぐことが可能になると考えられます。私たちはこれまで500種類以上の食品サンプルを収集し、糖化反応を抑制したり、AGEsの分解・排出を捉進する食材を探索しました(表4)。
〈AGEs生成を抑える食品──茶・ハーブティーなど〉
八木 その結果、茶(緑茶、玄米茶など)や、また、甜茶(てんちゃ)、ドクダミ茶、柿の葉茶、グァバ茶などの健康茶、カモミール(中でもローマカミツレなどのハーブ)に糖化反応を阻害し、AGEsの生成を抑制する高い抗糖化作用が見つかりました。
 甜茶、ドクダミ、柿の葉、グァバは、AGEsの生成を阻害する医薬品「アミノグアニジン」をはるかに超える抗糖化力をもつこともわかりました。
 茶カテキンにはAGEsの生成を阻害する作用が見つかり、緑茶だけではなく、発酵茶の紅茶、半発酵茶のウーロン茶にも同じ効能があります。
〈AGEsの分解・排出を捉進する食材〉
八木 私たちは茶・健康茶やハーブ以外にも、春菊やサニーレタス、ヨモギなどキク科を中心とした植物は、AGEsの生成を抑制する作用だけではなく、AGEsの分解・排出を促進する作用をもつことも明らかにしました。
〈昔から健康に良いといわれる食品──野菜、果物、ショウガ、ニンニク、ナッツ、発酵食品etc〉
八木 さらに、様々な素材の糖化ストレス抑制作用を探索したところ、お茶をはじめ、昔から体に良いと言い伝えられているものの中には、優れた抗糖化素材がたくさんあることに気づきました。
 多くの野菜や果物にも抗糖化作用をもつ素材が見つかっています。果物では、レモンやグレープフルーツ、ミカンなどの柑橘類が特におすすめです。豊富なクエン酸がエネルギーを産生するTCA回路を活性化し、食後血糖値の上昇を抑制してくれます。昔、職人さんが日の丸弁当でよく働いていたのも梅干しのクエン酸の作用があるのかも知れません。
 和食が健康食といわれるのは、抗糖化という観点からも頷けます。香辛料のショウガ、ニンニク、酢や味噌、醤油、納豆などの発酵食品、鰹節などのダシ(出汁)にも高い抗糖化活性が見つかりました(表4・図5)。
 私たちは、これら植物性食品の多くにポリフェノールが含まれていることに注目していますが、具体的にどのように抗糖化に関係しているのかなど、今後はそのメカニズムを詳しく解明していく予定です。

糖化食材・促進物質を避ける
──果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)・ファストフード・飲酒・タバコ

八木 果糖はブドウ糖の10倍以上の糖化速度で細胞をどんどん糖化させます(7頁図4)。
 果物には糖化を促進する果糖が糖分の3分の1程度含まれていますが、ビタミン・ミネラルや食物繊維も多く、さらに豊富なクエン酸やポリフェノールが糖化を抑えていることも示唆され、食べ過ぎない程度(1日200g程度)なら、甘味の摂取源としておすすめです。
 一方で、市販食品(特に菓子・ソフトドリンク類)に多用されている異性化糖は、糖化を引き起こす元凶であり、避けて欲しいものです。
 トウモロコシを原料に果糖だけを抽出して作られたコーンシロップは安くて砂糖の1・5倍の甘さを持ち、スポーツドリンクなどのソフトドリンク類、菓子、ヨーグルト、アイスクリーム等々と、実に広く使われています。成分表示に、高果糖コーンシロップ(液糖)、異性化糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖といった名称があれば、果糖液が使われています。
 ファストフードに多いハンバーグ、揚げ物にも要注意です。こうした食品にはAGEsが含まれ、その約7%程度が体内に取りこまれるといわれます。
 糖化を起こすアルコールはほどほどに、またタバコは糖化だけでなくあらゆる面から健康を阻害します。
 糖化ストレスとリンクして生体を障害する、紫外線やあらゆる環境汚染物質などによる酸化ストレス対策も重要です。
 なお、塩分はAGEsによる炎症を強くします。高塩分にも気をつけましょう。

 十分な睡眠・適度な運動

八木 摂取した糖質がエネルギーとして使われれば糖化は防げます。日常、適度な運動、家事などで体をよく動かすことは、老化を防ぐ大きな柱となります。
 過食、飽食、栄養バランスの悪い食事、睡眠不足、運動不足、喫煙、アルコール、心の持ち方──等々、日常生活の乱れが老化を促進します。食生活をはじめとする生活習慣の改善はアンチエイジングの鉄則です。